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クラージュ・イストワール  作者: Hanna
第Ⅰ章 森と戦士の国 アルスター 編 ―紅棘の死の魔槍―
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第21節 戦への備え-Ⅰ

 アルスター軍は、最後の戦を勝ち抜くべく、準備を整えていた。

 一方、コノート王城、王の間。


「あの女の次は、貴方ね。まぁ、良いわ。仕事を引き継ぐのなら、構いませんわ。」


 メイヴの玉座前に跪く人物。焔が神殿で出くわした女の仲間なのか、紫のローブを纏い金髪に近い髪だ。しかし、異なるのは角髪(みずら)になっている。顔立ちでも、青年ぽい様子だ。


「貴女に認めてもらいますことは、偉大なる光栄です。」


「それで、最終決戦に使って良いと言う最大の武器って一体?」


 メイヴは青年に説明するように話すと、彼はローブから輝かしいものを取り出した。彼女は、それを目にして興味が湧いて、説明するように命じる。


「はい。これは、黄金の盃。別名では、聖杯ともいうべき神聖な物でしょう。」


「聖杯?何の事かしら、詳しく。」


 青年は、メイヴへ説明を続けた。

 黄金の盃。またの名を、聖杯。伝説にて、危機に瀕した時、数多の試練を乗り越えた者が光明神によって手にする事が許される。聖杯に許された者は、祝福を受ける事ができ、どんな望みも叶うと言う。


「女王メイヴ。貴女が、もし、アルスターを殲滅させる程の軍団を欲するのならば、盃の力を持って強力な兵士を作る事も可能ですが?」


「良いじゃない‼どんな望みも叶えるんでしょ?だったら、使うに決まっているじゃない‼」


「では、盃を差し上げましょう。」


 青年はメイヴの前まで歩いて、跪いて盃を差し出した。彼女は、そっと盃を手にして優しく撫でる。それは、まるで悲願の成就とでも言う様な表情だった。


 “あぁ。その方法があったなら、直ぐに使うわ。これで、最強の軍団を作り上げて、愛しいクー様も…”


「キャーハッハハ!」


 メイヴは高笑いをした。その場面を静かに扉から覗いていたのは、ルノーと互角の勝負をしたあフェルグス・マック・ロイだった。


 “やっとだわ。軍団を作り上げるのは、悔しいけど、それを率いるのはこの私‼思うがままに、自由にできるのね‼”


 “メイヴ。お前、そう言う性格ではなかったろう…。やっぱり、彼女を食い止める事ができるのは…。遅ければ、きっと…”


 フェルグスは高笑いをするメイヴを見て、危機感を感じていた。それは、勘ではなく、確信に至る程に。



 それから、三日後。焔はアーサーを連れて、オリヴィエと共にクーの診察をしていた。オリヴィエは、慎重に検査をして、傷口や身体の部位の可動の様子などを見る。そして、オリヴィエは微笑んで言う。


「うん。問題無いよ。傷も塞がっているし、ねじれ発作も無し。今日から、訓練をしても構わない。けど、無茶は禁物だよ。」


「おう‼ありがとさん、オリヴィエ。」


 クーは笑顔で答えた。オリヴィエは、一礼をして言う。


「ありがとうございます、クー王子。焔も、アーサーもご苦労様。」


「オリヴィエも、ありがと。」


「キュ!」


 焔とアーサーは、医者でもある彼に感謝した。オリヴィエは、他の戦士たちや町に来ているロビンたちの診療もあって、直ぐに部屋を出た。多忙な身だ。

 訓練所は、兵士と王族専用と別れている様だ。彼は、早速訓練所へと赴こうと考える稽古がてらに、焔を誘った。


「え?!い、良いけど、あんまり強くないよ。付いて来るので必死かもしれないし。」


「良いんだよ。お前は全力で向かってくれば良い。俺は、お前の実力次第で、本気くらいまでは出すさ。」


「分かった。行こうか。」


「あ。訓練所に行く前に、ちっと寄り道良いか?」


「良いよ。大事な用だったら、そっちを優先しなよ、兄貴。」


「おう、ありがとな。用を済ませて、稽古して、後でロビンに会いに行こうぜ。」


「決まり!」


「キュウ!」


 彼らはそうして、まずは王城の中庭へと足を運んだ。焔にとって覚えのある場所だ。噴水のある中庭。その近くのベンチに、美しいドレスを着た女性・デヒテラ王妃がいた。彼女は、クーが来たことに驚く。

