第33節 決戦/終 ―新たな歩み―
決戦を終えたケルト一族だが、コノートの存続についての課題は山積みだった。
それから、三日が経った頃。焔は、眠りから目を覚ました。アッシュとアーサーは、彼女が目を覚ました事に嬉しさの余り飛びついた程だった。
「うん。特に、疲労以外の異常はないね。手伝いたいのは分かるけど、しばらくは車椅子生活なる。でも、立ち上がる程度になって回復訓練をすれば、以前の様に戻ると思う。」
オリヴィエは診察を得て、焔に診断を言い渡した。彼女は、彼の言う事に素直に受け入れた。アーサーは、彼女の肩に乗って頬ずりをする。焔は、アルスターの赤枝王城の自室と理解する。
オリヴィエは、彼女に人格について聞く。
「あれ以来、人格たちに変わった事はあったかい?色々とあって、診ていなかったのは悪かったけどね。」
「ううん、全然いいよ。オリヴィエは悪くない。だけど、ホムラはメイヴに無礼を言ったから、無意識で反省してるくらい。」
「そうなんだね。でも、焦る必要は無いよ。次の目的地へ向かう為にも留まる時間は少ないかもしれないけど、心の整理には時間をかけても良い。」
「うん。ありがとう。……ちょっと、あの後のコノート王国の様子を見たいかな。」
焔は、オリヴィエにそう言った時、部屋のドアを誰かがノックした。オリヴィエは入室を許可すると、入って来たのはクーだった。彼は、焔が目を覚ましたと聞いて来たようだ。
「クーは、焔の事をとても気に掛けていたんだよ。戦士たちから心配性ですなって言われたら、俺の妹の様な存在だから心配するに決まっているだろって言っていたんだよ。」
「ばッ……。オリヴィエ、恥ずかしいからやめてくれ…。敬語は使うなって、言ったけどよ…。」
クーは、焔に知られたくない事をオリヴィエに話されて照れてしまう。
“なんか、こっちまで恥ずかしくなる。妹のようだって…”と焔、
“兄貴は、そう言う所が、ズルいんだよねぇ”とユウ、
“まぁ、他人にそんな事を言われたら、照れるのもわかりますけど”とレイは思う。
「そうだ!クー。焔は、外の様子を見たいって言っているんだ。僕は、この後、患者の様子を診察しないといけないんだけど、お願いできるかな?車椅子は、ゆっくり押してね。」
「お、おう。任せろ。」
クーは、オリヴィエの頼みに答え、焔の車椅子を押す担当になった。オリヴィエは、焔の部屋に出て患者の看護へと向かった。
クーは焔を車椅子に乗せて、アーサーと一緒に王の間へと向かう。そこには、魔法陣が置かれていた。
「ん?これは?」
「それは、転移魔法だ。オリヴィエのおかげで、こっちとコノートを繋いでる。アルスターよりも、あっちの方が打撃を受けたからな。ケルト一族として、支援しない訳にはいかねぇ。」
クーはそう言って、車椅子を押して魔法陣の上に乗ると一瞬だけ光に包まれ、コノート王城の門の前に到着した。門の前の広場にテントが幾つか張られている。
「焔!クー!」
「兄上!」
フロルとクースクリドは、彼らを見つけて駆け寄る。彼らは、相談したい事があるらしく、会議室となっているテントに案内をして話を始めた。
「実は、コノートには……もう、王家の跡取りはおらず、どうすれば良いか迷っているんです。」
「まぁ、これまでいくつか考えたんだけど、まだまだ、勉強不足なので案を貰えたらと…。」
クーはその問いについては、専門外と言って良いほど無知なので困惑するが―
「なるほどね。王家の跡取りがいないが、国は保ちたいと……。」
焔は、何かをブツブツと呟く。クースクリドは、何を言っているのだと彼女の元へ行くと―
「そうです。王政ではなく、民自らの政治……民政でsって、うわぁ‼」
と言い終える直前で、クースクリドの顔が目の前と言って程の距離だった為、焔は驚いて彼の額と衝突した。
『?!』
二人は慌てて、彼らの額を見る。多少の打撲で済んだと判断した彼らは―
「クースクリド。お、お前、いつも言っているが、近すぎるぞ…。」
「冷や冷やしたァ。二人が無事で何より…。」
とクーとフロリはそれぞれ呟く。焔は驚いたのもあるが、クースクリドに額をぶつけてしまった事を謝罪する。彼も、驚かせてしまった事を謝罪する。
フロルは互いの謝罪を終えた所で、焔に何を思いついたのかを尋ねる。彼女は、一つの案を提案する。
「民政さ。民自ら国の代表者を選挙で決め、公正な憲法…法律の下で国を築くんだ。法律は、国内の民。国の代表者であっても、法律を悪用する事、法律を破る事は許されない。」
彼女の説明を聞いたクースクリドは、ふむふむと頷いて言う。
「民政…。確か、オリュンポス諸国同盟がそのような政治体制を行っているとは聞きましたが…。コノートは、これまで王政だった故にどうしたものか?」
