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クラージュ・イストワール  作者: Hanna
第Ⅰ章続編 白詰草の女王国 コノート 編 ―正義は己の刃に―
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第29節 決戦/破-Ⅲ ―女王への謁見―

 別動隊は二手に分かれ、焔とクーは探索のルーンが刻まれた小石を追って王の間へと向かう。

 地下にいる別動隊とは反対に、焔とクーは探索のルーンが刻まれた小石を追って王の間へと向かって走っていた。

 二人は、城の中に兵士がいない事に違和感を持ちながらも、王の間へ続く廊下を辿って到着した。クーは、ドアノブに手をかけて、焔と向き合って頷く。彼女とアーサーは、準備は良いと頷く。

 そして、彼はそっと扉を開ける。彼らの向こうには、玉座に座るメイヴの姿があった。


「あら、お客は二人だけ?」


「二人だけじゃ、不満か?」


 メイヴの言葉に、クーは言い返す。焔は、余計な言葉をかけぬ様にと口を閉ざす。メイヴは、自分に対して恨みの如きの感情を持っていると分かっているからだ。しかし、それは完璧な誤解だ。

 メイヴは、彼らを見据えて玉座から立ち上がる。


「ま、お客がいるだけでも構わないわ。…それより、そこの小娘さん。名前を教えてくださいな?」


「すぐに忘れますよ。…式守焔です。」


 (ほのか)は、素っ気なく言った。


「珍しい名前ね。よくも、クー様に兄貴と呼んだわね。罰を与えられるべきよ‼」


 メイヴは、怒って言った。焔は―


「はぁ?兄貴と呼んで何が悪いのか、よく分からないんですけど…。別に、他意は無いです。」


 と冷静に言い返した。クーは、メイヴが何故怒っているのかも分からない。兄貴と呼ぶのは、全然かまわないと言うのになぜだと言う疑問が過るばかりだ。


「腹立たしいわね、その顔。良いわ‼私の力を見せてあげますわ‼」


 メイヴはそう言うと、手の甲に刻まれた紋章を翳すと光り始める。眩しさに、彼らは目を瞑り、鎮まった時に開けると―


「おいおいおい‼」


 と驚くクー、


「召喚術?!」


 と判断する(エル)


「グルルルルッ‼」


 と威嚇するアーサー。

 彼らの目の前には、炎を纏い、赤黒い槍を持った化け物そのものだった。焔は、どこかで見覚えのある物だと勘付く。しかし、メイヴは慌てていた。


 “どうして‼召喚した時は、ちゃんと言葉も交わせていたのに‼こんなの、ただの狂気のある化け物じゃないの‼”


 焔は、武器を構える。その時、化け物はクーに向かって突進する。彼は、槍を構えて攻撃を何tか防ぐも、突進の勢いで壁に叩きつけられる。


「兄貴‼」

「キュウ!」


 クーが殺される前に、何とかしなくてはいけない。(レイ)は、アーサーに彼の手助けを支持をして、勇気を振り絞ってメイヴの方へと歩いて正面で止まって問いただす。


「女王メイヴ。一体、何を召喚なさったのですか?」


「……決まっているでしょ。英雄としての、クー・フーリン様よ!貴女の様な女に、何がわかるの‼」


 メイヴは生意気だと言わんばかりに、(ほのか)の頬へビンタをかました。彼女は、ビンタを受けたのは幼い頃以来だった。痛いのは当然だが、仕返しはしない。メイヴは、二度、三度、掌で焔の頬をぶった。