 焔は空気を呼んで、物陰に隠れて二人を見守る。


「クー?どうしたのです?」


「……。そ、その、母さんに暴言を吐いちまって、す、すまない…。」


「……私も悪かったわ。いきなり、あんな話をしてしまったもの。」


「い、いや、いいんだ。ルーが、父さんが、夢だけど、話をしてくれたような気がした…。心配させて、悪い…。」


 クーは、不器用ながらもデヒテラに謝罪した。デヒテラは、涙を流してクーを優しく抱きしめた。その光景を見守っていた焔は―


 “ルー様が…。夢でも、ちゃんと話したんだね。良かったね、兄貴”


 と思った。アーサーも、彼女と同じく嬉しい表情だった。すると―


「焔さんに感謝しなくちゃね。…クー。最近、コンホヴァル殿の様子が変なの。変と言うか、何かを計画している様子なの。私は、それを言いたい所だけど、嫌な予感がするの。」


 デヒテラの言葉に彼らは疑問に思いながらも、訓練所へと赴いた。焔は、アーサーをジュヌヴィエの元へと向かわせる様に言う。少し寂しい表情をしていたが、言う事を聞いて素直に従った。

 訓練所に到着して、武器を訓練用の木製に取り換えて、二人は対峙するように立つ。焔は、ふと影の国の事を思い出す。


 “あの構え、コンラとよく似ている…”


「焔、どうした?」


 クーは、焔がボーっとしている事に尋ねる。彼女は、ちょっと考え事してただけと話して真っ直ぐに構えを取った。その直後、二人は瞬時に姿を消した。その後に訓練所の真ん中で二人は鍔競り合いをしていた。


「…くっ‼」


 木剣と木槍はリーチが異なるも、二人は一歩も引けを取らない。


「随分、いい攻撃じゃねぇの?」


「そう言ってもらえるのは、ありがてぇな、と‼」


 (ホムラ)はそう言い、力づくでクーを押し返して瞬時に間合いを詰めて極めた剣技を行使する。クーは、槍で受け止めながら後ろへと走って行く。


「まだまだッ!」


 焔はそう言って、腕を振るい続ける。クーは、ずっと攻撃を受け止め続ける訳には行かないので、槍で彼女の攻撃を受け止めて突き放した。

 焔は態勢を整えて構えを取って、上へ飛ぶ。クーも上に飛んで、空中戦となる。激しい剣戟を繰り返し、地面に着地した。

 その後、焔は間合いを詰めて水平斬りをする。クーは、上へ飛んで槍を振り降ろしながら急降下攻撃をする。彼女は、ギリギリの所で剣で受け止めたが、衝撃で周囲の地面がへこんだ。


 “ヒィ~!流石。地面、へこんだよ”と焔、

 “ルーがもし、過去のあの英雄と同じって言うなら”とエフ、

 “器物破損を何度もしている、だろ?”とホムラ、

 “これ、器物破損というより物理的なモノじゃないかい?”とユウ、

 “はい‼そこ、静かにしててクダサイ‼”と焔は思う。


 焔は、身体強化を全身に掛けて、押し返そうとする。しかし、余りの、初めての重みに押し返す事が出来ない。その時だった。焔の体に、緑の炎が纏い始めてクーの全身に移ったのだ。


「な、なんだ?!」


 クーは、驚いて体勢を崩して地面に落ちる。炎が移った今、彼は火傷どころか燃えていない。焔は、彼に火傷などの怪我は無いか確認する。彼は、尻餅をついたこと以外は怪我は無かった。