「それは、国の官僚に位置する人物たちがどうするかにもよるけれど、民だって国を支える為に働く。ただ、農業や漁に牧畜だけをしていいものじゃない。民に、意外な知恵者がいるかもしれない。」
焔はそう言った。フロルは、政治体制が変わって平気なのだろうかと心配し、焔にそう尋ねる。彼女は、確実とまではいかないけれどと前提して―
「例え、王政がどれだけ長く続いても、いつかは変わるよ。国だって、政治だって、文化だって。それに、王族が存在して、国の偉大なる象徴や名誉で、政治に関わらない事もある。積み重ねが重要さ!」
と言った。クースクリドは、彼女の言葉に考えを巡らせ―
「焔。やってみようと思います。少し力を貸してもらう事もあるとは思いますが…。」
「大丈夫。助言しかできないとは思うけど、これ位しか今はできないし。」
焔はそう言う。政治には詳しくない、かつ、ケルトの文化を全て理解している訳でもない。彼女は、助言だけを提示し、アルスターとコノートの文化に沿って、一族で決めて欲しいと思っている。
フロルは、彼女の考えを聞いて、王族として一理ある事かもしれないと思って言う。
「俺も、一応、王子だ。一緒に手伝う。参考にしたいんだ。……良いか、クースクリド。」
「勿論だ。君は、私にとって、大切な友人の一人だ。君の国との同盟を、いつか組めると嬉しい。」
クースクリドは、フロルの手を取ってそう言った。彼もまた、クースクリドの手を握り返して握手する。
「ありがと!…じゃ、早速、チルパに連絡して相談しないと!後でまた来る。」
フロルは笑顔でそう言って、自室があるテントに向かって行った。クースクリドは、彼を見送ってから言う。
「それでは、昼食の後にコノートの官僚方を会議室に集合させ、今後の国の成り行きを説明しましょう。その時も、兄上も焔もご参加願えますか?」
「良いよ。官僚の人たちを見ておくのも、勉強になるからね。」
「構わないぜ。だけど、俺は、あんまり詳しくないぞ。」
「兄上は、民たちや戦士たちの気持ちをよく理解されていると思います。民の代表として、意見を聞かせてもらいたいのです。」
クースクリドは、兄であり、民を理解しているクーだからこそ頼めるものだと説明した。クーは、彼の願いを受け入れ、会議に参加することになった。
そして、昼食時を終えて、コノートの官僚だった者たちはクースクリドの依頼に答えて会議室のテントにやって来た。
「皆さん、お集まりいただきありがとうございます。皆さんにお話しするのは、今後のコノート王国の政治体制になります。
亡き王族の意志を継ぐのは当然の事ですが、皆さま方はコノートの存続を選びますか?」
「勿論だとも!」
「コノートは、アルスターに負けないくらい長い歴史を持つ国だしな。」
「他国に支配されてたまるか。」
クースクリドの尋ねに、官僚たちはぞれぞれ言う。彼は、コノート王国生存を望んでいる事を再確認して話をする。
「王族の意志を継ぎつつ、今日から王政ではなく、貴方たち民が自ら国を動かすコノート共和国へと移転します。」
クースクリドの言葉に、官僚たちはザワザワとする。彼は、官僚たちを静かにさせて、焔を紹介する。
「こちらは、ルミソワの騎士団団員にして、共和制へと移行を勧めた式守焔殿です。焔殿、共和国の政治体制について説明をお願いします。」
焔は、彼に任された任務を果たすべく、まずは官僚たちに挨拶を交わして話を始めた。
「まずは、政治体制ですが、村や町に村長・町長がいる様に、国の代表者…総理大臣と言う立場が必要になります。また、経済、畜産・農業、法律、外交、軍などを担当する方が必要になります。」
「そ、それは、例えば、どのような?」
官僚たちの中の一人は、焔の説明に質問をした。
「例えばですが、軍隊を組む際に総大将、隊長と分けられます。その場合、軍のリーダーである総大将は、国を防衛する役割を総統括するのです。ただし、軍事力を持っていると言えど、無差別に暴力を振るう事は断じて許されません。」
「な、なるほど。」
「後で、詳しくお話いたします。……共和制は、民自ら国の代表者を選挙で決め、公正な憲法…法律の下で国を築きます。法律は、この国の民、国の代表者やいかなる富裕層であっても、法律を悪用する事、法律を破る事は許されません。」
焔は、そう説明を続けた。
読んでくさだいまして、ありがとうございます。
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焔:共和制で上手くいけば、国は存続できる。……だぁ~もう!難しい話は止め‼
だから、『イリュド豆知識!』を話そ。実は、ジュヌヴィエは、本名ではなく引き取られた時に、先輩巫女さんたちによって名付けられたそうで、本当の名を探し続けているそう。
いつか、自分を見つけられると良いね。次回!『第34節 コノート共和国、誕生』!




