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クラージュ・イストワール  作者: Hanna
序章 光と騎士の共和国 ルミソワ 編 ―己の役目―
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第3節 力の発動

異世界生活へ慣れる為に奮闘する焔。しかし、彼女に迫る出来事は直ぐに迫っていた。

 正午。二人は町のとあるレストランで昼食をしていた。焔の頬は、アッシュの魔法ですっかり元通りになった。アッシュは、彼女にとある質問をした。


「そう言えば、焔は武器を見た事ないのか?」


「うん。そもそも、武器を持ってはいけないって言う法律があるから」


「持っては、いけない?」


 アッシュは、どういう事かと考える。焔は慌てて、話を続ける。


「あ、そう言うのじゃなくて。刃を向けられたことが無かったから。もし、武器を持っていたとしても…私はあんまり使わないし。使うとしても、自分の身を守るくらいかな」


(ヤバい……異世界から来たってバレたら、説明がつかない)


 と焔は「セーフ!」と心の中で呟く。アッシュは言う。


「……優しいんだな」


「え?」


 焔は「どうして?」と思うと、アッシュは続けて話をする。


「確かに、武器はいとも簡単に人を傷付けてしまう。焔の言う事は、騎士道と同じだ。俺は、武器持たず平和に暮らす人々の支援をする為に騎士になった。自分の道はこれ位しか、ないから」


 焔はアッシュの最後の言葉に首を傾げるが、「あ、いや、何でもない。ごめんな」と言ってアッシュは、彼女の頭を優しく撫でる。

 焔は少し恥ずかしかったが、先程の彼の言葉にふと寂しさと言うものを感じた。


「さて。この後、どうしようか。焔は、何かしたいと思うものはある? 例えば、どこか行きたい‼ とか」


 アッシュにそう言われて、焔は考えた。


(どうしよう。そう言えば、アッシュは魔法を使ってたよなぁ。やってみたい……決めた!)


「ど、どうした?」


 アッシュは、いきなり焔が「ひらめいた!」という様子だったので驚いた。


「魔法を学びたい。それに、この脇差も使える様には…しておきたい。私、強くなりたい‼」


 焔は、緊張して堅くなる口を動かして、自分の思いを伝える。異世界に来てやってみたかった事「魔法を使ってみたい」「そして、自分の力で強くなりたい!」という夢である。アッシュは、彼女の思いを受け止めて言う。


「よ、よし! じゃぁ、まずは魔術研究図書館に行ってみるか!」


「魔術、研究図書館?」


「あぁ。そこは、魔術や魔法を学ぶ初心者の為に、研究とかをしているんだ。

 属性で使いやすいとか、杖とかの媒介物を調べてくれる所で、図書館にある書物にはこの世界の知識とか、色んなのがが保管されているんだ!

 専門的に学びたい時は、学校って言う手もあるけど、図書館の方が学費が掛からなくてお勧めだぜ」


「アッシュ、そこに行ってみたい‼」


 焔はそう言う。彼は快く「じゃぁ、行こう」と言い、案内を始めた。しかし、彼の後についていこうとした瞬間、焔は頭痛に襲われた。

 彼女は頭を手で抑えつつ、彼の後を追った。それは、とある事件の暗示に過ぎなかった。



 道中、焔は時間が気になり、アッシュの目が向いていない瞬間、スマホを取り、時間を見て、ついでに地図を見る。


 “何だ? これ? 赤い点……”


 と赤い点をタップしてみる。表示された説明はこう書かれていた。


『魔獣侵攻あり。助けに行く必要のある場合は赤い点、接近する物には黄い点、非常に大きい敵正反応には紫と表示します』


 「助けに向かうべきって! ヤバいって事だよね」と思った焔は慌ててスマホをしまって、彼に言う。


「アッシュ!」


「どうした? そんなに慌てて……」


 アッシュが聞こうとしたと同時に、伝令兵が彼の元へと来て――


「アッシュ様‼ 南のイグラド村から救援要請が届きました」


「何だと! 直ちに向かう! ………焔、一緒に来てもらう」


「う、うん」


 焔はアッシュと共に馬小屋に向かい、どこかへ向かう事になった。しかし、それは彼女にとって、多大なる影響をもたらす事となる。



 馬小屋に着いた焔は、アッシュの愛馬・タサドルの後ろに乗り込む。彼は、手綱(たづな)を握り、愛馬を走らせる。目的地は、兵士の情報では南に位置する村……名は「イグラド村」である。


