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クラージュ・イストワール  作者: Hanna
第Ⅰ章 森と戦士の国 アルスター 編 ―紅棘の死の魔槍―
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第16節 影の国Ⅰ ―修行・守―

 影の国という異空間で修業を積む事になった焔、アーサー、ジュヌヴィエ。彼らが師匠・スカアハから学ぶのは?

 城に到着して早々、焔はスカアハの案内でとある山の頂上へと辿り着いた。


「ここから、麓まで降りて来い。諦めずに、な。」


 そう言ってスカアハはアーサーを預かって姿を消した。焔は、辺りを見回すが、薄い霧がかかっていて少しだけ見えづらくなってしまっている。


 “ここを、下るのか…”とホムラ、

 “やらない訳には行かない。アスレチックって訳じゃないけど、スリルを楽しみたい‼”と焔は思う。


 焔は深呼吸をして、山を下る為に走り始める。すると、足に何かが引っ掛かった感覚がして、立ち止まると―


「いでッ!」


 と頬に何かが勢いよくが当たった。よく見ると石ころだった。例え石ころでも、投げられては痛いに決まっている。思わず後退ると、ガサガサと音を立てたので振り返ると落とし穴が見えた。


 “落とし穴…。そう言う事ね…ただ山を下りるだけじゃない”とユウ、

 “罠を掻い潜って、山を下りる修行ですね。戦う身には必要な能力を向上させるようですね”とレイは思う。


 焔は呼吸を整えて、再び走り始める。しかし、また足に何かを引っ掛けて止まっていると、背中に強打される。よく見ると、丸太だった。彼女は、四方八方に注意する事が必要だと理解して、呼吸をするが、山で高い位置にいるせいで息切れが酷かった。それでも、再び走り始める。


 “……避けろ!”


 焔は罠として仕掛けられた丸太が自分に向かっているのが見える。彼女は必死に避け続け、足に仕掛けられている縄を飛び越えたり、掻い潜ったりして行く。その間でも、罠に引っ掛かる事もあり、彼女は膣汚れや怪我が酷くなっていく。


「負ける、ものかぁぁぁぁぁぁっ‼」


 己を鼓舞するように、焔は叫んで走り続けた。スカアハは、山の麓でジュヌヴィエに弓矢についての説明をしていた。すると、瞳が淡く光る。彼女の千里眼が働いたのだ。


 “ふむ、そろそろ帰るか”


 スカアハがそう思っていると、焔が山を下ってきて足の力が抜けてしまったのか転んでしまう。息切れも怪我も酷い。アーサーとジュヌヴィエは彼女の元へと駆け寄る。


「キュウ!」


「大丈夫?!」


「へ、平気。…はぁ…はぁ、只今、戻り、ましたぁ…。」


 焔がそう言って目を閉じると、彼女の体が光り出して傷を元の状態に回復させた。スカアハは、その力があの鞘である事を千里眼で熟知していた。


 “彼の者へと渡る前に保護できたか…。しかし、今は立ち向かう事すらできぬ”


「今日はここまでだ。時期に夜になる。食事を楽しむと良い。訓練開始の時を知らせる鐘が鳴った時からは、またここに来ると良い。訓練が続く事を覚悟しておけ。」


『はい‼』

「キュウ!」


 二人と一匹は、昼食を取る事にして食堂を訪れた。意外な事に、スカアハの訓練を受けに来た人が多く、殆どが男性のようだ。焔は、今までにない状況に緊張が走る。


 “やっぱり、女子は滅多に来ない事が多いの、かなぁ…って、ジュヌヴィエを護衛しないと‼”


 焔は何故だか、危険を感じて気を張る。二人は食事を受け取る。ジュヌヴィエは焔の隣に座って、ゆっくりと食事を始める。焔も、冷めないうちにと食事を始め、アーサーが食べられそうな物を取り出して分け与える。

 すると、二人と一匹の元へ顔が赤い男がやって来た。


「嬢ちゃんたち、見ない顔だな?」


「えっと、まだ、ここに来たばかりですので…。」


 ジュヌヴィエはそう言うが、焔とアーサーは警戒する。男はジュヌヴィエの隣に座って話しかける。どこから来たのか、何の修行をしに来たのかとごく当たり前。しかし、焔とアーサーは鼻を思わずつまんでしまう。


