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クラージュ・イストワール  作者: Hanna
序章 光と騎士の共和国 ルミソワ 編 ―己の役目―
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第2節 異世界生活、スタートへ

焔の異世界の暮らしがスタート!

 異世界と思わしき場所で、“不安”が高まるほのか。彼女は、アッシュにどう説明をしていいか分からず、言葉を詰まらせていた。その様子を見たアッシュは、彼女にこう言う。


「行き場がないなら、ここに住みな」


「え?」


「あんたのような乙女が、まだ見知らぬ街を一人で歩くのは危険だろ?」


(確かに……。見知らぬ街をウロウロするのは、好きじゃないし。不安だな。お、乙女と言われるのはちょっと。ま、いっか。どうせ、後で忘れられる)


「そうですね。で、でも、迷惑を掛けます。初めて会ったばかりで……それに、私は、足で(まと)いな存在ですし」


 (ほのか)は、アッシュに助けてもらった事には感謝している。しかし、自分は迷惑掛けてばかりの愚か者。ここに住む、「居候する」事が許されるだろうか。

 すると、アッシュは彼女の手をそっと握り、(ひざまづ)く。まるで、騎士の誓いをするかのように。


「迷惑なんて、言いません。困っている人がおりましたら、助ける。……それは、騎士の勤め。何より、君を放っておけません。……困った時は、遠慮なく言ってください。乙女マドモアゼル・焔」


(そんな事、言われたら断れねぇよ。てか、マドモアゼルって何? ………まぁ、き、騎士の誓いだよね? コレ)


 焔は、彼の意志の広大さに負けていまい――


「わ、分かりました。よ、よろしくお願いします」


 そう言って彼女は、軽く礼をした。すると、アッシュは微笑んで言う。


「それ」


 焔は「え?」と言いながら首を傾げると、アッシュは「敬語をやめて欲しい」と言い、彼女の年を聞いた。


「俺より一つ下か。……でも、敬語は外して欲しい。これから、俺の友なんだからさ!」


「……う、うん」


 こうして、焔は不安がある中、アッシュの元で異世界暮らしをする事となった。まず、焔は彼の案内により、とある王国の都市・パリスの町中にいた。活気があり、様々な店が並んでいる。


「このルミソワの首都・パリスは、色んな店があるんだ。それに、市場も盛んで、他国からは華の都って呼ばれているんだ‼ 立派だろ?」


(華の都……私の世界で言うと、ヨーロッパの首都っぽい。中世の時代に近いけど、ちょっと違う感じがするなぁ。あぁ、人混みは嫌だ)


 焔は、人混みの中で周りからの目線が気になり、小さくなって歩いていた。アッシュはそれを見て声をかける。


「大丈夫か?」


「え、いえ……その」


 焔は、緊張して上手く言葉が出て来ない。アッシュは、彼女の様子と周囲を見渡してから、こう言う。


「そうだ。何か、必要な物とかを買っておこうか」


「で、でも……」


「遠慮は無用! さぁ、行こう」


 アッシュは、焔の手をそっと引いて、彼女をとある店に連れて行った。握られた手は男らしさや先輩らしさがあったが、どこか幼さを見せるものだった。

 そして…着いたのは、とある呉服屋。様々な服が置かれている。アッシュは言う。


「ここは、いろんな服が売っているから、あんたの好きなように選べるよ」


(うっ……。私、ファッションセンスねぇ。どうしよう)


 と、焔はとても困った表情をして、彼に言う。


「あ、あの……私、ファッションのセンスがあまり無いんだ。どう選んで良いかな?」


「なら、店員に聞こうぜ! ……すみません‼ この子に似合う服とかありますか?」


 焔は、アッシュが呼んだ店員のアドバイスを受けて、好みの服を上手く構成していった。アッシュがいる事に、店員は敬語で話していた。偉い人なのだろうか?