「一体、何があったと言うんだ。他に情報はあるか?」


 アッシュは馬を走らせながら、兵士に聞く。兵士は馬を走られながら、アッシュに報告する。


「はい。それが、魔獣だけと仰いましたが、馬宿に行く際に…魔獣を引き連れた男がいるとの報告も……」


「魔獣を引き連れた男? ……そいつを捕らえて、目的を聞き出すしかないな。皆は、村人の救出と援護に迎え。俺は男を探して、ひっ捕らえる‼」


『はい‼』

 

 アッシュの指示に、兵士は返事をした。


(本当に、戦いが始まるんだ。アニメは映像だし、絵だったから平気で見られるけど。……っ、また……)


 先程の頭痛が再び彼女に襲った。一瞬だけ痛みが走った事に「不気味だ」と焔は感じる。そう思いながら彼女は、アッシュと共にイグラド村へと向かった。

 しばらくして、街道の先に黒煙が立ち上る村に着いた。焔は、火災による木材の焼けた匂いに、袖口で鼻を塞ぐ。状況を見る限り、事件が起きて数分ぐらいだろう。兵士たちは、村人の救援へ向かう。


「焔、俺から離れるな」


「うん」


 焔はアッシュの傍に寄り、周囲を伺う。彼が前を向いているなら、自分は後ろで彼の目になる。そう決めたのだ。すると、何かの気配を感じた焔。そこには――


「ママ~‼」


 泣きながら歩いている女の子だった。彼女は、母親がいない事に悲しんでいる様だ。

 焔は、小さい子供が苦手だったが、今の状況でそう言う訳には行かないと思い、勇気を出して彼女の元へと駆けつける。アッシュは彼女を見守りながら、周囲を見渡す。


「どうしたの?」


 焔は視線を合わせて、泣いている少女に尋ねる。質問を受けた少女はこう言う。


「ママがいないの」


「そっか。じゃぁ、一緒に探そう。お姉さんとお兄さんが付いているから」


「う、うん」


 少女はそう言って、焔に抱き着く。焔は、彼女の頭を優しく撫でる。と、その時――


「その子から離れてください‼」


 アッシュでもない青年の声が焔に届く。焔は「え?」と言って振り返ると、腰の後ろに二本の短剣を携えた青年がいた。何故、そう言うのだろうか?すると―


「バレちゃった。お姉ちゃんをやっと、捕まえたのに」


 少女はそう言い、「人」という姿を消して行き、魔獣へと変異する。焔は「まずい!」と感じたが、魔獣の腕に囚われて身動きを封じられる。アッシュは、彼女の元へと駆けつける。


「焔!」


 アッシュは剣を抜刀し――


「彼女を、離せ!」


 彼はそう言って、直ぐに魔獣へと立ち向かう。青年も魔獣へと向かい、焔の救出に協力する。だが、魔獣は容赦無く彼らへ攻撃し続け、接近させぬようにして苦戦させる。彼女は海魔の腕によって首を締め付けられ、意識が朦朧寸前だった。


(……死にたく、ない!)


 その思いと同時に、焔の瞳は、紫から蒼に変わっていた。気付かないまま、彼女は脇差を抜いて瞳を蒼から橙へと変え――


(消え去れ、下衆が‼)


