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クラージュ・イストワール  作者: Hanna
第Ⅰ章続編 白詰草の女王国 コノート 編 ―正義は己の刃に―
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第28節 決戦/破-Ⅱ ―コノート王城へ―

挟み撃ち作戦が成功する最中、焔は頭脳を使った戦いに追い込まれる。

 コノート軍を挟み撃ちした頃、(エル)は男との距離を取るが、これまでにない焦燥感を覚える。


 “駄目だ。でたらめに間合いを詰めたら、柱に阻まれるし、衝撃で脚が止まる。頭、頭を使え‼”


 男は、焔に向けて柱を次々と出現させ、飛び散った岩を手にして投げる。彼女は、直ぐに避けて攻撃をせずに考える。


 “考えている余裕がないっ‼柱の上に行くと岩を投げて来るし…。どうすれば…師匠‼”


 『水の魔術は、様々な用途に使用できる。時には癒しを与え、時に破壊を与える。水害は、あらゆるものを飲み込むだろう。

 岩をも砕き、森を壊す勢いを持つのは炎は勿論あるが、水害が一番の敵でもある。自由自在に姿を変える故に、生活に不可欠にして脅威でもあるのだ。』


 “そうだ!複合技…。今まで単純技だったけど。小娘の意地を見てろ、メイヴ‼それに、時間も無い‼”


 焔は意気を込めて息を整え、刀を握り締めて立ち上がって前進する。男は、動かずに斧を地面に突き刺し、岩の柱を次々と出現させて焔へ放つ。


 “水の型 潮煙(しおけむり)の技 泡沫(ほうまつ)運び!”


 彼女は、素早い走りで柱の上へと昇り切り、また前へと走る。男は、柱の上に飛んで彼女へ岩を投げる。


 “泡沫運びからの‼……流麗(りゅうれい)の技 青孔雀雅舞斬(せいくじゃくがまいざん)‼”


 泡沫飛びの足運びと共に、回避と攻撃を合わせた動きを利用して飛んで来た岩を打刀で斬って柱の上を次々と前進する。彼女は、その勢いで間合いに入って最接近した時、男は斧に大地魔術と雷魔術を纏って強力な一撃を叩きつける。

 しかし、彼女の姿は無い。


 “これで、決める‼白糸の技 爆布瀧(ばくふだき)‼”


「てやっ‼」


 焔は、上空から男へまっしぐらに降下し、刀を上段から思いっきり滝のように振り降ろした。水魔術を纏っていた事もあり、男は水に飲まれた。彼女は、血を払って刀を亜空間へしまう。

 しかし、水が地面に吸収された後に男を見ると、男の下半身が魔獣の様なもので、肌からは黒い液体がドクドクと流れていた。


「な、何だこれは?!」


(ロード)‼どうしたって、何だコイツ!」


「キュウ?!」


 駆けつけたアッシュとアーサーは、男の姿を見て驚く。ルノー、クー、クースクリドも、男の遺体を見て何が起きたのかと言う疑問を持つ。しかし、時間は無い。別動隊は、すぐさま首都ゴスラウェイへと向かう。

 しばらく経って、ゴスラウェイの城壁が見えた。それでも、兵士の姿は相変わらず多い。それも、黒い鎧を纏った者たちだ。


「またかよ‼」


 クーは、手綱を握って戦車を操縦士ながらそう言った。(ほのか)、アッシュ、ルノーは、時間は一刻も無いと言うのにと悔しさが募る。

 その時、アーサーが上を向いて鳴いた。彼女は、タサドルの手綱を握りながら空を見ると、影の国に向かった際に海岸へと案内した火の鳥だった。


 “あれは…まさか?!”


 焔は、あの鳥を使いこなす存在を思い出す。すると、火の鳥は地上へ降下し始めて、兵士たちの前で止まって一瞬光を放って人の姿へと変わる。焔たちは、急ブレーキで止まる。


「太陽神ルー様?!」


「と、父さん?!」


 焔が言った名に、クーは実の父親だと驚く。彼は、夢の中で見た父親とそっくりで「父さん」と言う言葉が自然と口に出た。アッシュ、ルノー、クースクリドは、はい?!と言う様な驚いた表情をする。

 アッシュとルノーは、焔に尋ねる。


「あ、あの人、誰?」


「敵なのか?」


「味方だよ。ケルト族にとって、太陽神と崇められるルー様で、クー…兄貴の実の父親。」


『お、お父さん?!』


 焔の説明に、アッシュとルノーは驚く。その驚きの声を聴いたクースクリドは、血が繋がっていない事と炎の戦士として暴れていた理由を知る。ルー様を父親とするのならば、デヒテラ王妃の人としての血とルー様の神の血と力を持つのだ、と。

 すると、ルーは剣を手にして一振りをすると、兵士たちが風の勢いで両方に飛ばされ、真っ直ぐ開けてゴスラウェイに入る扉まで破壊してしまった。

 それでも、焔たちが通れる十分な幅で、両端はわずかながら炎が立ち込めている。


「行け。ここは、私に任せるが良い。」


「い、行こう!」


 焔は、そう言ってタサドルを走らせて開けられた道を進む。その後に続いて、アッシュ、ルノー、クーとクースクリドも先へと向かい、ゴスラウェイに入った。ルーは、彼らを見送ってから呟く。


「この兵士は、なるほど。◯◯の神…否、厄災の思念を持っているか…。なら、殲滅あるのみ!」


 ルーは剣を手に、全身に炎を纏わせた。

 ゴスラウェイに無事入るが、兵士と庶民が入り混じって進む事が出来ない。先を走る焔は、武器をしまって水魔術を放って兵士と庶民を優しく道脇へ退かせる。


(ロード)。どうして?」


「どうしてって。決まってるでしょ。敵国と言えど、元は同じ民族でしょ?同士討ちなんて、これ以上嫌‼だから、こうするしかないの‼」


 焔はそう叫んで、攻撃しない様にルノー、クーとクースクリドに言って水魔術を放ち続け、城への道を開け続けた。クーは、彼女がケルト同士の戦いに疑念を持っている事を聞いて―


 “俺も、どうしてケルト同士で戦うんだか、疑問に思っていた…。殺戮だけの戦いは、好きじゃない”


 と思っていた。ゴスラウェイにいる庶民は、彼女の水魔術によって道脇にそっと避難させられ、安堵して一目散へと逃げて行く。兵士たちは、焔の言葉と行動に疑問を持つ。


 “何故、アルスターであろう者が、攻撃しない?”

