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クラージュ・イストワール  作者: Hanna
序章 光と騎士の共和国 ルミソワ 編 ―己の役目―
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第10節 武勇を、今ここに

 オリヴィエの治療によって、焔は稽古を再開する。

 翌日。救急室にて、焔はオリヴィエの検診を受けていた。


「うん。問題無し! 指示をちゃんと聞いていた会があったね」


「良かった」


 焔は完治している事に喜び、笑顔になる。着替えを終えて、救急室から出て訓練所へと向かって行く。しかし、焔の腹の虫が鳴き出した。彼女は朝食を食べていない事に気付くが、今更と言う恥ずかしさが湧いた。オリヴィエは微笑んでから、騎士団や兵士たちの食堂へと彼女を案内した。

 食堂には兵士がおり、騎士団の一員のオリヴィエが来ると皆注目を寄せる。焔は緊張してしまい、無駄に方へ力が入ってしまう。


 “お、男の人⁈”


 と、ほのかは思考を焦らせてしまう。

 彼女は父親が嫌いなせいか、男性に対しての対応に時間が掛かってしまう。アッシュやフロルたちの様に、ありのままの自分を受け入れてくれる人であるなら、本来の……心を開いた状態になる。

 男性だけではなく、女性にも彼女は対応が柔軟に出来ないので、彼女自身が相性が良いか否かと無意識に判断していると思う。


「大丈夫。私が付いている。怖くない」


 オリヴィエは焔にそう言って、宥める。彼女はオリヴィエの言葉を信頼して、頷いて食堂へと入って定食料理を受け取って席へと座る。焔は緊張しつつ、料理の一口を口へ運んだ。


「美味しい!」


「良かった。……実は、ここの食堂は一般の人にも提供する事ができるようにしているんだ」


「便利だな。前から、そうだったのか?」


 エルはオリヴィエに尋ねると、彼は首を振った。

 彼曰はく、以前は兵士や騎士だけしか受け付けなかったと言う。この国の歴史によると、半世紀ほど前にとある王が即位して贅沢をし、民には重税と貧相な暮らしを強いたとの事。

 当然、民だけでなく、兵士や騎士にも怒りを買ってしまい、民主主義への一歩として大きな革命を起こし、王と王妃は処刑に処されたと言う。歴史学で「ルミソワ革命」と言われている。


「今、こうして平和があるのも、あの革命が無かったら有り得なかったって言われている位だ」


 (なんか、フランス革命みたいだ)とエル、

 (歴史はいつかは変化する……ですからね)とレイは思う。


 焔は、元の世界で起こったフランス革命の主要を思い出す。

 時は、一七八九年から九九年の事。王権に対する貴族の反抗をきっかけに始まり、圧政の象徴とされたバスティーユ牢獄を襲撃した。旧制度の身分階級「第一身分:聖職者」「第二身分:貴族」「第三身分:平民」を廃した時でもある。

 反乱を起こした原因である国王・ルイ十六世が公開処刑され、続いて王妃・マリーアントワネットが公開処刑されたのである。


「大変だったんだな」


 エルはオリヴィエの話に、そう答えた。彼女の話から、緊迫な状況だったのだろうと感じた。


「まぁね。……さてと、暗い話はここまで」


 とオリヴィエは言って、焔に質問をする。深刻な事ではなく、日常的にある事の方だ。例えば、何が好きで、何が嫌いなのか、誕生日はいつか、だ。ほのかは、オリヴィエの質問に素直に答えた。


「ありがとう。食べ終えて、少ししてから訓練所に行こう。私がついていれば、王宮の庭を散歩できる。」


「王宮?! お城の庭を歩けるの!」


 焔の時代には、公開する王室はいくつもあるが、この中世のような時代であれば、公開するどころか、誰一人入れはしないだろう。その事に焔は驚く。


「あぁ、数年に一度は公開して、王族と民の繋がりを保つ。それに、騎士になるには城の構造も知る必要はあるからね」


「た、確かに、そうですね」


 (よく考えてみれば、そうね)


 とレイは思う。

 オリヴィエによると、近頃怪しい人物が現れていて、第一王子、第三王子、王妃が暗殺されたとの事だ。衛兵も緊迫状態で警戒している。

 平和でも、危機はいつも隣り合わせとはこのことだろうか?いや、いや。王室を狙うとは、なんと凶悪なのだろうか!


