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クラージュ・イストワール  作者: Hanna
第Ⅱ章 大秦王帝国 インぺリウム・ローマ 編 ―長命菊の名君―
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第1節 潜入作戦 ―立案―

 クーを仲間に入れた白銀騎士団は、ローマとアルスターを分かつアルス山脈を越えるべく、麓の村にある宿に泊まる事に。

 騎士団は、山脈を越えるべく、麓の村にある宿に泊まる事になった。焔は、アーサー、ロラン、フロリとジュヌヴィエと共に麓の町で防寒具の買い出しから宿に戻る所だった。

 既に寒い時期の為、彼らは買った直後に身に着けていた。アーサーは、焔のマフラーの中に入って温まっている。


「宿をとって大正解だったね。」


「あぁ。この山脈は、冬になれば凄いとは聞いていたけど、ここまでとは思わなかったよ。」


 ジュヌヴィエの言葉に、フロリはそう話す。山脈の名は、アルプス。この先の半島を中心に栄えるローマにっ向かうのは、この山脈に敷かれた道を進むしかない。季節問わず、商人が行き来をしているようで冬になると犬ぞりを使って雪かきへ赴くようだ。


「今夜は吹雪が吹くと聞いております。雪かきをする人々は、さぞ大変でしょうに。」


「うん。雪が治まって、道が整備されたら行くしか、無いよね。……あ、でも、皆に話さなくちゃいけない事がある、かも。」


 焔はアルスターやコノートにいた時、これから向かうローマに関する噂を思い出した。秘書を務めるライアンが教えてくれた事だ。


「話とは?」


 ロランの尋ねに、彼女は重要な話だと説明した。彼は、戻った後に集合した後、騎士団に話す事を説明するように手配すると話した。


「ありがとう、ロラン。」


「いえ。大事な事はその日に伝えた方がよろしいと思ったまでです。最近、ローマとは国交が五年前から途絶えたままだったので、気になっていたんですが…。」


 ロランの言葉に、焔は気になった為にその理由を尋ねる。だが、彼は詳しくは知らず、焔が来る五年前に使者を寄越して―


『今日をもって、ルミソワとの国交を絶たせてもらう。

 速やかに、ローマに訪れるルミソワ人を自国へと返還させよ。さもなくば、お前の命は無いと思え。

 ルキウス・クラウディウス・ネロ』


 と手紙で知らせて来た。レオ四世は直ぐにルミソワ国民をローマから帰還させたが、ローマにいる一万人以上のルミソワ人のうち、半分しかいなかった。

 証言かは明白ではないが、当時ローマから帰還したルミソワ人によると―


『皇帝が、光明神(クレアシオン)様を信仰する私たちを皆殺しにすると言って、半数以上の人々が反逆罪として火炙りや絞首の刑に処した』


『皇帝は未来を視る力を手に入れたと話し、光明神(クレアシオン)は自分の脅威だと言っていた』


 と口を揃えていたという。その事を、レオ四世はロランにフロリに伝える様に託したと言う。


「そんな事が…。今まさに、火の中に飛び込む、みたい…。」


「キュウ…。」


「その言葉が妥当かもしれませんね。」


 焔の言葉に、ロランは頷いて納得した。


 “ルキウス・クラウディウス・ネロって、あの皇帝かい?”とユウ、

 “うん。幼名はルキウスだけど、成人してからはネロ・クラウディウス。本名は、ネロ・クラウディウス・カエサル・ゲルマニクス。ゲルマニクスの前に、ドルススを入れる事もあるけど…”と焔、