 “コイツ、酒臭ッ‼刺激臭だ…”と焔、

 “ウザい…”とホムラ、

 “酔っぱらった奴は勢いで来るから要注意だよ!”とユウは思う。


 すると、男はジュヌヴィエの肩に触れようとした。(レイ)は、男の手を思いっきり振り払った。


「酔っぱらいは安静にしてください。」


「ヴゥ゛ゥ゛ゥ゛‼」


 彼女が言った後に、アーサーは威嚇する。


「あぁ?何だ、てめぇ!男とチビ野郎が生意気な。」


「俺は、男じゃない。女だ。」


 (エフ)は、酔っぱらいに勘違いされたくないと冷静な怒りを込めて言い、ジュヌヴィエを先程まで座っていた椅子に移動させる。


「焔ちゃん?」


「ジュヌヴィエ。この人は酔っぱらいです。いくら、人間でも近づいたら只じゃすみません。」


 (レイ)は、ジュヌヴィエに忠告を促す。アーサーは、火炎放射で男を威嚇する。男は火炎放射に驚くが、その反動で苛立ったのか―


「てめぇぇッ‼」


 と言い、持っていた盃の中にある酒を焔に振りかけた。それを見ていた仲間たちは、マズイと感じてざわめく。アーサーは、火炎放射をしようとしたが、彼女に止められる。彼女(ほのか)は、恐れを踏みにじって言う。


「…酔っぱらいは、さっさと水を飲んで寝ろ。お前の様な奴が巫女に手を出すのは、ご法度だ。あと、大声は大嫌いだ。耳が痛くなる。」


「あぁ?何だとぉ‼…うおぉッ!」


 男は興奮して、焔に向かって拳を上げようとした時、何かが男に当たって吹き飛ばした。彼女たちの料理は運悪くテーブルから零れ落ちてしまったが、その場にいた皆は緊張が走った。食堂の出入り口には、スカアハの姿があった。


師匠(スカアハ)さん!」


 焔は驚いた。魔術の威力が想像以上だったのだ。


「無事で何よりだ。さて、悪いが、お前たち、ソイツを部屋まで運んで欲しい。目覚めた後に、ここを去ってもらう。」


 スカアハはそう言った。すると、隣にいた少女が焔たちの元へ来た。


「大丈夫でしたか?」


 少女の問いに、焔は怪我も無く、ジュヌヴィエとアーサーは無事だと説明した。少女は、酒によって濡れてしまった焔に風呂に入る事を勧めた。


「申し遅れましたが、私はウアタハと申します。スカアハ様の助手兼治療主任と言った所です。お風呂はご自由に使ってください。ご心配なく。男女別々に設置しております。」


「ありがとうございます。」


 焔は礼を言った。その夜、風呂を終えて部屋で就寝する事になった。窓の外は、相変わらず雲がかっている。彼女は、ジュヌヴィエに柔軟をサポートしてもらながら悲鳴を上げていた。


「い~ぃ、イデデデデデェェェ‼……あ゛ぁ゛、死ぬかと思ったぁぁぁぁ…。」


「ご、ごめん。……そ、そう言えば、帰って来た時凄い土汚れだったけど…」


 ジュヌヴィエに問われて、焔は山の訓練を話す。それを聞いた彼女は、思わずゾッとしてしまう。


「こ、怖かったでしょ?」


「怖いよ…。何が襲ってくるか分からないって感じ。まぁ、実際の戦いもそうなんだろうけどね…。」


 焔は、体育座りしながらそう言った。アーサーは、彼女の頭の上に乗っかって言う。


「キュ、キュ、キュウ、キュ、キュウ!」


「アーサー?」


「貴女なら、できるって言っているよ。」


 ジュヌヴィエの言葉に、焔はアーサーがいる頭の上に視線を送る。アーサーは、頭から顔をヒョイッと顔だけを彼女の目線まで下げてきたが、バランスを崩して彼女の膝元へと落ちてしまった。

 焔はアーサーの頭を撫でていると、撫でている手に頬ずりをしていた。


 “はぁ~、可愛いぃ!そう思ってくれるなんて、良い子じゃないのぉ!”


