表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クラージュ・イストワール  作者: Hanna
序章 光と騎士の共和国 ルミソワ 編 ―己の役目―
17/174

第14節 誇りを持て

 焔は国王レオ四世と共に茶を飲みながら、会話をしていた。国王が焔を呼んだのは、どんな意味?

 フロリが明後日の公務に向けて、アッシュと宮殿散策に出かけている頃。焔は国王の部屋にてお茶を飲みながら、話を交わしていた。


「昨夜のパーティーは楽しめたか?」


「はい。初めてだったので、緊張しましたが、楽しい思い出が出来ました」


「それは何よりだ。……して、フロリ、マールが第二王子として後継ぎは些か急だったかもしれぬ。お主は、どう思う?」


 昨夜の事。フロリ、否、フロリマールが自分の息子で、後を継ぐに相応しい人間だと言った事だ。国王は少し不安だった様で、彼女に意見を求める。レイは答える。


「急だったと言うのは分かりませんが、フロリマールにとって、いずれ迫る試練だと思います。……私も、ここに来て慣れない事が多かったのですが、周りがあってこそ、今があります。フロリマールを出来るだけ支えるのが、私や騎士団の仕事なのかなと思います。なので、私は異を唱えません」


「そうか。君は優しい子だ。感謝する」


 国王はそう言う。焔は「とんでもないですよ。助けてもらっているのは私の方です」と謙遜し、緑茶を口にする。ちなみに、この緑茶は極東の国で創られ、輸入されたものだと聞いた。もしかしたら、日本の様な国があるのか……その話はひとまず置いておこう。国王は、次のように話を始めた。


「実は、この世界に危機が迫っている。何故かは分からぬが、急激な異変をもたらしている。ジュヌヴィエ殿によれば、其方が世界を救う鍵ともいわれている。まだ、分からぬ事があるじゃろう。だが、それを恐れてはならぬ。……どうか、あの子を、騎士団と共に頼むぞ」


「は、はい」


 焔は不思議に思いつつ、返事をした。


(今の、何か、覚悟を決めている様に感じたけど)と焔、

(私も、そう感じました。何か、予感を感じられているのかもしれませんね)とレイは思った。


「あと、君にはこれを渡しておこう」


 そう言って、国王が焔に渡したのは宝石がついたペンダントであった。

 国王曰く、「白銀竜石」と言われるもので、人がドラゴンへと変身する際に必要な物という。竜石がなければ、野生のまま人を襲う可能性がある。


 ——何故、自分に渡したのか?


 焔がそう問うと、国王は


「君が白銀竜の主人ロードであるからだ。今でなくてはならぬ」


 と言った。

 「何故、今なのか」と焔はそう感じた。嫌な予感……彼女の思考の片隅には、どうしても残る物であった。それは、徐々に迫りつつあった。皆は知らずに。焔は国王との話を終えて、宮殿の廊下を歩いていると―—


「焔。元気が無いように見えるが、どうした?」


「チルパさん……」


 レイの様子を心配したチルパがいて、声をかけてくれた。焔はチルパと共に、騎士団の兵舎へと向かう。彼女は、彼に国王の頼み事を話して―—


「私は、ちゃんと国王様の頼みを果たせるのでしょうか……」


 と言う。チルパは、彼女の肩を軽く叩いて答える。


「正直に言うと、お前さん次第って所だよ。お前さんがきちんと果たしたいと思うのなら、やってみるのも良い経験だ。不安になるのは分かるが、やってみないと分からないぞ。自信を持て」


 チルパの言葉に、焔は返事をして両頬をペシペシと軽く叩いた。チルパは続ける。


「レオ陛下は、お前さんの事を信頼している。だから、失敗しても、一生懸命にやれば頑張っている事を視てくれるさ」


「は、はい。……チルパさんのおかげで、少しやる気が出て来ました。……あ、ルノーと稽古する時間が! すみません、先に行っています」


 焔はそう言って、兵舎へと向かって走り始めた。チルパは「稽古、頑張れよ」と言って彼女に手を振った。焔は「はい!」と返事をして向かって行った。


(随分、変わって来たな、焔。始めは、俺も不安ばかりだった。……人とのコミュニケーションがとる事が苦手なのはオリヴィエの説明で分かったが、男との会話は慣れ親しんだ者にしか出来ていないくらいだった。

 でも、今の様子を見て安心したよ。……焔。お前さん…本当は、明るくて、誰とでも話が出来る人なのだと思ったよ。おかげで、ルノーは女性との話ができる様になったしな)


 チルパはそう思いながら、兵舎の訓練所が見える空中廊下へ出る。焔は、ルノーの稽古を懸命について行っている様子が見えた。今では、鋼の剣まで持てるようになった彼女。より一層、騎士になっている。


