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クラージュ・イストワール  作者: Hanna
序章 光と騎士の共和国 ルミソワ 編 ―己の役目―
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第11節 武勇を、今ここに、示すために!

 「ほのか」と「ホノ」が融合して、「焔」となった彼女。

 再び、稽古を始めようと考えていた焔。しかし、とある知らせが舞い込んできた。

 そして、生活を始めて十ヵ月が経ち、二月になった。外は厳しい寒さで体を動かしにくい。焔にとって慣れない環境で、なんせ、日本よりも緯度は高い方で寒さは少し強く、初めは慣れないのは当然だ。

 基本的に、訓練所などは魔術で体を動かせる程の気温にするようになっている。しかし、そこから出ると厳しい寒さという現実に戻されると言う、冬あるあるに遭遇するらしい。


 ある日、焔は自主練習の休憩でゆっくりしているとーー


「焔‼︎ 今すぐ、会議室に来てくれ!」


 とアッシュが突然、彼女の元へと駆けつけてそう言った。焔は直ぐに稽古を中止して、アッシュの後を追って会議室に到着した。

 そこで話し合いが行われるのは当然だが、フロリ、ロラン、オリヴィエ、アストルフォ、ルノー、ブラタマンテ、オジェ、ガヌロ、チルパの白銀騎士団アージョン・オルドルの主要騎士全員が集まっていた。焔は、一番前でフロリの対面に座った。


「全員揃ったな。では、会議を始める」


 アッシュは焔が席に着いたのを確認してから、話を始めた。


「昨夜、何者かが教会に侵入し、王家専属でもある巫女・ジュヌヴィエ様が誘拐された」


 それを聞いた焔とフロリ以外の騎士は驚いて言葉も出ない。焔はオリヴィエから、フロルはロランから彼女ジュヌヴィエの事を聞く。

 巫女・ジュヌヴィエは、焔とフロリと同じ歳の少女で、神からの予言を宣う事が出来るという不思議な能力を持っている。千里眼とは違って、いつでもと言う訳では無いが、彼女はいくつもの予言を言い当て、王家としても支えとなっている。所謂、重要人物である。


「教会の外にいた目撃者には、犯人が置いたものとされる手紙が落ちていると報告があった。内容は今から黒板に書き記す」


 アッシュはそう言って、手紙の内容を黒板に丁寧に書き記した。そこにあったのは、何とも許されない事だった。


『私たちは、巫女を誘拐する事に決めた。彼女を助けたいのならば、黄金の盃を持ってこい。白銀騎士団アージョン・オルドルの諸君、期限は三日以内、場所は北の森の奥にあるさびれた神殿の地下だ。さもなければ、巫女を生贄とする』


 エルは、これは誘拐犯の手口の一つである身代金要求だ、と考える。

 当然、仲間ものんびりしている暇は無いと感じている。しかし、身代金の代わりとなる「黄金の盃」とは一体何の事だろうかと、皆が考える。

 その時であった。会議室の扉からノック音が聞こえ、アッシュの代わりにロランが扉を開けると、伝令兵がいた。


「会議中に失礼いたします」


 伝令兵はロランに詳細を伝えている。焔たちからは、話の内容が聞こえないので、何の事だろうかと気になる。


「では、その方をここに案内いたす様にお願いします」


「ロラン。今のは何だったんだ?」


 アッシュがそう尋ねると、ロランはこう話した。

 事件の目撃者が証言をする為に、白銀騎士団アージョン・オルドル兵舎に来た事。また、アッシュたちに面会したいとの事だった。

 ロランは直接話を聞く方が良いと思い、会議室に通す様に命じたという。

 それから、二十代くらいの男が会議室に訪れ、事件当日の目撃談をしてくれた。最初に手紙を読んだのも本人らしく、黄金の盃とは教会で聖遺物でもある「聖杯」ではないかと話した。

