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クラージュ・イストワール  作者: Hanna
第Ⅰ章続編 白詰草の女王国 コノート 編 ―正義は己の刃に―
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第32節 決戦/禍-Ⅲ ―正義は己の刃に―

 王の間で起こった想像を覆す事態。焔とクーは、謎の怪物『メリウス・ヘヴン』と戦う。

 王の間は、まるで別の空間の如く変化する。そんな中、焔とクーは連携してメリウス・ヘヴンへ攻撃を続ける。


「気をつけて、兄貴!黒い液体は、火傷するくらい熱い‼」


「おう‼分かった!」


 クーは、焔の忠告を聞き、黒い液体に注意しながら走って接近を伺う。彼女は、二丁の銃で射撃を行い、気を引きつけて物陰に隠れる。すると、王の間の扉が開き―


「焔!」


「クー!」


「間に合って良かったです。」


 ルノー、ロビン、デイビッドが来た。三人は、彼らが戦っている敵を見て何者なのかが気になったが、メリウス・ヘヴンは新たに来た三人に触手の攻撃をする。三人は、すぐさま回避して武器を手に取る。


「三人とも、触手と黒い液体には注意して、液体は火傷する勢いよ!」


 焔は、援護に来た三人に忠告を促す。


「分かった。」

「了解。」

「承知!」


 ルノー、ロビン、デイビッドは、焔の忠告を聞き入れて連携に参加する。ルノーとデイビッドはクーと接近戦へ、ロビンは焔と共に射撃へと入った。


「ガァァァァァァッ‼」


 メリウス・ヘヴンは、絶叫と言う音波で五人の耳を刺激する。彼らは耳を押さえて耐えた直後、触手の攻撃を避ける。

 焔は、右手に握る打刀で触手を斬り払う。メリウス・ヘヴンは、別の触手で彼女へ攻撃をする。彼女は、上に飛んで左手にある銃で奴へ魔法弾を撃ち込む。

 しかし、メリウス・ヘヴンは、彼女に向けて魔法弾を放った。


「ぐっ‼」


「焔!」


 魔法弾の攻撃を受けた焔を、ロビンは上手くキャッチする。彼女の腕は火傷で爛れていたが、鞘の力で直ぐに完治する。

 ロビンは、彼女が無事である事を確認して直ぐに態勢を整えるべく、柱に隠れる。


「こうなれば、長期戦になる、か。」


 ロビンは、物陰から顔を出して矢を放って直ぐに隠れる。焔は、盃に刺さっていた矢に疑問を浮かべて彼に話をする。

 そこで、彼女は、ロビンが毒を塗り込んだ矢を打た事で黒い兵士は現れなくなった事と毒が効いていた事を知る。


「毒、か。行けるのかな?」


 焔はそう言いながら、顔を出して射撃をして再び隠れる。ロビンは、彼女に何か作戦があるのかと尋ねると、彼女は頷き返して言う。


「ロビンが使う毒と兄貴の呪いの槍。アレを、連続で攻撃しちゃえばいいって事。まぁ、タイミングが必要だけど…。

 一回、兄貴は、呪いの棘を打ち込んだようだけど、まだ一部の範囲にしか行き渡っていない。あと二回くらい打ち込んで、ロビンの出番。って所なんだけど、どうかな?」


「いいんじゃねぇか。その作戦、乗ったぜ。」


 二人は、手短に作戦を練り一つにまとめ上げる。


「んじゃ…。」


『行きますかッ!』


 二人は一斉に飛び出して二手に分かれて、射撃を行いながら次の者か柄に隠れる。ロビンはクーとデイビッドに、焔はアッシュとルノーに作戦を話す。四人は、その作戦に異論を唱える事無く、直ぐに受け入れる。

 焔とロビンは、互いに作戦を伝えたとアイコンタクトを交わして頷いた。そして、彼らは作戦を開始する。


「メリウス・ヘヴン、こっちだ‼」


 (エル)は、そう言って魔法弾を連続で放つ。メリウス・ヘヴンは、焔を標的にして黒い雨で攻撃を容赦なく行う。その間に、ルノーは氷を纏って左触手を凍傷させる。直後に、デイビッドは剣で右触手を斬り落とす。

 メリウス・ヘヴンは、背についている肉片の翼で二人に反撃をした。ルノーとデイビッドは、なんとか攻撃を受け流して軽傷で済む。


紅棘(ゲイ)死の魔槍(ボルグ)ッ‼」


 クーは、ルノーとデイビッドが離れた瞬間に魔槍の呪いを打ち込む。奴はクーに反撃するも、彼の鋭敏な動きに追いつけない。あと一回だ。

 (ほのか)は、再び前に出て雷魔術で連続射撃を行う。奴は、雷攻撃に痺れるも、すぐに回復して彼女に黒い雨攻撃をする。


「おっつつ‼…ふぅ…。」


 “危なかった…”