(応援しているぞ、焔。お前さんは、きっと立派になれる。信じているぞ)


 チルパはそう思って、自分の書斎部屋へと向かった。訓練所では、ルノーは丸太を縦に斬る焔の太刀筋を見て――


「随分、上手くなったな。少し休憩! ………この前は、縦じゃなくて斜めだったもんな」


「あ、あれは、そ、その。剣が重かっただけだってぇの!」


 ホムラは照れ臭くそう言う。


「フフ、冗談だぞ。……でも、お前の、その、奇妙な形を剣を二本とも持てるくらいだから、成長はしているのは確かだ」


 ルノーはそう言う。奇妙な形の剣とは、焔が持つ日本刀の事だろう。彼は「その剣を見たい」と言ったので、彼女は置いてある二本の日本刀を持って来る。

 焔はそっと鞘から鋼の刀身を抜いて見せる。よく見てみると、今持っている打刀の棟区むねまち辺りの刀身には「日輪天空にちりんてんくう」と漢字で刻まれている。ちなみに、この世界に来てからずっと持っている脇差には「月輪大地げつりんだいち」と刻まれている。


「オリヴィエも、興味津々だったよ。実は、私の国ではこの武器……刀が主流だったんだ」


「かた、な?」


 ルノーは初めて聞く武器の名前を紡ぐ。エルは説明する。


「あぁ。この形は、何故、強度が増すのかは分からないが。まぁ、刀は鋭いから侮っちゃいけない。だが、どんな武器でも弱点はある。刀は手入れをしなければ、刃こぼれを起こし、やがて折れる」


 日本刀は、日本独自に発展した武器の一つ。鋼を加熱させて、不純物が取り除けるまで叩く。そうする事によって、強度が増す。鋭く研いだ刃は、包丁の様にスパッと切ってしまう。

 攻撃は遠心力を使って斬りつける事が主。また、銃弾を真っ二つにするくらいの鋭さを持つ。ただ、力の方向が合わなければ、折れることもある。対して、西洋剣の場合は叩きつけて押し斬るが主な性能。日本刀と違うのは、刃が潰れても叩きつける攻撃が可能性である。


 エルは手入れをせずに自主練習で何度も、何百回は丸太を斬ったのに、刃こぼれはしてないと言った。本来なら、折れてしまうかもしれない。しかし――


「――だが、刃こぼれは起きなかった」


 と彼女エルは言う。それでも、自分の武器なので、無くさない様にはするのは当然であるが、「この刀を詳しく知る人物がいれば良いな」と彼女思った。


「なるほどな。……伝説の、デュランダルと同じだな。どんな堅い岩であろうと、斬ってしまう剣」


「あぁ! 聞いたことある。ローランと言う騎士が持っていた」


「そうだ。しかも、アイツと同じ名前だなんて奇遇だ」


 二人はそう話をしてから、再び稽古を始めた。焔はそれをスマホのメモ機能にこう記した。


『日記を書き始めて、一年が経とうとしていた。訓練を初めて、諦めずに頑張って来た。自分でも驚く程、長く続いている。騎士と言う昇格を得たけど、まだまだ。やっと、剣道で悩んでいた癖が治って来た。

 でも、実際に戦いに実行できるかは自分次第になるかもしれない。来年の四月には、フロリの帰還を民の正式公表する日、また、パリス祭が行われる。でも、何でか、胸騒ぎは落ち着いていない』



 その日の夜。とある屋敷で「計画を実行する」と言った青年とその従者の男が話をしていた。


「いよいよですね」


「あぁ。民に公表したその時に、実行する」


 従者の男の言葉に青年は、実行時を言った。そして、従者は言う。


「えぇ。それと、貴方様にお渡しするものがあります」


 そう言って、従者が差し出したのは鞘に納められた一本の剣であった。ただの、剣ではなく、黒い鋼に赤い紋様が刻まれて、鞘も同じ黒色であった。それを見て、「この剣は一体、何だ」と青年は問う。


「貴方様に相応しい剣。伝説では、暗黒剣・ミュルグレと言い、貴方様のご先祖が所有しておりました。滅びを持って、祝福()を」


 従者はそう言い、青年は剣を手にする。青年は気に行ったのか―—


「良い剣だな。しかも、ご先祖が所有していたのならば、俺が持っていても当然だ。……それに、光から祝福()へと塗り替える色に相応しい」


 と言った。

 読んでくださいまして、ありがとうございます。

 誤字脱字がありましたら、ご報告お願いします!


 次回『第15節 運命の歯車、動く』です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