 男によると――


 『この世界の中の聖人の一人が最後の晩餐に使っていたとされる盃で、幾つもあるとされている。彼を慕う仲間の一人が、処刑された際の彼の血を聖杯で受け、聖杯と共に理想郷へと渡った』


 との事だ。


「しかし、聖遺物を身代金として実際に渡すのも、いかかがなものかと」


 オリヴィエはそう言う。確かに、聖なる物はいくら何でも、見ることはできても、触るのは最もタブーである。


「聖遺物は、教会にとっても、進行する俺たちには何があっても譲れない。どうすれば……」


 アッシュがそう言って悩む。皆も、悩んでどうすれば良いかと考える。焔も、思考を凝らす。


 (身代金で、聖なる物を渡せって……簡単な方法だったら、聖遺物を売って金にするていう汚い手もあるけど)とほのか

 (もしかしてですが、あの時に倒した魔術師の遺言にあった企みは、この事なのでしょうか?)とレイ、

 (そうだったら、マズイって! 焦らずにはいたいけど、期限には間に合わないと嫌な予感するぞ!)とユウ、

 (だりぃ……)とホムラは思う。


 しかし、エルはとある考えを思いつく。


 (聖遺物の複製を魔術で出来ないのか?)と。


 それを聞いたほのかたちは、可能性はあるかもと感じた。そこで、エルはアッシュに提案する。


「アッシュ。その聖遺物を、複製する事は出来ないのか?」


「焔?! まぁ、出来るかもしれないが……。複製は劣化が早いし、聖なる物の偽物を作って大丈夫か?」


「ですが、先輩」


 アッシュがそう心配したのと裏腹に、ルノーは立ち上がって言う。彼はこう話した。


「複製魔術は昔と違って、劣化は低くなっています。実際に、見た事はあるので試してみる価値はあると思います。俺より、オリヴィエかアストル――いや、チルパさんの方が得意かもしれませんけど……」


「ルノーが言うなら、確かだな。……すまない。魔術が発展する勢いに付いて行けなかった」


 アッシュは「あはは……」と笑いつつ、そう言う。アストルフォはーー


「僕を駄目だとか思わないでよぉ〜」


 と困った様子で言う。


 (アイツは活躍すれば凄いが、普段は全くと言えるほどのおっちょこちょいだ)


 と、訓練中にルノーが焔に言っていたほどである。従兄弟でも、そう言われているのかと反応しづらかったのを焔は覚えていた。ほのかはーー


 “魔術発展に追いつけないってアッシュ、おじいちゃんじゃないんだから”


 と少々呆れてしまう。


「そうだな。盃の事は、オリヴィエとチルパに任せる。そして、神殿に赴く班は俺と焔、フロリ、ロランとルノーだ。アストルフォ、ガノ、ブラタマンテ、オジェはいつも通り町の警備を頼む。だが、今までより警戒を怠らないで欲しい。では、その作戦を、明日に実行する!」


『はい!』


 騎士団はそう言って、会議は解散となった。焔はアッシュに「なぜ、自分を神殿へ赴く班に加えたのか」と理由を尋ねた。彼はこう言った。


「ルノーから聞いたんだ。焔は十分に強くなっている。まだまだな所はあるが、自分の教えをよく聞いている。大きな戦い以外なら、大丈夫だろうって事だよ」


「ルノーが……。な、何か、恥ずかしいな……」


 ユウは、褒められる事に照れて言った。自分は教えて貰っているばかりだ、と彼女は思っていたが、ルノーにも少し変化があったらしく、アッシュは話す。


「そうそう。この間までは、ルノーは女の子と少し話すのが苦手だったけど、焔と稽古をしてから平気になってきてさ。少し、優しくなったね。だから、前にオリヴィエが言っていたんだ。良い機会ですから、ルノーを誰かの剣術講師に付けたらどうですかって。オリヴィエはやっぱり、智将だね」