「良かった。でも、炎が受け入れたって事は、あっ‼そー言えば…。」


 焔はある事を思い出した。クーは、彼女に何のことかを尋ねる。


「どうやら、緑炎を受け入れた事で、クーは発作を抑える事ができるんじゃないかな?その、ある人から、教えてもらったんだ。緑炎は、猛犬に必要とかって。」


「なるほど、な。ま、今は訓練だ。実際は、戦場じゃなきゃ分からねぇ。」


「そうだね。夢の中で、ルー様もそう言ってたよ。それと、クーを支えるようによろしくって。ただ、ルー様には、一つだけ文句言った。」


「何て言ったのさ?」


 クーの質問に焔は、昨晩の夢の事を思い出す。


 ♢


 夢の中で、ルーと会話をしていた焔。


「私の息子を頼んだ。緑炎は、私の様な発作を抑える事だろう。」


「そうなら、幸いです。…あの、ルー様。一つだけ、意見を申し上げても良いですか?」


「良いよ。一つだけなら、ね。」


 焔はルーの許しを得て、深呼吸をして言う。


「神話を呼んで言いたかった事なんですけど……クーを助けるのが遅いですよ‼」


「よもや‼それを言われるとは。」


 ルーの反応に、焔はどういう事なのか理解できなかった。彼によると、他の国々の太陽神からその事を言われていたらしく、同じ悩みを抱えたいる太陽神もいたらしい。


「二つの大河に恵まれた国の太陽神からは、見守る様にしたらいいと言われてな。その方法を取った結果が今だ。」


「な、なら、よかったです。」


 焔はそう言った。ルーは、彼女に―


「あと、クーの相棒である烏がやってくるようだけど。ただの烏では無いよ。君の知恵ならば、分かるだろう。前世のクーの肩に止まったあの烏の事だよ。」


 と言った所で、目を覚ました。


 ♢


「ん~。やっぱ、言わない‼その方が良いかも!」


 焔はそう言うと、クーは何だよと笑いながら言った。すると、空から烏一匹の烏がクーの肩へと飛んで来た。彼は、烏が肩に乗ったのを気付いた。


「おっ、久しいな、モリガン。随分、長い調査だったな。」


「あぁ。重要な情報があったからな。ん?そこの娘は?」


 焔は烏がこちらを向いた時、喋った事に体を硬直させてしまった。


 “か、烏が、喋ってるよ?!”とユウ、

 “び、吃驚で、言葉が出ない。てか、烏の足で後頭部を蹴られたから、怖い‼”と焔、

 “エフ。この烏は、ルー様の言っていた事でしょうか?”とレイ、

 “ならば、答えは一つしかない”とエフは思う。


「紹介していなかったな。お嬢ちゃんは、焔と言う。俺の事を、兄貴って慕っている妹みたいなものだ。」


「なるほど。焔、か。…炎を授かりし者か。なにやら、事情を抱えた女子(おなご)のようだな。……申し遅れた。私は、このアルスターの守護を任された三柱の一人、モリガンだ。」


「モ、モリガン様?!あ、あの、三女神様。確か、破壊と殺戮、闘いの勝利をもたらす美しき戦の女神とお聞きしています。」


 焔は、緊張ながらも自分が知る三女神・モリガンの事を言った。モリガンは、彼女の言葉と様子を見て、笑いを零して言う。


「私を知っているとは。気に入ったぞ、焔。特別に、加護を授けよう。」


 モリガンはそう言うと、クーの肩から降りて人の姿になった。彼女は、170cmはある程の背丈に膝まである艶のある灰色の髪、灰色のマントに真っ赤なドレスを着ていた。

 その美貌に、焔は綺麗だと見惚れてしまう。モリガンは、焔の手を取って、甲へ唇を落とした。


「?!」


「ふふ。照れた顔も、愛らしいわね。大丈夫。貴女には、戦いに勝利することを加護として授けた。これで、私も少なからず援助はできる。助けて欲しい時は、直接言うか、心で強く念じなさい。」


「は、はい‼」


 焔は、モリガンがパーソナルスペースまで入って顔を覗かせている事に、とても緊張してしまった。近くにいたクーは、そのまま見守っていた。

 読んでくださいまして、ありがとうございます。


― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


 焔:まさか、女神様がいるとは。しかも、モリガン様だったとは…。


 モリガン(烏):私がそうするとは、思ってもみなかったか?


 焔:うわぁ‼モ、モリガン様‼そ、その、モリガン様は…。


 モリガン:分かっているさ。私が加護をするのは、男の戦士。しかも、私の愛を受け入れたらの話だ。(『イリュド豆知識!』)だからといって、戦う者たちを見過ごす訳には行かぬ。お前は、深い事情を抱えている様だからな。


 焔:そ、それは、光栄です。私も、期待に応えるよう頑張ります‼次回!『第22節 師範と兄貴と団長と王子』。

 師範はルノー、兄貴はクー、団長はアッシュ、王子はフロリかクースクリドさん?……だよな。なにこの、組み合わせ…。性格違いのイケメンが三、四人?…。私、いなくても…。


 モリガン:うふふ。(慌てる姿、お主は愛らしいのう)

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