序節3 冬休み
再び、焔の世界。彼女は、冬休みをダラダラとのんびりと過ごしていた。
それから数日後の冬休み。彼女は、部屋でのんびりとゲームをしていた。
(あ~ぁ、勉強に集中しないと……でも、この楽しみを無くしたくない)
と嫌々ながらも思う。
実は、彼女は勉強とゲームの両立があまりにも成立していない為、母と祖母はどうしたらいいのかと困らせている。
彼女は期末テストの結果は思うようにいかなかった事に悔しさを覚えるが、彼女の心は矛盾が交わり凸凹である。
(自分の為に、やらなくてはいけない)
(面倒くさいし、放り投げたい)
の二つが葛藤し合う。
「はぁ~」
(いっそ、ここじゃない世界に行きたい……)
と、とうとう集中力が尽きて、彼女はそう思う。だが、そんな隙は無い。焔は少し時間が経ってから、のんびりと宿題を再開していった。
数時間後。あっと言う間に夕方となり、烏の鳴き声が空へこだます。
(もう、夕方か……。早いな)
さっきまで午前中だったような……と言う感覚で、年齢を重ねてゆくごとに時の流れが速く感じると思った様だ。
と言っても、焔はまだ十八と言うピチピチの若者だが、何故かそこだけは老いを感じる(と思う…)。焔は夕食を家族と共に摂り、風呂を早めに済ませ部屋へ戻った。
(あぁ~。やっぱり、あの親父だけは……)
焔の父親は、ちゃんと育てていると言う意識だが、本人に何も感じなければ伝わっていないのと同じだ。しかし、彼女はその事をずっと言わないでいる。
また、彼女は表情が硬い。つまり、感情が表に出にくい傾向がある。その為、周囲から本当に喜んでいるのかなどと思われてしまう。
(ま、いいや! 気にしない!)
「ふわぁ~あ、寝よ」
焔はそう呟き、ベッドへ潜り込んでイヤホンを耳に付けて音楽を聴く。そして、そのままスヤスヤと爆睡していった。
読んでくださいまして、ありがとうございます。本編、始動開始! お楽しみに。
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《序章 ルミソワ編 あらすじ》
目を覚ますと、そこは緑豊かな森。焔は何が起こっているかも分からず、森を出ようとすると狼の魔獣に襲われ、背水の陣に!
そこに、白銀の鎧を身に纏う青年騎士・アッシュユが助けに入る。
“異世界へ飛んできた”と推測した焔は、今までの日常とは比べ物にならないくらいの嬉しさと未知の体験をするのだが……