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クラージュ・イストワール  作者: Hanna
第Ⅰ章 森と戦士の国 アルスター 編 ―紅棘の死の魔槍―
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第7節 迷いの森とレーシーの里

 森で穏やかな生活を続ける焔。しかし、時はそう簡単に許してはくれない。焔は、世界を助ける力に必要な炎を求めるべく、ロビンと共に、森の奥にあるとされる迷いの森へと赴く。

 ロビンはマリアンを見送り終えて、焔と共に森へ帰ろうとしていたが、案内したい場所があると言って、森の奥へと向かった。

 焔は彼の後に付いて行くと、到着したのは霧に覆われた森だった。


「この森の奥に、森の精霊がいるんだ。名を、レーシーと言って、子供は木の体に葉っぱの顔なんだ。」


 彼の話に、焔はある日を思い出す。 

 それは、森でマッチと薪拾いに出かけた時の事だ。集合地点の木に目印を付けて、辺りで薪を集めていると―


 コロコロっ


 と音がした。焔は、音の方向に振り向くと小さな木の体に葉っぱが顔になっている生き物を見つけた。葉っぱには、目、鼻、口のように穴が開いている。


 “え?……え?!えぇぇぇぇぇぇぇ‼”


「君、見えるのかコロ?」


 “喋ったァァ‼”


 焔は、思わず驚きながらもコクリと頷いた。彼女に話しかけた生き物は―


「じゃぁ、里長様に伝えるコロ。ロビンにも招待するように言っておくコロ。」


 と話して姿を消した―

 


「ここを通り抜けるには、条件がある。この石板がヒントだって、フォレが言っていた。」


 ロビンはそう言って、入り口にある石板に指さす。石板の隣には、松明が置かれていた。

 焔は石板の文字を見るも、何が書いているかさっぱり分からない。彼女は、石板にある土埃を払おうとして触れた時―


『汝、消えぬ炎の揺れに目を研ぎ澄ませ。さすれば、迷いの森は汝をレーシーの里へ導くだろう』


 と、どこからともなく声が聞こえた。彼女は、思わずキョロキョロと周りを見る。ロビンは、その行動に何をしていると尋ねる。

 焔は声が聞こえたと言うが、ロビンは聞こえないと返す。彼は、レーシーの案内を受けて森に入っており、声なんて一度も聞いた事が無いと言う。


 “自分にしか聞こえなかったのか…空耳みたいで恥ずかしい‼”


 焔は咳払いをして、石板の意味を考える。パチパチと燃える炎が、森と関係があるのか?と思った矢先に、風が強く吹き付ける。


 “うわぁっ!”と焔、

 “焔。火の粉の方向を見ろ”とエフ、

 “どういうことだい?”とユウ、

 “炎の揺れに目を研ぎ澄ませろ。つまり、火の粉の方向を見てその方角に進め、と言う事だ”とエフ、

 “なるほど!”と焔は思う。


「よし!行こう!」


「え?もう分かったんスか?!」


 ロビンは、走って行く焔の後ろを慌てて付いて行く。火の粉が飛んで行く方角に沿って進むと、次々と松明の火が現れ、七つ目になった途端、その先には松明が置かれていなかった。近くに、携帯用の松明が置かれていた。


 “これ、松明を持って歩くべし…的な?”と焔、

 “のようだな。と言っても、持つのはお前じゃないか?”とホムラ、

 “嫌だよぉぉぉ‼絶対に、熱いし!”とユウ、

 “そう言っても仕方ありませんよ、ユウ”とレイは思う。


 焔は携帯用の松明を手にして、火をともす。しかし、経験もない彼女は松明を両手で持つが、プルプル震えている。


「おいおい、それじゃ森に火が付いちまう。俺が持ってる。」


 “ロビン‼紳士すぎるぅ‼”と焔、

 “おい、オタクスイッチ入れる場合じゃないだろ…”とホムラは思う。


 焔はロビンが持つ松明を見ると、火の粉が風によって飛んでいた。彼女は、火の粉の飛ぶ方向をよく見て言う。


「ロビン、火の粉の方角を知りたいから、まずはそのまま進んで。」


「お、おう。こっちで良いんだな?」


「うん。」


 ロビンは少しずつ前へ進んで行き、焔は火の粉の飛ぶ方角を確認して方向転換のタイミングを言う。二人は、ゆっくりと同時に進んで行くと、奥へ続く道を発見した。ロビンは、松明の火を水の魔術で消す。


「着いたようだな。ここから先は、俺も覚えている。付いて来い。」


 ロビンはそう言い、森の奥へ続く道を進んで行く。焔は、彼の後に付いて行くと、徐々に霧が晴れて来て、見えて来たのは―


 “き、綺麗‼”


 と声にもならない驚きを見せた。

 そこは、美しい木々が聳え、家々は巨木を中心に広がっていた。また、最初に出会ったレーシーの仲間たちが、葉っぱの傘を手に宙を舞ってこちらを見ていた。木々の間から、優しい木漏れ日が降り注いでいる。