 彼女がそう思うと、脇差を媒介して闇の光を放った。アッシュと青年は直ぐ様離れて、距離を取る。


「闇の魔術?」


「何だ⁈」


 アッシュと青年は、彼女の身に何が起こったのか分からなかった。焔は、次に橙から赤に瞳を変えた。しかし、これだけではない。彼女は、口調も性格も変わっていた。


「どりゃぁっ!」


 またしても、脇差を杖としての媒介を得て、闇の魔術で作られた槍を複数放って魔獣へ攻撃する。魔獣は攻撃を受けて、うめき声を上げる。


「ははっ! 良いじゃねぇか。だが、これで終わりだ!」


 彼女は好戦的にでもなっているのか、ニッと笑うと魔獣へと突進する。そして、瞳が灰色へと変化し――


「とどめ」


 焔は、素早い機動で魔獣の心臓を貫いて、血を振り払って鞘に納めた。アッシュと少年は、その光景に驚いた。同時に物陰に隠れていた魔術師は、焔を見て言う。


「困ったね。アイツらの働きは無駄だったか。今回は、見逃そう。だが……」


 焔の働きによって海魔は倒れた。アッシュは、事を終えたのを確認して青年に尋ねてみる事にした。


「……なぁ、この村で何があった?」


 彼はそう聞くと、少年は言う。


「分かりませんが、突如、襲って来たんです。魔術師みたいな男が魔獣を連れて」


「いやはや、まさか、この村には戦士がいたとはね」


 どこからか声が聞こえる。青年は警戒して「誰だ」と言う。焔は周囲を見渡すと、魔術師と思わしき男を見つける。アッシュは剣を鞘から抜いて構える。


「あそこ!」


 焔の反応で青年は男の方を向いて、警戒する方角にいる魔術師の男は、不気味な笑顔でこう言う。


「せっかく、偉大なる王に捧げる土産があったと思ったのにね」


「ふざけるな! 何故、この村を襲った! 理由を話せ‼」


 青年は問う。村の者として、一番聞きたい事だろう。


「おや、私に向かってそう言うとは。まぁ、致し方ない。……それは、我が王の邪魔となる土産を誘き寄せる為だ」


「貴様」


 魔術師の言葉に青年は、怒りを露わにする。焔も当然、怒っていた。「関係のない人々を巻き込むとは許せない」と言う思いは、彼女にも怒りの火をつけた。

 焔は、無意識のうちに赤の瞳に変化して――


「土産って何だよ‼ 話しやがれ、クソ魔術師‼」


「……いいでしょう。土産とは、貴方の事ですよ。右手甲にドラゴンの紋章を持つ者! では、また」


「待て!」


 青年はそう言ったが、既に魔術師は姿を消していた。アッシュは、周囲に危険が無い事を確認して剣をしまう。その時、焔は膝をガクッと落とした。


「焔?」


 アッシュが声をかけた瞬間、彼女は倒れてゆく。彼は、走って倒れる焔を受け止めると、彼女は息苦しい状態だった。アッシュは彼女の額に手を当てると、高熱を出していることが分かった。



 数時間後。焔が目を覚す。感覚では、部屋のベッドの上である事を理解した彼女は安心するが、体が重い事に気付いた。関節が少々痛く、熱っぽさがあった。

 それだけではない。目には包帯が巻かれていて、周りが見えない。


「ここは?」


「気付いたか? 大丈夫。ここは、アッシュさんの家だ」


 焔は、声で判断する。あの時、自分を助けてくれた青年だ。


「お前は、さっきの」


 焔の口調がおかしい。少年はそれに気付いたが、自分の事を紹介する。


「名前、教えてなかったね。……俺は、フロリ・マール。フロリって呼んでいいよ。さっきの、イグラド村の住人さ」


「フロリ、か。私は、焔って言うんだ」


「ほのか、か。珍しい名前だな。よろしく。……あ、あのさ、焔。村での戦いの事、覚えているか?」


 フロリは、彼女にそう問う。焔は、ふと当時の事を思い出す。何も覚えていない。アッシュを守った後、自分はどうなったのか? 何故、生きているのか。


「そう言えば、何があったんだ?」


「ただいま。フロリ、焔は?」


 丁度そこにアッシュが来て、フロリは「彼女は目を覚ました」と伝えた。アッシュは「彼女と少し話をする。悪いが、席を外してくれないか?」と言う。フロリはこう言う。


「分かりました。……アッシュさん、何かできる事があればお手伝いしますが」


「それは、良かった。実は、リビングのテーブルに買い物メモがあるんだ。……でも、任せて良いのか?」


「勿論ですとも! 俺、いつか騎士になりたいので、騎士様の手伝いができる事は嬉しい事です。……それでは、行って参ります‼」


「悪いが、頼むぞ」


 アッシュはそう言うと、フロリは「はい」と返事をして部屋を後にした。アッシュは、ベッドの近くに椅子を運び、座って話を始めた。


「焔。村の事件が治まった後に、国王様から呼ばれて話を受けたんだ。君を連れてきて欲しいって言われて、急いで向かった」


 彼の話は、こうだった。



 焔が高熱で倒れた後、伝令兵がアッシュに国王から召集命令が来た。

 しかも、焔を連れて来いとの事で、急いで城へと向かった彼は国王の部屋に赴き、メイドや執事に焔の応急処置を依頼した。国王は、焔が熱を出した原因を知っているようで――


「アッシュ、落ち着いて聞いて欲しい。あの子は、人々、神のご意向によって幻想界イリュドへ誘われた者だ。しかし、この世界の空気……魔術を使うことで身体に大きな負担を被ったのだろう」


 彼は最初、国王の言う事が信じられなかった。彼は理由と尋ねると、国王はこう言う。


「実は、巫女ジュヌヴィエ様が余にこう言ったのだ。……異なる場所より来たりし乙女、この地へ訪れなり。……幻想界イリュドを救う鍵となる」


 国王の言葉に、アッシュは真剣な表情になる。さらに、国王は彼にこう話していた。


幻想界イリュドに危機迫る。少女と共に悪の権化を晴らせ」


 と言っていた。アッシュは責務として、それを焔に伝たえた。

 読んでくださいまして、ありがとうございます! 人格たちの言葉遣いや表現に気を付けていこうと思います! また、誤字脱字がありましたら、ご報告お願いします!


 次回『第4節 人格と能力』です。

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