 焔は帽子、長袖シャツ、七部丈のズボンを購入した。制服は、ウエストポーチへ収納した。彼女は、後ろで結っている髪を帽子の中に入れており、風などで取れない様にした。


「よく似合っているよ」


「そ、そうかな? お、男っぽいかな? 女子ってバレなさそう?」


「あぁ! 一瞬だけ、誰かなって思ったよ。似合っているぞ」


「う、うん」


 アッシュの言葉に「大袈裟では?」と思う焔。アッシュは焔の戸惑いに―


「自信持って良いって」


 と言ったが、「あ、そう言えば、城に行く頃だったな」と呟いた。


(城? ……この世界には、貴族の存在があるのか)


 今まで見て来た景色を振り返って、焔がそう考えていると、アッシュの小声で彼女に話しかける。


「あのさ。ちょっと、用があるから、この道を真っ直ぐ行った噴水広場で待っていてくれるかな? ごめんな」


(アッシュの事情がありそうだし、私はあまり関わらない方が良さそうかな? まぁ、一人でいなくちゃいけないし)


 と彼女は思った。


「うん。構わないよ」


「ありがとう。……そうだ。焔は、これから俺の相棒って事にしておく。その方が、焔が安全にいられるからな」


(相棒って。それはさておき、さっきの服の事も、何か女子の扱いに長けているっつうか。まぁ、過ぎた事だし、いっか。一人でいるのが、私に相応しいし)


 と思いつつ、彼女はアッシュの背中を見送り、噴水広場へと向かった。その道中、彼女は右手甲にある白銀色の紋章を見る。森にいた時から変わらず、ドラゴンの様な形を表している。


(そう言えば、アッシュにこの紋章のことを話してなかったな。聖痕か何か……なんだろう?)



 噴水広場に着き、焔は噴水近くのベンチに中からスマホを取り出す。時間を見ると、午前十時辺りであった。ホーム画面を展開した時、ふと何かに気付いた焔。


(地図のアイコンに通知がある)


 と彼女は操作して、通知を見る。そこにはこう書かれていた。


『霊脈地:噴水広場。そこへ赴き、この機械を噴水に掲げよ。汝、この町の外の道標(みちしるべ)得たり』


 詳細を開くと、霊脈地を示す光が地図上に示されていた。なんと、焔の後ろが霊脈地のポイントであった。

 彼女はそれに気付き、後ろを振り返る。噴水の彫刻は(ドラゴン)の像である。焔は、通知の通りにスマホを噴水に掲げる。

 すると、画面に『新たなデータを取得しました』と文字起こしされ、地図の画面になる。

 これまで、王都しか地図で表記されなかったが、何と王都を中心とする王国全体が地図に記された。

 地図には、村や町の名前、川の位置、森や林の位置なども記されていた。


(これが、国全体の地図か。へぇ~、海もあるんだ。行ってみたいなぁ。カメラ機能はあるみたいだし、写メって納めたいな)


 彼女がそう思っていた時、四人の大柄な男が彼女の元へと来た。


「そこのお前」


「……え? わ、私ですか?」


 焔は、急いでスマホをしまって、バレないようにする。一人の大男は、焔を見てこう言う。


「……見た事の無い顔だな。」


 彼女は、嫌な予感がすると思い、拒否の気持ちが湧いた。この場を切り抜ける為、彼女は行動に移す。


「ご、ごめんなさい。私、ちょっと用事を思い出したので」


「用事って、何だ?」


「言えない事情があるので」


 そう言って、早々と立ち去ろうとした時、大男は焔の腕を掴んだ。彼女は腕を力一杯振って、大男の手を払いのけようとする。


「止めてください‼ ……放してください‼」


「無理無理。そんな細い腕じゃ、俺にかなう訳ないだろ?」


 焔は、どうにか抜け出そうと思い、何かを考える。大男は、暴れるのをやめた彼女を馬鹿にして笑う。

 今だ。と彼女は大男の隙をついて、嫌々でも自分の腕を掴んでいる大男の腕に思いっきり噛みついた。大男は、あまりの痛さに手を離す。彼女は嫌悪感の勢いで抵抗したので、とても痛いに決まっている。


「てめぇ、何しやがる‼」


 焔が拘束から逃れたと思った時、腕を掴んでいた大男が彼女に拳を振るった。焔は、顔に直撃しようとする拳から守るべく、腕で咄嗟に防御した、彼女の腕に拳は直撃する。

 その瞬間を見た町の人々は、不味いと感じたらしく。慌て始めたり、心配する視線を送る。助けに行かなければと思う者もいたが、大男たちの力を見てどうすれば良いか迷っていた。

 焔は、衝撃と勢いを受け、軽く飛ばされ地面へ倒れた。彼女は、腕の痛さと地面へ倒れた衝撃で目に涙を貯めるも、痛さに耐えて涙を見せない様にする。


(怖い、助けて……)