「あっ‼あの時の‼お~い!」


 焔の覚えのある声が聞こえた。


「あっ!あの時の…。」


「ご無事で何よりコロ。遅くなったコロ。私は、レーシーの長・シルフ様の側近、フォレと言うコロ!さぁ、案内するコロ!」


 フォレと言うレーシーは、てちてちと歩いて里長・シルフの元へ二人を案内した。巨木の屋敷の一番上の部屋に案内された焔たち。初めて訪れる彼女にとって、幻想的な景色だ。

 部屋に入った二人は里長の玉座前に座る。


「シルフ様、連れてきましたコロ‼」


「ご苦労、フォレ。…(わらべ)たちよ。よくぞ、迷いの森を通り抜けた。」


 “童?”と焔、

 “恐らくは、レーシーは精霊で長寿族の一種だろう”とエフは思う。


 焔は、初めて精霊に出会い、玉座にいるシルフの美しさに見とれてしまう。シルフは、長い睫毛、生糸の様な緑髪で肌は白に等しいものだったのだ。


「ロビン。森の状況はどうだ?」


「ノーディンの野郎が、いつ攻めてきてもおかしくは無いと王子さん方から来たっスよ。今の所は、皆穏やかに暮らしてますよ。」


「そうか。穏やかである事は、森の憩いでもある。あの弓は、問題ないか?」


「問題ないっスよ。順調順調!」


 焔は、ロビンとシルフの話を聞いていて、何の事かも分からなかった。


「やはり、お前に授けた事は嬉しいぞ。…して、そちらの童よ。我らの里へようこそ。名を、何と?」


「は、はい‼式守焔と言います。」


「ふむ、汝に相応しい名だ。焔よ。お前にある物を授けたいと思うている。」


 シルフは、とある話を説明した。レーシーは、代々『聖なる炎』を守って来たという。その内の一つ、緑の炎を守護している。

 炎は世界に三つ存在し、穏やかさと勇猛な緑炎で心を、守護と叡智の蒼炎で技を、原初と力の紅炎で体を意味する。

 また、その炎をそれぞれ一つずつ宿せる者たちが存在する。緑は猛犬と無双の魂を持つ者に、蒼炎は絆深き者と代々伝わっている。紅炎に関しては不明とのこと

 しかし、以前から世界に悪が忍び寄っている影響があり、各地の神殿に魔物が巣食ってしまったとの事。


「汝の二つの剣は、対にして一つの武器。そして、汝自身もだ。三つの炎が集まりし時、人の世が訪れる始まりである。魔術と言う概念が残ろうとも、滅しようとも、次代を担うのは人だ。忘れるな」


「は、はい。」


 “ど、どう言うコト?”と焔、

 “シルフさんなりの忠告にも聞こえますが…”とレイ、

 “ど、どういう意味なんだい…”とユウ、

 “俺、考えるのパスで”とホムラ、

 “レイの言う通りだ。何かの忠告だ。頭に残しておけ”とエフは思う。


 ロビンは退席して、森でレーシーたちと交流する中、焔は引き続きシルフの話を聞いていた。


「さて、汝はその炎を、己の心に宿さねばならぬ。この屋敷を降り、奥に進めば神殿が見える。フォレに案内してもらうと良い。

 それと、神殿の最上階。緑炎の間に通じる鍵を渡す。緑炎の間には、聖なる炎の台座があると同時に、クランの猛犬に相応しい耳飾りが納められている。忘れずに持っていけ。

 手を貸してやりたいのは山々だが、その神殿に入る事が許されるのは、汝と相棒の赤き竜だけだ。急いだ方が良いかもしれぬ。お前次第となる。」


「は、はい…。」


 焔は、一人で行くのが不安だった。彼女は、礼を言って巨木の屋敷を出た。


 “童よ。お前ならできると信じておる。いずれ、諸悪の根源に辿り着く”


 不安そうに部屋を出た焔を、シルフはそう思っていた。


「キュウ…。」


「ごめん、アーサー。ちょっと、不安なんス。」


 (ユウ)は、心配してくれるアーサーに言って優しく顎を撫でる。巨木から降りると、ロビンは彼女の元へと駆けつける。

 彼は、焔の様子に気付いて訳を聞き、彼女から詳しい話をする。


「そんな無茶だろ…。いくら、神殿で、定められたとはいえ…。まぁ、俺が言っても、シルフはお前次第と言ったんだ。自分で決める時だ。もうお前は、その判断ができる歳だ。分かるな。」


 “ロビンの言う事、正しい。あぁ、なんて馬鹿なんだろ…”と焔、

 “どーすんだ?お前が決めるんだからな”とホムラ、

 “焔。お前が思う意志で動け。例え、怖くてもな”とエフは思う。


「うん。……神殿に、行く。怖くたって、行ってやる‼」


「俺は、この森でお前たちの帰りを待ってやるさ。アーサー、焔の事頼んだぞ!」


「キュウ!」


 ロビンの言葉に、アーサーは返事をする。焔は礼を言って、ふと思う。


 “アーサー。アンタ、知性あるだろ…”


 そうして、焔はアーサーと共に、フォレの案内を受けて森の神殿へ向かう。森の奥深く、神殿の前には大きな池があり蓮が咲いている。また、橋がかかっており、そこから入り口に入る様になっていた。


「あ、そうだ!シルフ様から伝言です。神殿には炎を守る門番がいるのですが、大きな魔によって支配されているそうです。

 伝承では、炎の門番に魔が差す時、鎖が腕を落とし、魔を消し去るだろうと言います。よく分からないのですが、頭の片隅にと仰っていました。あと、これを渡しておきます!」


 フォレはそう言って、焔に渡したのは黄金に輝くまるで一体模型の一部の様なものだった。彼によると、神殿の炎の間と女神の間に続く鍵だと言う。


「ありがとう、フォレ君。気をつけて行ってくるよ。シルフさんにもよろしく。」


「はい。どうか、ご武運を。」


 フォレに見送られて、焔は橋を渡って神殿の入り口へと到達する。


 “この奥に、炎が…”


「キュウ…。キュ、キュ!」


「アーサー…。うん。行こう。」


 焔は勇気を振り絞って、下へ続く階段を降りていった。

 読んでくださいまして、ありがとうございます。

― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― 

 次回、『第8節 森の神殿 ―鎮まれ、炎の門番―』。お楽しみ!

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