表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クラージュ・イストワール  作者: Hanna
序章 光と騎士の共和国 ルミソワ 編 ―己の役目―
15/169

第12節 地下洞窟での死闘

 巫女・ジュヌヴィエを助けるべく、焔、アッシュ、フロリ、ロラン、ルノーは、神殿の地下洞窟を目指す!

 森に入って数分後。木漏れ日が森を照らしているが、雰囲気がどうにも暗く感じてしまう。

 焔は後ろから二番目について、バレない様にこっそりとスマホを見て確認する。森の奥にある神殿も、地図に記されていて今の道を真っ直ぐに進めれば辿り着けるはずだ。しかし――


「ウォォォォォォォン‼︎」


 と聞き覚えのある鳴き声が後ろの方から聞こえた。焔たちは、警戒を始める。彼女は、鳴き声がした後ろの方へ目をやると暗闇の中に赤い瞳が光った。


「皆、前に走れ!」


 焔はそう言って、先に走り出して神殿への先導をする。アッシュたちも、走り出す。存在を気づかれたルヴトーの群れは、四人に向かって走り始める。


「このままだと、追いつかれるぞ!」


「神殿には、辿り着きたいのですが……」


 フロリとロランは後ろを見て言う。焔は前だけを見て走り出す。すると、吊り橋のようなものが見えてきた。しかし、ボロボロで耐久性が心配だ。


「あの橋を越えれば、辿り着くのか?」


 ルノーは先に見える橋を見て、焔と同じ様な考えを持っていた。焔は橋は渡っても、崩れ落ちるだけかもしれないと心配になった。


「ルノー、策は大丈夫なのか? このままじゃ、背水の陣だぞ」


「先輩。心配しないでください。……橋を凍らせれば!」


 ルノーはそう言って、魔法弾で橋が壊れないように凍らせる。焔たちは橋に差し掛かって、勢い良く氷を上手く滑っていく。

 焔とロランは上手く止まることができたが、アッシュとフロリは勢い良く先に立っていた木にぶつかった。痛いに決まっている。


「はぁっ!」


 ルノーは全員が渡りきったのを見計らって、橋に火をつけた。すると、勢いよく燃え盛って橋は落ちた。(ルヴトー)は橋を無くしたために、これ以上追いかけては来なかった。


「ヒヤヒヤしたぁ~」


「そうですね。しかし、この状況を切り抜けた事は幸いです。……先輩、フロル殿。お怪我はありませんか」


 ロランは、木に激突したアッシュとフロリを心配する。気を失っていない事には喜ばしいが、所々汚れてしまっているし、顔にも汚れが付いている。焔とルノーも、彼らを心配する。


「アッシュ、フロリ。勢いよくぶつかっていたようだが……」


 エルは彼らを心配して尋ねる。アッシュとフロリは痛みをこらえて、立ち上がって土を振り払う。


「痛かった……」


「氷って、案外滑るんだな」


 フロリとアッシュは、それぞれそう言った。だが、焔はここから真っ直ぐにある物に目を鋭くさせた。それは――


「あれは!」


 神殿であった。長年放置されているのでボロボロなのは当然だ。あの地下に、ジュヌヴィエと言う巫女が閉じ込められていると思うと、緊張感が増して行く。焔たちは気を引き締めて、神殿へと歩き始めた。

 少し歩いて行くと、洞窟が見えてきた。人々は「呪われた洞窟」とか「怪物の住処」と呼んでいる。


「地下には、化物がいると聞いたことはあるが……。どうしてこんな所に」


 噂しか聞いたことがないフロリは言うが、彼らにとって未知なる部分が多い場所である。


「あの建物の下には、洞窟があるんだ。ずっと前からあるらしい。油断は禁物だ」


 アッシュはそう言う。焔は気を引き締めて、現場に着くと、そこは完全なる廃墟である。そして、地下に通じる洞窟の穴がぽっかりと空いていた。


「ここ?」


 焔がそう言うと、アッシュは「その様だな」と言う。


「ですが、明かりが必要となります。いかが致しましょう」


 ロランの言う通り。灯りは洞窟に不可欠である。魔術でも可能だが、焔は覚悟を決めて、発言する。


「あの、私、灯り持ってます。私が、先頭で行きます。ジュヌヴィエさんがいることも考えて、物音を立てないように行きましょう」


 彼女がそう言うと、アッシュ、フロリ、ロラン、ルノーは頷く。そして、(レイ)はスマホのランプ機能を使用して洞窟を照らし、アッシュたちには見せない様にして一歩ずつ進んで行く。アッシュたちは魔術で灯りを付けて、彼女の後に付いていく。


 (なんとも言えない不気味さ。奥に何かいるのは間違いないかな)と焔は直感、

 (ジュヌヴィエがいるとなれば、犯人もいる可能性があるから要注意だ)とエルは思う。


「……」


 静まる洞窟を奥へ奥へと進んでいくと、神秘的に光る湖が現れた。また、その岸辺にテントがぽつりとあった。あれがもしかすれば、奴らの拠点だ。


「作戦、どうするんだ?」


 フロルは小声でそう言うと、エルは話をする。


「そうだな。ルノー、何かあるか?」


「ジュヌヴィエ様を誘拐した犯人が、彼女の近くにいるとなるとうかつには近づけない。まして、俺たちがいるとなれば警戒心を煽るだけだ……」


「なら、私とフロリの存在は薄い方ですか? まだ、騎士団に入った事を国民に知らせていなければ、ですけど」


 レイはそう言うと、人格たちは「そう言えば!」と言う思う。まだ、フロリと焔の存在が知られていなければ、方法はある。

 焔は仮の提案をし、アッシュとルノーは彼女の作戦を元にアレンジを加えて、それぞれの役割を分担した。


「よし、作戦、開始」


 アッシュは小さくそう言って、四人はそれぞれの配置へと向かった。そしてーー


 ぽちゃん!