 “ケルト同士での戦いが、嫌だ?”

 “そう言えば、何故、戦いをする事になったんだ?”

 “アルスターを根絶やしにする事…。いや待て、女王様が宣戦布告した動機は?”


 焔は、水魔術を行使し続けると、城門までスムーズに進めた。


「アッシュ‼」


了解(ダコール)‼」


 アッシュは、焔の指示に返答して、強力な水流放射をして大波の如く門を破壊した。焔たちは、愛馬や戦車から降りて転移魔法でアルスターの陣営に送る。ここからは、徒歩で進むしかない。


「兄上。コノール城の王の間は、どちらに?」


「俺が訪れたのは、もうガキの頃だ。仕方ね、ルーンでやるしかねぇ。」


 クースクリドの尋ねに、クーは近くにあった小石に探索のルーンを刻んで地面に置く。すると、ルーン文字が光り、小石が自動で動いた。彼は、石の向かった方へと走り出す。焔とアーサー、アッシュ、ルノー、クースクリドは、急いで彼の後を追いかけた。

 だが、城へ入ると同時に、不可思議な事が浮かぶ。


 “アレ?城の兵士、少なすぎない?”と焔、

 “いや、何かの罠かもしれない”とエルは思う。


 その時、城が揺れ始める。クーは足を止める。追いかけていた焔たちは、彼の元へと到着する…その寸前、焔が立ち止まりそうな場所の床に罅が入った。


(ロード)‼」


 アッシュは叫んで、彼女をクーの方へと着き飛ばした。クーは、素早い反射神経で彼女を受け止める。しかし―


 『うわぁぁぁぁ‼』


 アッシュ、ルノー、クースクリドは、床の罅で割れた穴から真っ逆さまへと落ちて行った。クースクリドは二人に―


「兄上、焔‼先に行けぇぇ‼」


 と叫ぶ。焔は、どうしようと悩んでいたが、クーの手が彼女の肩に触れる。彼女は顔を上げると、真剣な表情のクーであったが、肩に置かれた手はわずかに震えていた。

 焔は、クースクリドが叫んだように一刻を争い、止まる時間は無いと改めて感じ、アーサーとクーと共に探索のルーンの小石を追った。



 下に落ちたアッシュ、ルノー、クースクリド。

 ルノーは、目を開ける。周囲は暗く、彼は灯の魔術を使用して灯りを照らすと、その灯りに反応してアッシュとクースクリドが来た。


「無事か、ルノー。」


「先輩こそ。無事で何よりです。」


 アッシュの尋ねに、ルノーはそう答えた。クースクリドの無事も確認でき、辺りを見る限り、コノート王城の地下である事を可能性として入れる。

 すると、奥から音が聞こえた。三人は、その方向を見て武器を構えようとすると―


「クースクリド様‼ご無事でしたか!」


 とフードマントを纏った者が来て言う。その者はフードを上げて、灯りが差す範囲に入るとクースクリドは―


「デイビッドか‼無事で何よりです!」


 と言った。デイビッドは、シャーウッドとアルスターの連絡担当とコノート王城に潜入する斥候の正体だった。アッシュとルノーは、デイビッドとは初対面だったので、クースクリドは、彼の説明をした。

 デイビッドは、シャーウッドの一件が解決した後、以前から噂されていた謎の人物をこっそり追って、コノート王城へ潜入して始めて来たのはこの地下からだった。

 ただの地下ではなく、恐ろしいものが保管されている様だとの事。


「そうでしたか…。」


 ルノーは、デイビッドの話を聞いて驚く。


「地上へ通じる道があるのは安心した。でも、この地下に恐ろしいものが保管されているって本当なら、見る必要があると思う。…クースクリド様は、どう思いますか?」


 アッシュは、クースクリドに意見を求める。彼は、地下の真相を見る為、その場所に行くべきだと話す。アッシュとルノーは、それに賛同し、彼と共にデイビッドの案内を受ける。

 彼らは、現在地からさらに奥へ進んで行くと、赤い光が差し込む大広間へと辿り着く。

 そこで見たのは、赤い光を放つ盃とそこから黒い液体が溢れて真円の池になっていた。また、黒い液体から黒い兵士が湧き出していた。

 読んでくださいまして、ありがとうございます。


― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


 アッシュ:随分、不気味な物を見たな…。


 ルノー:そうですね。


 クースクリド:暗い液体を吐き出しているのは、光で見る限り、金属製の盃。デイビッドによると、黄金の盃らしい。


 ルノー:盃…。ただの、盃より、魔力がある物です。


 アッシュ:それ、伝説とかおとぎ話で言う聖杯に似ているな…。アレを何とかしないと、兵士は無限に湧き出すしな。


 クースクリド:そうですね。早い所、片付けて兄上と焔の元へと向かいましょう!次回、『第29節 決戦/破―Ⅳ ―謁見―』。っしゃ!やるぞぉ‼

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