 (そこまで考えてくれたんだ。なんか、ありがたいなぁ)と焔、

 (えぇ、感謝感激ですね)とレイは思う。



 そして、翌日。作戦が実行される時が来た。焔は金属装備を腕と胸に付け、脇差と打刀、防寒着を身に付けて準備を整えた。目指すは、北の森にある神殿である。


「気を付けて行くんだぞ。森は、ルヴトーの巣屈だからな」


「いつも、心配をしてくださり、ありがとうございます。チルパさん。外している間、指揮団は任せました」


「任せておけ、アッシュ」


 アッシュの頼みに、チルパは頼もしそうに言う。

 少し遠いので、アッシュたちは馬で行く事になった。焔はアッシュの愛馬・タサドルに跨って手綱を握り、アッシュは後ろに乗って北へ進んで行く。訓練していた時も、タサドルに跨っていたので彼女は少し安心している。

 フロリは、初めて主人を持つ事になったタシュブランに跨っていた。また、ロランはヴェイヤンディフに、ルノーはバヤールに跨っていた。


「タシュブラン。その、上手く……乗れているか?」


「ご心配なさらずとも、フロリ殿。何の問題もありません。」


 馬が喋った、と驚くのは当然だろう。

 この世界は、動物のある程度は言語能力を持つと言う。また、動物たちとのテレパシーを行う事が出来る人や意思疎通が出来る人もいる。動物だけでなく、精霊との意思疎通などが稀に出来る事があるらしい。

 おそらく、ジュヌヴィエもその中の一人なのだろう。彼女は、神の言葉を宣う事が出来る特殊能力を有している。

 焔はタサドルの手綱を優しく握り、北の森の前まで進んで行く。


「随分うまくなったな、焔」


「そ、そうかな? ここに来る前にも、体験でやった事はあったけど、本格的にはやってないだけ。」


「そうだったのか。でも、直ぐにコツは掴んだし、一人の時も大丈夫だと思うぞ。タサドルも、そう思っているさ」


 アッシュの尋ねに、タサドルは「はい。アッシュ様の言う通り、焔はとても乗馬が上手です」と答えた。後ろにいるロランとオリヴィエは話をしているようだ。


「やはり、いつ見てもルノーのバヤールは綺麗ですね」


「お前のヴェイヤンディフもだぞ。一緒に過ごして来たが、式守を見ていると初めて会った時の俺たちを思い出す」


「確かに、そうですね」


 ロランは相変わらずの敬語口調だが、これでもオリヴィエの幼馴染みで、ルノーとは良い競争関係である。なんか、とあるお話の二人の騎士に、まさにそっくりだ。

 そして、タサドルが森に近づいていると聞いたアッシュは、焔、フロリ、ロラン、ルノーに言う。


「よし、ここから急いで森の入り口まで行く。時間はあまりないと思った方が良い。行くぞ!」


『おぉ!』


 焔はフロリ、ロラン、ルノーと同時に返事をして、タサドルに「走れ」の命を出して走らせた。三人も愛馬に命令を出して、走らせて行った。そして、北の森が見えてきて、入り口前あたりで降りる事になった。

 焔はこっそりとスマホで確認すると、初めてアッシュと出会った森である事が分かった。そう知った彼女は、森の中にルヴトーの魔物がいる事を思い出した。気を引き締める為に、左右の頬を軽く叩いて「油断するな」と意気を掛けた。


「この森を越えて行かなければいけないが、ルヴトーの生存が確認されている。ロラン、対策は大丈夫か?」


「はい。ですが、油断はなさらぬ方が良い事は変わりません」


 ロランはそう答えた。アッシュは「よし」と切り替えのスイッチでも入ったのか、キリっとした表情で言う。


「よし。この森を切り抜けるぞ。焔とフロリは、極力俺たちから離れないでくれ」


『うん』


 そう言って、四人は森の奥にある神殿へと向かって歩き出した。ジュヌヴィエを助ける為に、そして、犯人の目的を聞いて捉える為に。

 読んでくださいまして、ありがとうございます。

 誤字脱字がありましたら、ご報告お願いします!


 次回『第12節 地下洞窟での死闘』です。

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