番外 旅立ちの報告 ―騎士の誠意―
これは、冒険の裏にあった小さな物語。
翌日。雨は止み、復興作業が引き続き行われる中でロラン、オリヴィエ、アストル、ルノーは実家に一時帰宅して、旅に出る事を報告した。
ロランの屋敷では、元上層市民の母は心配していたが―
「行って来なさい。…ロラン。お前は、俺の息子として誇りに思う。それに、これはお前にとって良い経験となると信じている。厳しい修行に耐えて、よくここまで来てくれた事、父として何より嬉しい。」
「父上…。」
「どんどん巻き込まれなさい。どんな状況になろうとも、仲間と共に打破する事、諦める事を忘れるな。……それに、伝説のロランの様に、第二のマルスとして戦い抜けろ。」
ロランの父親はそう言って、彼の肩にガッシっと手を置いた。ロランは「はい‼」と返事をした。母親は彼の元へ来て、優しく抱きしめた。
「気を付けて行くのよ。心配なのは、お父さんも一緒よ。光明神様にお祈りを、ずっとしているから。ずっと、貴方の無事を祈るわ。」
「はい。母上。」
オリヴィエの家では、医者にして学校の医学科の教授である父親と助手の母、弟と妹がそれを聞いて驚いていた。
「オリヴィエ、本当に行くのね?」
「うん。僕たちだけしか成し遂げられないのならば、騎士として、医者として役目を果たさないとね。」
母親の心配の声を聴いて、オリヴィエは自分の意志を伝える。父親は座っていた椅子から立ち上がり、彼にこう話す。
「オリヴィエ。お前は、この国で医者としてよく頑張って来た。だが、お前が知らない医学、初めて聞く病気などを聞くかもしれない。お前が、もしそれを治療するならば、自分でよく考えて、人々の為に諦めないでくれ。それが、お前にとっていい医者としての道になる。……これを持っていきなさい。」
父親が渡したのは、父親自身が書いた医学書…ノート五冊であった。そこには、今現在で起きている各国の健康問題や病などが掲載され、父親自身が現場に行った際の記録がある。
「まずは、アルスターに向かい、その次にローマに行くと聞いたが、ローマは危険な状態だ。だから、そこに行く際には、お前の技量が試される可能性がある。私のこの医学書と、お前の知恵で、ローマ……いや、世界の患者を救うのだ。」
「父さん…。はい‼」
「兄ちゃん‼」
「お兄ちゃんがいなくなると、寂しい‼」
オリヴィエの弟と妹は彼の事を良く慕っているのか、余程寂しくなってしまうと表情で分かる。オリヴィエは彼らと視線を合わせてしゃがみ込んで―
「それは、僕も同じ気持ちだ。だけど、兄ちゃんはやらなきゃいけないんだ。その代わり、お父さんとお母さんの言う事をちゃんと聞いて、家の手伝いをするんだ。これが、僕と約束だよ?」
『うん。』
オリヴィエの弟と妹はそう言って、彼を抱きしめた。彼はそっと抱きしめて「兄ちゃん、頑張って来るからな」と言った。
アストルの屋敷では、彼が旅に出る事に両親と兄はとても心配した。ルノーも行くと言う事は聞いているが、息子…弟のおっちょこちょいな部分が旅に支障が出ないか心配なのだ。
「ルノーがいるのは安心はするが…、それでも兄として放って置けない。」
「ありがとう、兄ちゃん。でも、これは僕もちゃんと考えたんだ。だけど、僕と騎士団にしかできないなら、やるっきゃないもん!イヴェールの分まで、闘うんだ‼」
「アストル、お前…。」
“お前は、おっちょこちょいな弟だけど、成長したんだな”
アストルの兄は、彼の言葉や瞳に嘘が無いと実感した。彼の母親は、彼の言葉に―
「アストルフォ。そう言っているけど、天馬がいなければ―」
「確かに、戦える力は騎士団の中でも低いさ。でも、そんな僕でも、認めてくれた仲間や先輩がいる!僕は、ここでじっとなんかしていられない!!」
母親の言葉を遮って、アストルはそう言った。母親は、更に何か言おうとしたが、父親はそれを止める。
「あ、貴方!」
「良い。アストルフォはもう、自分の意志で決めている。時には、旅が必要だ。……お前は、お前にしか出来ぬ戦いがあると信じている。心配なのは、俺や母さん、兄も、同じだ。だが、ここで得た事を、無駄にするな。」
「お父さん。……うん!僕、頑張るよ!帰ってきたら、いっぱい話してあげるからさ☆」
父親の言葉に、アストルは明るく振る舞った。イヴェールの事は、とても悲しんだ。彼はそれでも、立ち上がらなければいけないと感じたのだ。
ルノーの屋敷では、彼の話を聞いた両親は心配はしていた。けれども、彼は最近、少し変わったように思えた。
「ルノー。お前は、前より良くなったんじゃないか?」
「?」
「貴方が言う焔ちゃんと稽古して、何か変わったって事よ。」
父親の不器用な言葉に、母親は代弁して言う。ルノーは焔の事を話していて、両親はその事には感謝の手紙を送っていた。
「貴方が行くと決めたのなら、行きなさい。無事を祈っているわ。」
「母さん……。」
母親が優しく抱きしめた事に、ルノーは照れくさくなる。父親も、ルノーを抱きしめて言う。
「不器用な俺が言うのも何だが、騎士として、この国の民としての誇りを持って、旅をして来い。死ぬんじゃねぇぞ。」
「と、父さん……。」
ルノーは両親の事を、幼い頃の様に言ったのは久しぶりであった為に、頬を赤くしたままであった。
彼らは己の意思で決めたのだ。
“この旅は、俺(僕)たちだけでしか成し遂げられないのならば、受け入れて、飛び込もうじゃないか!”
引き続き、よろしくお願いします!