 湖に向かって焔は石を投げ入れた。それに気付いたのか、犯人の男ら二人がテントから出て来た。相手が焔だけという事で油断している。


「何もんだ?」


「ここには、騎士団が来るはずじゃなかったのか? お前一人で来るとは、騎士団は卑怯だな。」


「大事な品物を用意したぞ。この盃で間違いないか?」


 ユウは、布巾に包まれた聖なる盃を見せる。男たちは「おぉ、アレが!」と目を輝かせている。その隙に、フロリはジュヌヴィエの救出を行う。


「助けに来ました。音は立てずに」


 フロリは小声で言って、短剣でジュヌヴィエを縛る縄を解く。同時刻。リーダー格の男は――


「その盃、こちらへ寄越せ」


 と言う。その瞬間、焔は相手の方へ盃を高く投げた。犯人は上手くキャッチしようとする。そしてーー


「巫女様を誘拐した罰だ!」


 と、そう叫んで、魔法弾で偽物として作った盃を破壊した。犯人らは衝撃を受けて、口をポカンと開ける。数秒してから、犯人たちはキレる。


「な、何をするんだ、この馬鹿者!」


「アホなのは、てめぇらだよ」


 「偽物を用意するという予測をしないのは愚かだ」と思ってホムラはそう言い返した。

 犯人らは焔に斬りかかろうとナイフを手にして向かってくる。そこを狙って、ロランとルノーが押さえる。アッシュは焔を守る。

 ロランとルノーの連携は見事で、犯人は瞬殺の様に縄をしばかれた。フロリは犯人が逮捕されたのを見て、ジュヌヴィエと共に出て来た。巫女・ジュヌヴィエに怪我が無い事が分かり、四人は安堵して犯人を連行しようとした。その時だった。


「何か来るぞ!」


 アッシュの突然の声に皆は驚くと、湖から波が押し寄せて来た。ずぶ濡れになるも、焔たちは湖から出て来た者に目を見張った。

 湖に住まう怪物。噂のアレがお出まししたのだ。湖から現れた怪物は焔たちを見てから、捕まえようと触手で襲いかかる。アッシュ、フロリ、ロラン、ルノーは切り払えたが、脇差を手にしたほのか、ジュヌヴィエ、犯人らは捕らえられ、水中に連れて行かれた。


「焔! ジュヌヴィエ様! 助けに行くぞ!」


 アッシュがそう言うと、フロリ、ロラン、ルノーは頷いて湖へ飛び込んだ。三人は、魔術で水中をスイスイと進む。

 湖底へと沈んでいく怪物は、焔たちを縛り続ける。焔は、これ以上息ができないと絶対絶命であった。


 (駄目。息が……)


 と思った時、空気は泡として水中に放たれてしまった。焔は徐々に意識が薄れて行く。その時、アッシュ、フロリ、ロラン、ルノーが駆けつけて触手を斬って、焔、ジュヌヴィエ、犯人らを救出する。

 アッシュは焔が溺死し始めていると感じ、抱きしめて何かの魔術を施すと、彼女の体に何かの加護が宿ったかの様に、淡い光を帯びた。水面に出て、岸辺に上がった。焔は、息切れを整えて言う。


「はぁ、はぁ。アレを、消滅させないと。……っ! 刀が! ……取りに行かねぇと!」


 ホムラは息が完全に整っていないのにも関わらず、水中へと潜っていく。アッシュは彼女の後を追って行く。

 ほのかは、怪物に注意して泳いでいく。不思議な事に、スイスイと泳いでいく。怪物は彼女を見つけて捉えようと触手を伸ばすが、彼女から光が発生して触手を弾いた。怪物は焦り始めたのか、激しく泳ぎ始めた。アッシュは、その水流によって水面へと上られてしまう。


「焔!」


 (今のうちに!)


 焔はそう直感して、湖底に沈んでいる刀へ手を伸ばして手にする。怪物は彼女の正面に降りてきて、立ちはだかる。刀は、焔が握ったのに反応して光を帯びる。エルは怪物の触手を避けてーー


 (はっ!)


 正面に構えてから、怪物の目に突き刺して閃光弾の様なものを放った。怪物は弱点を突かれたのか、段々と植物の様に黒く枯れていく。

 ほのかは水面へと戻って行くが、湖底に何かが光るのが見えた。息苦しい状態でもない違和感はあったが、それを拾ってから水面へと上がった。


「焔。大丈夫か?」


 アッシュは、そう尋ねると彼女は頷いてーー


「うん。刀は無事に取り戻したよ。だけど、湖底にこんな物があって。」


 と言って、湖底に沈んでいた物を見せた。それは、淡く輝き聖なる物と思わせる鞘であった。すると、鞘は光を帯びて焔の体内へと入って行った。


『?!』


 あまりの出来事に、皆は黙ってしまった。魔術の現象なのは分かったが、なぜ焔の体内へと入り込んだのか。また、その鞘の持ち主は誰なのかを特定していないのにも関わらず。

 しかし、あまりここに長居は不味いと感じた一行は、犯人を連行しつつ、神殿を後にする。だが、焔はふと――


 (何故だろう。事は終わった筈なのに、終わった感覚がしない。胸騒ぎがする)


 と感じた。

 読んでくださいまして、ありがとうございます。

 誤字脱字がありましたら、ご報告お願いします!


 次回『第13節 初めてのパーティー』です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