 それでも、焔は仕返しせずに涙を溜めつつも、全ての手の平打ちを受け続けた。


「ちょっと‼何故、仕返しをしないのです?貴方も見た所、女だろうと戦士でしょ‼」


「……女王メイヴ。私は、亡くなったフェルグスの言葉を受け、貴方に攻撃はしません、いや、出来ません。」


「フェルグス?死んだ?最近、姿を見せなかったのは…。そんなっ‼」


 メイヴは、(ほのか)の言葉にショックを受けたのか、その場に崩れてしまう。(レイ)は続ける。


「犯人は、貴方の夫の可能性があるからです。……貴女が、この戦を起こした事を私は許しません。ケルト同士の戦いなど、一族としてあるまじき行為です。」


「うるさいですわ‼何を分かって、そんな事を言うの‼ただ、私は、あんな男より上だって知らしめたかっただけよ‼女磨きがなっていない貴女に言われたくないわ‼」


「だからといって、大事な貴方の国民を犠牲にしていいのですか‼」


 焔がメイヴと言い合いになりつつも説得し続ける一方、クーとアーサーは、召喚されるも暴走した英雄を鎮めるべく戦う。

 化け物は、激しい炎で燃え、片目は頭から飛び出ており、人ではないのは確かだった。


「キュウゥゥッ!」


 アーサーは、火炎放射で化け物とクーとの距離を取らせ、彼の肩に乗る。クーは、アーサーに感謝を述べて、直ぐに魔槍を振るって化け物へと一撃を入れる。しかし、化け物はクーと同じ様な攻撃で彼の攻撃を防いだ。


 “俺と同じ動きをしやがって‼焔は、メイヴを説得しているか…。なら、こっちも本気で‼”


「せいやぁ‼」


 クーは、全身と矛に緑炎を纏って化け物へ一筋を入れる。すると、化け物はクーの魔槍の矛に纏った緑炎を受けて、火傷を負って怯む。

 彼は、化け物は緑炎が弱い事に気付いて、怯んだ隙に俊敏に間合いに入って連続突きを打ち込む。アーサーは、彼の肩にがっしりと掴まって落ちない様にし、彼が怪我をした際に影の国で得た治癒魔術を使用する。


「そこだっ‼」


 クーは、緑炎を纏った突きを行って化け物を翻弄する。化け物は、彼と同じような攻撃を行うも、()のクーの速さに徐々に追いつけられなくなっていく。

 ついに、クーは化け物の腕を斬り落とし、腹部に傷を負わせる事に成功した。化け物は、叫び声を上げながら後ろへと飛んで、内臓が零れ落ちた腹部の傷を押さえる。


「キュ!(特別意訳:今だ‼)」


「牙を撃て‼……紅棘の(ゲイ)死の魔槍(ボルグ)‼」


 クーは、化け物に向かって一瞬の時で接近し、心臓目掛けて魔槍の矛を貫いて一気に引き抜いて、化け物との距離を取る。

 化け物は、心臓を穿たれて尚、立ち上がろうとしたが、ゲイボルグの茨の棘の呪いが発動し、全身から棘が体の表面に現れた。


 『これで、お前は、前世(かこ)を、俺を乗り越えた…』


 クーは、化け物が微かにそう話したのを耳にして驚いた。化け物は、その場に倒れると同時に光となって消えた。


「あの化け物、一体?それよりも、焔だ。」


「キュウ!」


 クーとアーサーは、焔とメイヴの元へと駆けつける。彼女は、メイヴから掌で頬を打たれたり、装備してあった鞭で叩かれたりしているも、仕返しで傷付ける事をしない。どんなに腹を立てたとしても…。

 クーは、メイヴにそれ以上、彼女を叩くのは止せと止めに入る。


「何よ!その小娘は、兄貴と言っておきながら、恋仲でも組んでいるんでしょ‼白状なさい‼」


「は?お前、勘違いしているだろ?コイツは、俺の妹分だが、恋仲じゃねぇよ。誰から聞いたんだ?」


 クーは、焔を後ろにして守り、メイヴにそう言った。彼女は、思い人でもあるクーにその言葉を言われて混乱する。


「なっ‼」


 “う、嘘‼で、でも、クー様は本気で言っている?裏切りが嫌いなクー様には嘘は付けない…じゃぁ…”