 焔は、オリヴィエの案内で城の中、図書室、食堂、会議室、王室、大広間などを廻り、訓練所へと向かった。


「ルノー、遅くなってごめん」


「式守……。オリヴィエが、お前と一緒にいたのなら問題は無いか」


「ごめん。城の中を案内してもらっていたんだ」


 オリヴィエは、ルノーに遅らせてしまった事を謝罪する。ルノーは謝罪を受け止めつつ、オリヴィエのせいではないと言いーー


「それに、いざと言う時に城で迷子になったら大変だからな。案内をしてくれて、助かった」


「どうも。それなら、良かった。焔、今日から頑張ってね」


「うん!」


 オリヴィエに応援されて、焔は微笑んでそう言った。ルノーは焔に「やるぞ」と一声を掛け、剣術の指導に入った。焔は後れを取らぬ様に、一生懸命に取り組んで行く。

 隣では、アッシュとフロリが木剣で模擬試合でもやっているかの様に稽古が行われていて迫力が伝わっている。

 焔は少しずつ剣の扱い方に慣れ、実際の鉄の剣を持つ事になった。だが、まだ持つ事に必死だが、それでも耐久力は向上し、両手で持てるようになっていた。


「せいっ! ……やぁっ!」


「式守。休憩を挟め」


 ルノーは焔にタオルを投げ、彼女はそれをうまく受け取った。焔はルノーに礼を言って、水飲み場へ行って顔の汗を流し、水を飲んだ。


「ぷはぁ~‼︎」


 「生き返るぅ~」と感じたその時、「お疲れ」と声が掛かる。焔は顔を吹きながら、声のした方へ目をやるとガノの姿があった。彼は、焔が稽古をしているのを知っている様だ。


「稽古、頑張っている様だね。怪我は平気なのかい?」


「うん。オリヴィエのおかげで、完治しました」


「それは良かった。焦らずに、精進してね。いつか、君と稽古をしたいよ」


 焔は「はい」と返事をして、ガヌロと別れた。去ってゆく彼の背中を見て、違和感を感じた。


 (この人、何か企んでいる感じ。なんでか、信じ切る事ができない)


 と、ホノは用心深く思っていた。彼女は訓練所へ向かって少し歩いていると、今度はチルパに会う。


「焔ちゃん。怪我の具合は良くなったのかい?」


「はい。オリヴィエのおかげで、元気です」


 ほのかはガッツポーズをして、元気をアピールする。


「オリヴィエは流石だな。稽古は、上手くやっているか?」


「まぁ、一応は。でも、剣先がどうしてもズレてしまって。前からなんですけど」


 焔はポツリと悩みをこぼすと、チルパはこう話を始めた。


「最初はそう言うもんだ。だが、いつかは戦わなくてはいけないのが騎士だ。弱き者と助け、悪を裁く。だが、基本はそうであっても、個人となれば何のために闘うか、どういう事を悪と捕らえて闘うか。本当に、刃を向ける相手か」


 焔はどういう事だろうと首を傾げる。悪とは、人を傷付けたり、虐げるものを言うのではと思うが、チルパには当然そう言う物はあるも、もっと別の物があると言う。


「それは、お前さんにしかできない。それが分かった時には、君は戦えるかもしれないよ。……すまん、引き留めちまって」


「いいえ! 助言、ありがとうございます。稽古、頑張ります」


「おう」


 焔はそう言って、チルパと別れて訓練所へと走って行った。

 それから、焔は稽古の精進に励んだ。街では祭りなどもあるのだが、彼女はずっと稽古を続けた。


 (諦めたくない!)