 と、恐怖が込みあがり、言葉が出ず、彼女は困惑した。その時―


「貴様ら、何をしている?」


 聞き覚えのある声に、彼女は目を開ける。そこには、彼女にとって恩人であるアッシュだった。彼は、とても怒っていた。仲間の大男は、彼に対してこう言う。


「何だ? ガキか? お前には用はねぇ」


「そう言おうとも、俺はテメェらに用がある。……コイツに何しやがった?」


 アッシュがそう言うと、焔の腕を掴んだ大男は言う。


「いや、ただ、見た事も無い女だったなと思たんだよ。暴れまわるから、落ち着かせていたんだけどよ。いきなり腕に噛みつきやがったんだ。それで、暴れるのを止めようと、殴ったんだよ。わりィか?」


 そう聞いたアッシュは、鋭い眼差しを大男たちに向けて言う。


「そうか。でもな、お前が嫌な事をしたから、コイツは腕に噛みついたんだ。痛いのは分かるが、それは、お前に対してのばちだと俺は思うぞ」


「……っ‼ 生意気な事を、野郎どもれ‼」


 大男がそう言うと、仲間である三人がアッシュへと向かい、拳を振るう。焔は危ないと思ったが、無意味だった。

 アッシュは、最初に殴りにかかった男の拳を避けた途端、ジャンプして脰を騎士が履く白銀の鎧靴で蹴り、気絶させた。二人目は、地面に着地しようとしたアッシュに直撃した。

 彼は、衝撃を抑える守りを固めたので何とかなったが、吹っ飛んで行って地面に引きずられる。


 (今の、痛そう)


 と思いつつ仕返しをしたい気分だった焔だが、自分の力で出来る物では無い事と痛みに耐えるのが精一杯であり、行動する事が出来なかった。

 アッシュは、直ぐに立て直して、相手がまた殴り掛かった所を避けた直後に腹に一発の蹴りをかました。それが、強烈だったのか、大男は腹を抱えて倒れ込んだ。

 そして、最後に殴り掛かろうとする大男へ向かって走り込む。大男はアッシュに向かって鋭い拳を入れるが、彼は宙に舞って(かかと)落としを食らわせ、気絶させる。

 それを見ていた焔の腕を掴んでいた大男は、彼の格闘術を見て驚く。


「お、お前……このクソガキがぁぁぁ‼」


 大男は、殴りにかかったが、アッシュに避けられ、腕を取られて地面に抑えられる。彼は、大男にこう言う。


「力任せで力なき人を殴るんじゃねぇ。ましてや、乙女を殴るとは、男として情けがねぇぞ!それに、数日前にも、何もしていない女性に暴言や暴力を振るっていた時もあったな」


 アッシュがそう言うと、大男は「何故、それを⁈」と言う。彼は、話をする。


「丁度、通りかかった所を呼ばれたんだ。その時はてめぇらは泥酔だったが、落ち着かせてやったんだ。覚えていないのは当然だが」


「マ、マジかよ……。お前は、白銀騎士団アージョン・オルドルの、団長・アッシュ⁈」


 大男はそう言った。焔は、アッシュの強さに魅了された。森で助けられた時に見た剣の扱い、居候してくれた時の誓い方など、本当の騎士である事は間違いなしだ。

 その後、大男四人は駆けつけた町の警備兵によって逮捕・連行された。アッシュは、怪我を負った焔を立ちあがらせる。


「歩けるか?」


「う、うん。……超痛い」


「ちょっと、怪我の状態を見せてくれないか?」


 アッシュにそう言われ、焔は殴られた腕を見せる。彼女の腕は少し腫れ、赤胆が出来ていた。


「少し腫れているな。顔に怪我がなくて良かった」


「う、うん。……あんな風に殴られたのは、初めて」


「そうだったのか」


 アッシュはそう言い、「悪かったな、一人にして」と謝罪する。焔は「いいえ。でも、助かりました」と言う。


(アッシュ、そんなに気にしなくても良いのに)


 と思い、焔は「アッシュが悪い訳では無い、あの時切り抜けなかった自分が悪い」と思っていた。

 その後、彼と共に家へ帰り、治療を受けた。アッシュは、焔に治癒魔術を施した包帯で腕の痛みと腫れを治した。また、焔の部屋はアッシュの家の一部屋を借りる事で決定した。

 読んだくださいまして、ありがとうございます!

 誤字脱字がありましたら、ご報告よろしくお願します!


 次回『第3節 力の発動』です

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