 “正直、確かめないと分からない。決定づけるのは、早い”とエル、

 “分かってるよ。でも、一つ疑問なのは、ネロ皇帝は千里眼なんて持っていないのは確か…”と焔、

 “何か裏がある、と言いたいのですね”とレイ、

 “うん”と焔は思う。


 彼らは宿へ戻って、防寒具を渡し終えた後、ロランが焔から話があるので集まって欲しいと依頼した。騎士団は、焔とジュヌヴィエの部屋に集って会議を始めた。


「その、皆に話をしなきゃいけない事がある。」


 焔は、これから向かう先のローマ帝国では注意すべき事があり、ゴヴァンの秘書ライアンが話していた事を言う。さらに、ロランは彼女の説明を裏付けるものとしてレオ四世から託された手紙について説明する。


「フロリ王子。貴方に真っ先に伝えるべきでしたが、アルスターでの状況故、お許しください。」


「いいって。父さんが、お前に託したんだ。それに、俺はロランの事、信用している。」


「ありがたきお言葉。では、手紙をお読みいたします。」


 ロランは、手紙を嘘を言わずに読み上げる。その場にいたフロリたちは、驚きと怒りの複雑な感情を浮かべる。更に、ロランは、民の証言を話した。


「未来を見通せる?」


 聞いた事も無い言葉にフロリは言う。焔とアーサー、ジュヌヴィエ、クーは知っている人物がいる。影の国の女王にして戦士のスカアハである。


「それは、千里眼の一種だね。過去と未来の千里眼、未来を視る千里眼、今を見渡す千里眼は聞いた事はある。けれど、手に入れたって事は、ちょっと怪しいね。」


 オリヴィエはそう言った。彼は、魔術の概念として千里眼の知識も頭に入れていたようだ。流石、智将と言われる事だけはある。

 焔は、彼が話した千里眼所有者の英雄は、知る限りでは四人いると考える。

 千里眼は、永遠に手に出来ない物だが、魔術の概念としては神に許された伝説の英雄か、或いは異界の者が手にすると言う。


「そうだよな。そう簡単に手に出来るものじゃない。それと、(ロード)とコノート王城へと入った時、あの盃の正体は何だったんだ?(ロード)、何か分かった事はあるか?」


 アッシュはそう言った。しかし、別動隊に入っていた者たちは別として他のメンバーは何の事だろうかと首を傾げている。焔は、皆が困っているので代わりに説明をする。

 実は、アルスターの黒い兵士を生み出していたのは、黄金の盃。

 ノーディンにもメイヴにも協力していた『魔術師』と名乗っている者は、それを『聖杯』と呼んでいて、メイヴを暗殺したアリルが利用しようとしたが、聖杯は黒い液体を吐き出して奴を飲み込み、奇妙な化け物へと変異させた。


「聖杯?!そんなものが、この世にある訳が無い。」


「アッシュさんの言う通りです。先程、神託が降りました。」


 アッシュの言葉に賛同したのは、ジュヌヴィエである。彼女はこう言った。


『黄金の盃は、一人の王がその元祖を持ち足り、もう一人の王はそれを以てして救済を願わん。それ以外の聖杯は紛い物。黒き水が溢れ、光を飲み込む()()を生むそれは破壊すべし』


「紛い物の聖杯…偽物、か。」


 ジュヌヴィエの言葉にルノーはそう呟く。アストルは、厄災って一体なんだとジュヌヴィエに尋ねる。彼女は、出来る限りの答えを口にする。


「厄災。神託と協会にある破れた書物に記されていた事ですが…。」


 ♢


 太古の昔、極東の地で怪物と人間は戦い続けていた。怪物、否、■■は人間を容赦なく殺し尽くす。空から鉄の船で降りて来た人間と■■■は魔術でもない力で対抗した。

 一つ目は、獣の狙撃作戦、二つ目は■■■■を実行した。しかし、獣の脅威は計り知れず、二つの戦いは失敗。その時に、この世ならざる者が降臨した。

 人間の先陣を切った少女は、この世ならざる者を召喚した者へ正義の刃を通した。そして、■■も少女によって封印されたが、戦いは終わりではない。

 この世ならざる者が降臨せし時、彼の者はこの星を()()()であろう…と。


 ♢


「不思議な話だね。」


 アストルは率直な感想を述べた。焔は、所々違和感を覚え―


 “まるで、近未来の戦闘みたい。鉄の船…空、宇宙船?いやいやっ、ありえない”