「あの魔術師、嘘を言ったのね‼女王に嘘をつくなど、無礼にも程があるわ‼」


「いや、それを信用するお前も悪いぞ…。焔。酷い怪我だな。直ぐに治療しねぇとな。」


 クーは、メイヴに騙すのも騙されるのも自業自得だと言い、焔の怪我を見て言う。焔は、首を横に振って―


「大丈夫。しばらくすれば、治るから。……魔術師と繋がっていたのは、本当なのですね。ノーディンの事も。真実を、話してください。」


 と言い、自分の怪我よりメイヴに真相を話す様に促す。クーは、メイヴにいい加減本当の事を話す様に言う。メイヴは、彼の言う事に観念したのか―


「私は、あなたたち…アルスターが憎かった!だから、強大な軍を築き上げたのよ。全ては、ケルト一族を支配し、アルスターから全てを奪う為よ。

 アリルなんて、みみっちい男だから、私が自ら軍を仕立て上げた。」


 と言い、立ち上がって彼らから離れて言い続ける。


「それに、良い男と強い男、素晴らしき財宝、優れた兵士と良い領地も私のものよ。それには、必要な犠牲を払ってもらうけどね。

 弱い男とか、宝の価値もない物なんていらないし、それらは斬り捨てるわ。それに、私は最上の女よ。他の女など私に追いつけないとしても、美を徹底的に教え込むわ。

 ……勘違いしないで。私は、敵対されるのは嫌じゃない。ただ、私の物にならない男、私の勇士まで傷付けた小娘は、唯一気に入らないわ‼」


 メイヴの話を聞いていた(ホムラ)は、ぼそりと何かを呟いた。メイヴは、彼女が何かを言っている事に気付いてもう一度仰いなさいと言う。彼女は、堂々と―


「女王と(・)()()は、認めるけどさぁ…。(おれ)は、“お前は、()()だ”って呟いたんだよ‼……ぎゃぁぁぁ‼何言ってんの!」


 と言い放った。


 “じ、地雷を踏んでしまった‼”


 と、ホムラが言った事に、(ほのか)は背を向いて慌てる。当然、メイヴにとっても地雷で、顔に怒りの表情が出る。


「…許せない。許せない許せない許せない許せない‼絶対に‼貴方たちを許せない‼…良いわ!小娘!私がどれだけ偉大なる女か、教え込んでやるわ‼」


 メイヴは、そう言って鞭を地面に叩きつけて音を鳴らし、自在に操って焔に襲い掛かった。

 一方、その頃、赤い光を放つ盃を破壊するべく、黒い液体から現れた兵士を片付ける。しかし、黒い兵士は容赦なく現れる。


「あの盃を破壊しないといけないか…。ぐっ‼」


 ルノーは、黒い液体に踏み込んだ瞬間、焼けるような激痛を伴った為に急いで離れる。彼は、アッシュ、クースクリド、デイビッドに黒い液体に入ってはいけない事を話す。

 クースクリドは、作戦を提案する。


「アッシュ殿とルノー殿、貴方たちは盃の破壊をお願いします。私とデイビッドが、敵を蹴散らします。」


「もう少しで、助っ人が地下に来てくれます!しばしの辛抱です。」


 デイビッドは、アッシュとルノーにそう伝える。


『了解‼』


 時間も無い為、クースクリドの提案を了承して、盃に向けて魔術を放って攻撃をする。すると、盃は攻撃を受けた直後にバリアを発動させた。

 アッシュは光魔術を、ルノーは氷魔術を放つが、バリアで吸収されてしまう。


「きゅ、吸収した?!」


「先輩。それ所ではないです!とりあえず、様々な魔術を放つしかないです‼」


 驚くアッシュに、ルノーは攻撃を続けるしかないと促す。彼は、ルノーの言葉に我に返って、共に魔術を放ち続ける。

 炎、水、氷、風、雷、大地、光、闇と次々と撃ち込むも、効果は無いまま吸収されて新たなエネルギーとなっていくばかりだった。

 読んでくださいまして、ありがとうございます。


― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


 焔:いよいよ、女王メイヴとご対面か…。はぁ…。


 クー:どうした?


 焔:いや、その、メイヴ女王は、少し苦手な相手だと予感してるんだ。仲良くしたいけど、全員とは出来ない、と言うのを実感させられる…。それよりも、兄貴はメイヴに目をつけられているでしょ?


 クー:ま、そうだな。アイツから、何度告白を受けた事か…。だけど、断った。


 焔:断ったのか…。まぁ、その方が良いかもしれないな。


 クー:なにか言ったか?


 焔:ううん。何も。


 クー:なら、『イリュド豆知識!』を話すぜ。メイヴは、女磨きを徹底的にしている。召使によると、女磨きを行っていない者には、徹底的な講習を受けると聞いた事があるぞ。女は美しくあるべきと言っているそうだ。


 焔:美を意識するのは良い事だけど、かえってストレスにならないのかな?次回『第30節 決戦/禍-Ⅰ ―真相―』。別動隊の戦いは佳境に入る、か。メイヴ女王、無礼をお申し上げてごめんなさい‼(土下座)

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