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クラージュ・イストワール  作者: Hanna
第Ⅰ章 森と戦士の国 アルスター 編 ―紅棘の死の魔槍―
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第3節 シャーウッドの森へ ―義賊たちとの出会い―

 クー・フーリンの戦車に乗って、焔とアーサーはシャーウッドの森へと向かう。義賊と呼ばれる者たちの正体は?

 クー・フーリンの戦車に乗って、荷物を抱えた(ほのか)と相棒・アーサーは、南西にあるシャーウッドの森に向かっていた。


「そう言えば、その(ドラゴン)、お前さんの連れか?」


「うん。アーサーって言うんだ。怪我していて助けたら、ベッタリで…。」


 焔がそう言うと、アーサーは「キュ〜」っと言いながら、彼女に頬ずりする。クーはその姿を見て、愛着のある奴と感じて言う。


「なるほどなぁ。可愛いヤツだ!」


「うん!……ところで、クー。この、布で包んであるのって、槍?」


 焔が彼に頼まれて布に包まれた物が何かを問う。彼は馬を操りながら言う。


「あぁ。魔槍…ゲイ・ボルグだ。師匠がくれたんだ。扱いには気をつけなきゃならんが、良い槍だ。メイヴの奴に取られる訳にはいかねぇしな。」


「師匠、から?認められたって事?」


 焔はあえて「誰から」を問わずに言うと、彼は頷いた。彼は、スカアハ師匠の元で厳しい鍛錬を行い、彼女に認められた証として魔槍ゲイ・ボルグを貰い受け、愛槍として使用する事となった。

 彼はそれだけでなく、腰には弱い力でも斬れるクルード・カサドヒャンを携え、武術だけでなくルーン魔術を使用できるという。

 ルーン魔術となると、魔術に必要な呪文は無く、文字を刻むだけで即座に使用できるという利点がある。


「スカアハ師匠…。影の国の女王様、か。」


「あ?何か言ったか?」


 焔は、ポロっと口にした事をクーに聞かれたかと思い、慌てて「何でもない」と誤魔化した。

 焔の世界では、伝説上にして影の国の女王・スカアハと言う女性戦士は、とっても厳しい訓練を戦士に試させて優秀に育て上げる。まさに、スパルタと言っても過言じゃない…。

 あと、ゲイ・ボルグは、戦争の最中にメイヴに奪われたと言う物語に記されている。

 だが、今はそれは片隅に置いておくとしよう。焔は、クーにこれから向かう森について尋ねる。


「クー。これから向かうのはシャーウッドの森だけど、どんな人たちがいるの?」


 “ロビンフッドだったら、最高だけど…”


 と期待しつつ、答えを待つ。クーは説明する。


「そうだな。まず言っておくとすれば、義賊が集まっていて、とある悪領主に抵抗(レジスタンス)しているそうだ。それを率いているのが、ロビンフッドだ。

 本名はロバート・ロクスリーって言うんだが、三年前に親父を殺されて汚名を渡されたんだ。アイツがしているのは、汚名返上といずれ訪れる悪領主・ノーディンの一騎打ちでの成敗だ。

 本当は、親父はこっちにも騎士団を派遣したかったが、コノートが勢いづけてきやがったから、お前さんだけの任務となっちまってすまない。」


 “え⁈あ、あのロビンフッド‼”と焔、

 “まさかとは思いましたけど、驚きです”とレイ、

 “悪領主と聞けば、ノッティンガム城の領主だな”とエル、

 “事情があるならいいが、俺だけこっちに寄越したのはそれか”とホムラは考える。


 しかし、シャーウッドの森の状況が物語通りかは別の話だ。焔は、クー・フーリンの戦車に乗りながらウェルズと共に景色を眺め、シャーウッドの森へと向かった。



 戦車は、無事にシャーウッドの森の入り口についた。焔は、戦車から降りて、布に包まれた槍を持ったクーの後についていく。緑が生い茂っており、奥に行けば行くほど、暗くなっていくような気がした。