 焔はアーサーがそう思ってくれていると思うと同時に、相棒としての気持ちも出ていた。その感情は表に出ており、ジュヌヴィエは彼女が幸せそうだったのを微笑んで見守った。


 ―日記。影の国は、曇り空でも綺麗な景色だった。スカアハ師匠と義理娘のウアタハさんは、常に私とジュヌヴィエの事を気遣ってくれた。訓練所は、年代ごとに分かれており、中には伝説時代の人も含まれている様だ。

 昨日に引き続き、今日も山を下って罠を避ける訓練。動体視力と機動力を上げる訓練と言っていた。息切れが酷くて、進んでは止まっての繰り返しだった。それでも、必死に麓まで走った。三日坊主にならないか、自分が心配になる―


 それから焔は毎日毎日、山を下っては罠を避け続ける訓練が続いていた。その度に、彼女は怪我を負っては鞘の力で治る。それでも、罠による痛みは消えないので彼女は終わったと同時に―


「死ぬと思ったぁ…」


 と繰り返し言っている。スカアハは苦笑しつつ―


「まだ、死んではないぞ。」


 と言っていた。一方、ジュヌヴィエは弓術に必要な筋力を増やすべく、スカアハのトレーニングを自力で頑張っていた。焔は、そんな彼女を見て頑張らなくてはと自分を鼓舞して訓練を受け続けた。

 時に、悲鳴を上げそうになった焔は起床を遅らせてしまったり、涙を流してしまったりと子供の様だった。


「うぅ…。」


「泣くでない。お前はよくできている。自信を持て。」


「すみません。…諦めが早いのは分かっているんですけど…。どうしたら良いか。」


「焔。お前は、ルミソワでの訓練を忘れたでは無かろうな?人の助けになりたい気持ちの他に、騎士や魔術に憧れもあっただろう。興味のある事には迷わずに行うのではなかったのか?」


 スカアハの言葉に否定はできない。


「……。はい。でも、それが逆に、人の命を奪うことに変わりないと思うと…。」


「ふむ、お前にとってそうかもしれんな。だが、お前は、シャーウッドでの戦いで人を思っての行動を取れていた。あの大柄の男は、お前の言葉に攻撃をためらっていたぞ。」


 スカアハの言葉に、焔はあの光景を思い出す。そう言えばと気付いた。それに、あの大男は、わずかだが微笑んでいたのだ。我に返ると、涙が出ていた。


「だが、あの男の様なものもいれば、そうでない者もいるだろう。良いか、焔。覚悟が決まっていない奴は戦場に出る事もままならない。だから、状況によってお前は戦わざるを得ない事が必ず増えて来る。お前だって、死にたくはないだろう?」


「はい。」


「ならば、お前は、生きる、生きたいが為に戦え。仲間の為にも必要だが、誰にでも行きたいという意志がある。戦でなくとも、闘いは常に我々が生まれたその時からある。忘れるでないぞ。」


 “生きる為に、戦う。生きたいならば、戦え。生きる事も、闘い…”


 焔はスカアハの言葉を、脳内で繰り返して忘れぬ様にした。そして、彼女はその言葉をしかと胸に刻んで再び訓練へと立ち向かった。


 “頑張れ、自分‼諦めてる場合かぁぁぁッ‼”

 読んでくださいまして、ありがとうございます。


― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


 焔:スパルタだったなぁ…。


 ジュヌヴィエ:そうだね。


 アーサー:キュウ…。


 ジュヌヴィエ:そう言えばなんだけど、弓兵には腕の力だけじゃなくて、胸筋も必要だって事に驚いた。


 焔:初めて知った‼でも、弓を引く仕草をすると、分かる…かもしれない。

   と、ここで、『イリュド豆知識!』。ジュヌヴィエは、私やフロル、皆の料理を見ては自分で作ろうと頑張る努力家です。最近、何やら、お菓子作りに夢中らしい。


 ジュヌヴィエ:て、手作り、お菓子が好きになったの。だから、今度作ろうかなって…。


 焔:(赤面?)…もしかして、ジュヌヴィエ、好きな人とかできたの?


 ジュヌヴィエ:い、いえ‼じ、次回‼『第17節 影の国Ⅲ ―修行・破―』!見て言ってね‼


 焔:ジュ、ジュヌヴィエ‼ま、待って、置いてかないで‼

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