旅路日記Ⅱ
焔は、荷馬車の上でスマホを手に日記を書く。
―アルスターとコノートで、英雄たちと会った。ルミソワも英雄揃いだけど、ここまで凄いとは思わなかった。
アルスターでは、クランの猛犬こと『クー・フーリン』に、シャーウッドの森でロビンフッドとその仲間たちに出会った。
ロビンたちとの森での生活は新鮮なものだった。なかなか無い体験だ。狩りをしたり、採取したりと自然との関わりが多かった。
何よりも、ロビンフッドの物語を体験した感覚だった。怖くてヒヤヒヤしたけど、ロビンとマリアンの結婚はこっちも幸せな気分になった。
また、シャーウッドの森の奥には、レーシーと言う森の精霊の村があった。幻想的な風景で、一枚納めたい所だった。
そして、クー・フーリンの兄貴と一緒に、コノートと戦う事になった。けど、その黒幕は驚きのあまり絶句した。
でも、色々思う。確かに、コノートが宣戦布告した。けれど、元凶は自分たちの仲間の一人。そういう事が、これからはあるのかもしれない。
何だろう。例えるなら、気付かない内に友達から苛めを受けていた、と言う所だろうか?人間は残酷で、矛盾な生き物だと思い知らされる―
焔は、そう書いてスマホをしまおうとした時、新しいアイコンがあった。アルバムである。
「何だ、コレ?」
焔は開いてみると、説明書が表示される。
【アルバム機能。貴女が出会った敵味方問わずに、写し絵として記録します。また、敵の写し絵はそのまま図鑑として掲載されます。
ここでは、様々な体験や物語を、貴女自身で撮る物と貴女の記憶を自動で写し絵にする事も可能です。】
“何じゃそれ……。ま、でも、良いか。この世界に来て、楽しい事が増えたし!”
そして、アルス山脈の麓に着く数日前。焔は焚き火に当たって、温かいスープを入れたコップを手にして星空を見上げていた。
他の皆は、テント内で食事を楽しんでいる。
何度見ても、綺麗な星空は心を落ち着かせる。焔の世界、現代は山地や空気の綺麗な場所だけしか見れず、貴重な空だ。
「キュウ?」
「アーサー……。ねぇ、お前はこの空、どう思う?綺麗か?」
「キュウ!」
焔の質問に、アーサーは頷いて鳴き答える。
「そうか……そうだな。色んな空があるけど、同じ色は殆ど無い。なんか、人間みたいだなって思う。色んな人がいて、色んな考えがある。仲良くしたり、喧嘩したり。そーゆーのが、欲しいな……。」
“でも、喧嘩はあまり好きじゃない。一度、それで壊れた物がある”
「焔、ここにいたのか。」
「アッシュ。」
「今は冬だ。風邪引く危険が高いぞ。」
アッシュはそう言いながら、焔の隣に座る。
「うん。けど、星空が見たかったの。」
「そうみたいだな。焔は、空とか、山とか平原とかの景色が好きだもんな。でも、アルスターとコノートの戦いは、正直、死ぬかと思った。
何度もそう思ったことはあるけど、あの日は大事な仲間を失ったからな……。」
「アッシュ?」
「ご、ごめん!変な話をしちまった。それにしても、アーサーは焔にベッタリだなぁ……。」
アッシュは、慌てて話を切り替える。
「キュウ!!」
アーサーは、そう鳴いて怒る。どれだけ、警戒心が強いのやら……。
「分かったから。はいはい、俺も同じだろってね。」
「喧嘩はしないでよ……。たださえ、竜なんだから。周囲に迷惑はかけられません!」
「反省します。」
「キュウ……。」
焔の言葉に、アッシュとアーサーはシュンとなって謝る。
―こんな毎日だけど、色んな意味で凄い経験しているのを、改めて思い知らされる。
人生を考えたり、仲間の事を今まで以上に思いやったり……怖いけど化け物や襲いかかってくる敵を斬り倒した。
これから、どんなことが起こるかは分からないけど、自分がやれる事を最大限に尽くしたい……そう、思い続けたい―