「おーい!ロビン!俺だ。クー・フーリンだ。」


「叫んで平気?誰もいないけどさ。」


 (ユウ)は不安だった。あまりにも静かなので、それが逆に怪しいからだ。


「もしかしたら、少し奥にいるかもだ。あんまり、離れんなよ。罠に引っかかったら、厄介だからな。」


「うん。」


 (ほのか)は返事をし、気を付けて彼と共に進んで行く。所々、明かりが差しているので暗くはないが、仕掛けとか無いことを祈りたい、と思いながら道中で―


「うわぁっ!」


 焔は縄が足に引っ掛かり、上へ釣り上げられてしまう。クーは手を掴もうとしたが、掠ってしまう。すると、彼らの周囲から人が数人現れた。


 “人⁈気づかなかった、こえぇ!”とユウ、

 “もう、こんなの嫌だ……。解きやがれぇ!”と焔、

 “油断して、すみません。クー王子”とレイは思う。


 アーサーは、彼女の足に引っ掛かっている縄を見つけて牙を利用して解こうとしているが、小さな牙にとって縄はとても硬い。


「おいおい。不審者しゃないぞ。罠を解け。」


 そう言って現れたのは、緑のフードマントを身に着けている青年だった。クーはその姿を見て言う。


「大声を出しちまってワリィな。アンタの所に、嬢ちゃんを紹介しろと親父に言われてきた。」


「なるほどね。……悪いな、お嬢さん。罠は外してやるから、大人しくしてな。そこの(ドラゴン)君も、だ。」


 ロビンフッドはそう言う。焔は、アーサーに大人しくいるように言って罠を解いてもらった。

 降ろされた彼女は息を整えた。ロビンは彼女が落ち着いた所で、奥へと案内し始めた。彼は彼女に声をかける。


「ところで、自己紹介がまだだったな。俺の名は、ロビンフッド、本名はロバート・ロクスリー。ロビンって呼んでくれ。お嬢さんは?」


「式守焔と、いいます。焔と呼んで、下さい。」


 正義の英雄であるロビンに出会った事に焔は緊張してしまう。例えると、好きなアイドルや俳優などが目の前に現れて、話し掛けてくると言う、あり得ないものだ。

 ロビンは彼女の緊張に気づいたのか、敬語で喋らなくて良いぞと言った。焔は、ありがとうと言った。


「仲間の自己紹介は、後々してやるさ。拠点(アジト)に着いたら、俺達の事を説明する。食事もご馳走するさ。お前の分も用意してやるよ。」


「ありがとさん。いつも、悪りぃな。」


 クーがそう言うと、「いいんだ。お互い、戦ってる身だ」とロビンは言った。

 焔はロビンの後に付いて行くと、拠点(アジト)に到着した。木で出来た家が沢山あり、老若男女問わずに協力して暮らしている様子が伺える。

 食堂に通され、料理を食べながら、ロビンにこの森の拠点(アジト)について説明してもらった。


【アルスターとコノートの戦いが始まってから抵抗(レジスタンス)をして来ており、住民は年々増加している。

 精霊の森としての名があるせいか、ロビンたちを討伐しようとする敵は森に入ってこない事がしばらく続いている。

 だが、森の最奥、そこにある神殿が姿を現してから、街などに侵入していた仲間から、メイヴの軍が来る可能性が出てきたと言う。

 それでも、人々は諦めずにここまで生きて、戦って来た。】


「そう言えば、悪領主がロビンの命を狙っているって、クーが言っていたけど……。」


「あぁ、本当さ。父さんはちゃんと国王に誓いを示し、民の為に戦って来た。……アイツはなんの罪も無い父さんを殺して、汚名をつけた。」


 ロビンの言葉には怒りが込められていると伝わる。


 “やっぱり、少しだけ変わってる伝説って感じだ。でも、基本的な事は変わってないけど。……北にはズル賢いメイヴ女王がいるとなると、のんびりしてはいられない、かもね”


 焔はそう感じた。食事を終えたクーは立ち上がり、親父に報告しておく事と焔がこの森に暮らす事をロビンに伝えて後にした。


「言うのが遅くなったが、親父の作戦のもう一つの目的は、メイヴにお前さんの事を知られたくない様なんだ。」


 メイヴに知られない様にする為、とはいえ、戦いな巻き込まない様にと言っても、じっと見ているだけはできない。焔の思いは表情にも現れていた。ロビンは言う。


「……王様がそう言うから、ここに匿っておく事を俺たちは話し合って決めた。……なぁ、そうだろ?」


『おう!』


 ロビンの仲間たちはそう言った。焔は挨拶をして、この拠点(アジト)の仲間としての暮らしを許された。また、ロビンの仲間たちはそれぞれ自己紹介を行った。


―――――――――――――――


◯ジョン・リトル

 妻・エマと七人の子供に恵まれている大柄な男。怪力男で、力仕事はお得意!通称・ジョン。


◯ウィル・スカーレット

 剣術の達人の伊達男。赤い衣服がトレードマーク。通称はウィル。


◯ダンカン

 ロクスリー家に代々仕える執事。君主であるロビンの事を常に心配していて、彼の支えとなっている。


◯アーサー・ア・ブランド

 医学研究者。ノーディンに追いやられていた所を、ロビンに助けられて唯一の医学者として森で治療を行っている。通称・ブランド。相棒で、赤竜のアーサーと被ってしまったのは申し訳ない…。


◯デイビッド

 シャーウッドのメンバーだが、情報係なので王都との行き来をしている。まさに、『縁の下の力持ち』と言える存在である。騎士団にも連絡として伝えてくれるそうだから、安心。


◯タック

 大柄な修道士。ノーディンを批判しており、追われていた所でシャーウッドへ入り、仲間へ入った。子供たちの世話と教育を行っていて、多忙中!


◯マッチ

 十歳。ジョンの息子で七人兄弟の長男。母親のエマを支える為に、努力している。


―――――――――――――――


 一通りの挨拶を終えて、樹上にある見晴らしの良い家に焔は案内された。家具などもちゃんと設備されていて、安心する。


「見張りがいつでも出来るようにしてある。お前さんは、無理しなくても良いが、頼まれたことだけはやって欲しい。」


「はい。ジョンさん。ありがとうございます。」


 案内をしてくれたのは、大柄な男ジョン・リトル。彼は元々頭領として率いていたが、ロビンに勝負事で敗退したので譲る事になったそうだ。妻もこの森におり、七人の子供がいて、八人目をお腹に抱えているという。


「ジョンで良い。仲間なんだからよ。敬語は不要!俺も、焔と呼ぶ。」


「あ、ありがとう。」


 そう言うと、ジョンはいい子だと頭を撫でた。彼女は、彼の父親じみた行動に、ホワホワした。父親と言う存在が薄れた彼女にとって、久しぶりの感覚だった。


 “ブランドだけは職業が物語通りじゃないけど、頼もしいのは間違いなしだ!”

 読んでくださいまして、ありがとうございます。

― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―

 次回、『第4節 アルスター&騎士団VSコノート―Ⅰ』。お楽しみに!

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