 と流石にありえないと思い、これ以上考えるのを止めた。話が反れてしまったので、ジュヌヴィエは頭の片隅にでも残して欲しいと言って、ローマについての行動を検討する。


「ローマ皇帝があの手紙を送りつけたのなら、俺たちが易々と入れるようには思えない。となると、ルミソワ以外となると、焔とクーだけだ。

 俺の考えなら、二人をローマに送ってクーはアルスターの代表とか偽れればいいんだが…。」


「問題無いぜ。丁度、クースクリドから手紙を渡す事になっている。アイツは、今忙しいだろうからよ。焔も、一応助手って事で。あの魔術師がいるかどうかも分からんが…。」


 クーはアッシュの提案に、了承と心配の意見を述べる。


「二人が、城で会った化け物を生み出した魔術師か。」


「焔の話では、ノーディンとの一件でもいたと聞いた。」


 アッシュの話に、ルノーは追加で言った。アッシュは、ルノーの話を含めて作戦を立てる。すると、ジュヌヴィエはある話を持ち掛ける。


「もしかすれば、ローマ郊外なら警備は薄いはずです。私たちは、そこで宿のある場所で泊めてもらえればと…。

 可能性は低いですが、お姉さまが言っていた話では、光明神(クレアシオン)様を信仰する者たちのアジトが地下にあります。

 あとは、ローマの現状では、町の一部がスラム化していて、このままでは広がる可能性も…。」


 アッシュは彼女の話を聞いて、その拠点へ向かう事を決意。そして、一通りの作戦を打ち出す。


「じゃぁ、一通りの作戦を打ち出す。俺たちは、ジュヌヴィエ様の言う通り地下にあるというアジトへと向かう。

 ロランとオリヴィエは、スラムや町についての調査を頼む。焔とアーサーとクーは、ローマ皇帝への挨拶兼調査を頼みたい。報告は伝言の瞳でお願いする。

 実行は、この吹雪を乗り越えた日だ。異論はあるか?」


 アッシュの言葉に、誰も反論はしない。これしか方法は無い、と皆は感じている。アッシュは、この作戦で実行すると言った。


了解(ダコール)‼』

「はい‼」

「キュウ!」

「任せとけ!」


 騎士団員、焔、アーサー、クーは返事をして、作戦を了承した。

 読んでくさだいまして、ありがとうございます。


― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


 焔:ローマって、永遠の都とも言われた首都だけど、まさか、あの皇帝様がいるなんて…。


 アーサー:キュウ?


 ジュヌヴィエ:その皇帝って、悪い人、なの?って、アーサーが言っているよ。私も、疑問に思う。


 焔:ジュヌヴィエ、ありがとう。ん~。良いか悪いかって言うのは、人それぞれじゃないかな?それに、人の為に働いた功績を残した皇帝なら、評価はされるべきだとは思うよ。だけど、手紙を呼んだ限り…。


 ジュヌヴィエ:そうね。と、ここで『イリュド豆知識!』です。ロランさんは、食事の追加にデザートまで作っていたのですが、きっかけはアストル君のようです。

        ちなみに、アストルは甘いものが好きで、パリスにあるお菓子は一度でも全て食べたので、料理上手なロランに『パリスには無い甘いお菓子作ってよ!』と頼んだらしいです。


 焔:そんな事が。でも、ロランの創る料理は本当に美味しいと思った。今度、何にしようかな。


 アーサー:キュウ!


 ジュヌヴィエ:ふふ、アーサーも同じことを思ってる。次回、『第2節 アルス山脈を越えて ―ジュヌヴィエの記憶―』。私が冒険に出た理由……いつか話さなくちゃいけないものね。

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