 焔は、奴の攻撃をギリギリの所で掻い潜って、物陰に隠れる事ができた。そして、雨の攻撃が止んだ所で、顔を出して射撃を行い、敵の攻撃を柱で防ぐ。

 しかし、柱の耐久力が無くなったのか罅が走り、焔の方へと崩れ落ちて行く。彼女は、予想外の事に後れを取ってしまったと目を瞑った時―


「焔ッ!」


 と声が聞こえた。声の主であるルノーは、彼女の元へと走り込んでスライディングをして彼女を救出して隣の物陰に隠れた。


「あ、ありがと、ルノー。」


「無事なら何よりだ。行くぞ。あと一回だ。」


「えぇ!」


 焔は、ルノーと共に立ち上がって、直ぐに行動に出て雷魔術の連続射撃を行う。見事に命中し、メリウス・ヘヴンは痺れて怯んだ。


「今だ!クー王子‼」


 ルノーはそう叫んだ。クーは、緑炎を身に纏い、魔槍に最大出力の魔力を発動させ―


「これで、最後だ‼紅棘の(ゲイ)死の魔槍(ボルグ)ッ‼」


 と、作戦通りに最後の呪いの棘を打ち込むこと成功して、直ぐに離れると―


櫟の(イチイ)弔いの矢(ボウ)‼」


 ロビンの声と共に、毒の矢の一撃がメリウス・ヘヴンへと命中する。そして、棘の呪いと毒の矢が一斉に奴の体を巡って爆発する、と思いきや―


「ガァァァァッ‼」


 とメリウス・ヘヴンは、呪いと毒に抗っている。彼らは、予想外の出来事に戸惑ってしまう。これ以上、効果のある魔術は無い。焔は、覚悟を決めて打刀を手にしてメリウス・ヘヴンへと前進する。


『焔‼』


 ルノー、クー、ロビン、デイビッドは、彼女が一人で前進するとは思わず慌てて追いかける。焔は、そのまま気にせずに、前へと進んで―


 “水の型 清澄(せいちょう)の技 白鳥舞踊戯(はくちょうぶようぎ)


 と上へ飛んで、メリウス・ヘヴンへと斜めに降下する。メリウス・ヘヴンは迎撃しようとしたが、彼女の姿が消えて行き、白鳥の群れとなって空を飛んで行く。すると、奴の中から、変貌したアリルが現れて―


 “白鳥?…美しい”


 と思い、白鳥の群れへと手を伸ばした時―


 スパァンッ!


 彼女は、斜めに降下してアリルの首を打刀で斬った。(レイ)は、そっとアリルの方へと振り返る。こうするしか方法は無い。もう、アリルの命も長くない事を悟って、せめてもの救いである。


 “アレ?俺、何のために、国を守ろうとしたんだ?父さん、母さん、俺、王として頑張れたのかな?”


 ♢


「アリル。いくら、コンホヴァルを許せずとは言え、民を、ケルト一族を巻き込んではいけません。」


 ―そうだ。父上は、()()()()()()()()()()()()

 あとで、殺そうとしたけど、クランの猛犬がやったんだ。アイツに復讐心を燃やし、コノートの癌でもあるメイヴを暗殺する計画で刺そうと考えたんだ。

 そんな息子(おれ)であっても、母上は厳しくも優しい人だった。例え、どんな事が起きても、弱きものを巻き込む事は王族としても、人としてもあってはならない、と―


「うるせぇ‼俺の何がわかるんだァ‼」


 ザシュッ!


 ―気が付いた時は、俺は、母上を怒りの勢いで殺してしまった。後悔はあったはずなのに、俺は、自分の復讐を遂げる為にメイヴを女王として棚上げをしてアルスターに宣戦布告する事に成功した。

 でも、俺は、こんなのを望んでいなかった。復讐のまま、我を忘れていた。父上、母上、俺を許せないよな?―


「アリル。」


 “え?父、上?”


「私は、アリルを許せないと思った事はありませんよ。大事な、息子よ。」


“母上‼……あぁ、なんだか、暖かいな”


 ♢


 アリルは、自分の首を焔が斬り落としたのを見たが、痛みはチクッとするだけだった。彼女は、アリルに悲しい眼差しを向けた。


 “あぁ。苦しみから、解放される、のか。焔、と言ったか。あの瞬間だけだが、殺すのを()()()()な。

 お前なら、このコノートを平和に導くだろう。王が死んでも、国は、民は生きる。頼んだぞ…”


 焔は、アリルが微かに微笑んだのを見て思う。


 “人を巻き込み、殺した事は許さない。でも、怪物になったアンタを()()()()殺さなかった事、すみません。アリル・マク・マータ”


 アリルは、骨も残らず消えて行った。王の間はボロボロだったが、無事に元の姿を取り戻した。焔は、武器を亜空間にしまって、アーサーとメイヴの元へと戻る。しかし、メイヴの心臓は止まっていた。


 “メイヴ。ほんと、自由気ままな我が儘な女王様だったよ。……でも、言い換えれば、自分の思いに素直だったのかな…。兄貴への愛は、一途だったし”


 焔は、メイヴについてそう思った直後―


「……ッ‼」


 突如、頭痛に襲われて膝をつき、耳に響く音と何かに誘われるかの様な感覚に襲われて倒れて気絶してしまう。

 城の外。コノート王城は大きな爆発音と共に、ゴゴッと音を立てた。また、モリガンの神託で、ゴスラウェイに救援に来たフロルとジュヌヴィエ、ロラン、オリヴィエ、アストルは音を聞いて城門へと向かう。



 王の間にいた男たちは、天井や床が崩れて行くのを見て、城が崩れる事を察知した。ルノーは焔を、クーはメイヴを抱えて、先行して逃げ道の確保をしているロビンとデイビッドの後を辿って行った。



 こうして、コノート王城は陥落。表上は、アルスター軍の勝利だった。

 しかし、王の間にいた焔とクーは、闇に葬られた部分はあるも戦いの裏にある真実を知る唯一の存在となった。謎に包まれた存在もあったが、両国の首都であるクランとゴスラウェイにいた民は犠牲にならずに守られた。

 読んでくださいまして、ありがとうございます。

― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


クー:まさか、こんなことになるとはな。


ロビン:俺も、同じだ。けど、ケルト一族としては、このままじゃ、コノートはボロボロになる。


クー:あぁ。コノートは、戦前から友好国だからな。助けない訳がねぇってこった。


ロビン:あぁ。俺たちは、少なからず援助してやるよ。次回、『第33節 決戦/終 ―新たな歩み―』。


クー:コノートは、新しい形で復興するぜ。

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