 初めてそう思えた事で、焔は着々と成長した。教育係のルノーは、彼女の成長に喜びを感じていた。また、オリヴィエの心理カウンセリングにより、焔の心は安定していった。だが、人格が元に戻るのはいつかも分からないので、時間は多くを有する。



 稽古な集中する日々の中。焔は、アッシュ、フロリ、ルノーと共にイグラド村へ赴いていた。復興をする為の調査を目的に訪れた。

 人がいないせいか、より寂しく感じてしまう。


「各自、探索を頼む。焔は俺と一緒に」


 アッシュの指示で、三手に分かれて村を探索し始めた。焔は頷いて、アッシュの後に付いていく。そして、アッシュにバレぬ様に、こっそりとスマホで村の様子を動画で納めていく。


「……」


 ある程度のところで動画を止め、スマホをしまうとアッシュは彼女にこう言う。


「悪い。ここで待ってくれ。そこら辺の家を調べる」


「分かった」


 アッシュはそう言って、焔から少し離れた家へ向かい、更に奥へと進む。その時、焔は何かの気配を感じた。


「……っ!」


 咄嗟に右に前転で回避をすると、さっきいた場所に魔法弾が当たった。焔は持てるようになった脇差で構えると、魔法弾は彼女に向かって放たれる。


「てやっ!」


 ルノーに教わった剣術で魔法弾を切り裂いた。アッシュは彼女が危ないと感じて、彼女を守る。


「大丈夫か?!」


「うん。でも、一体、どこから! ……っ!」


「焔!」


 焔の体に何か異変が起き、彼女は地面に膝を着いてしまう。アッシュは、魔法弾の攻撃元を目視したが、あの時の魔術師がいた。手には、透明な黒曜石で青翠の光を内に秘めていた。


「守りがあったか」


「てめぇ、何を企んでいやがる。我が国の領地を、民を無益に巻き込む者は容赦はしねぇぞ」


 アッシュは鋭い眼差しで剣を抜いて、魔術師の者に刃を向ける。


「無益、か。では、一つと王。なぜ、この国の創立者は、信じる者だけ…同じ思想を持つ者だけで国から追いやった?」


「そ、それは……」


 アッシュはその答えに、応じられない。もう、亡くなっている第一代国王の真意など、当然聞ける訳ない。


「答えられないか。……まぁ、いずれ町では事件が起こる。前の輩は役立たずだった。まだ、()()()はある」


「なっ! ……事件、手はずだと。何を考えているんだ、貴様!」


 沈黙がほんの一瞬流れると、焔の様子に変化が生じた。彼女は、脇差を納めてアッシュの手を優しく握って「アッシュ、落ち着いて」と言い、続けた。


「……お前の言っていることは、企みがあると受け取っておこう。だが、今から立ち去ってもらう。消えてください!」


 そういうと、彼女の体から青白い光が発せられ、彼女自身を包み込む。すると、右手には日本刀の打刀が現れた。


「……何。これはっ!」


 初めて見るものに驚いたが、脳裏に詠唱が流れてくる。呪文の様なものだろうか。焔は無意識にそれを口ずさんだ。


「日が昇るは、悪が去る時……」


「まさか! ……っ!」


 魔術師は、突如焦りながら魔法弾やらと強力な魔術を放つも焔には効いていない。というよりも、攻撃を魔力に変換している様だ。


「……今ここに、その光といかりを示そう。………日輪は天空に輝く(にちりんてんくう)!」


 最後に叫びを上げて、焔は刀を振り下ろした。刃に溜まった光は凄まじい勢いで魔術師に向けて放たれた。魔術師は脱出しようと転移魔術を展開するが、彼女の攻撃の方が早かった。


「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」


 なすすべもなく、魔術師は彼女の攻撃に焼かれて塵と化した。一瞬のような出来事に、アッシュは何も言葉が出なかった。彼は攻撃を終えた焔の背を見ると、少しだけ雰囲気が違って見えた。だが、次の瞬間、焔は再び地面に膝をついたが、それだけでなく、地面へ倒れてしまった。


「焔!」


「はぁっ……はぁっ……」


 アッシュは彼女の上体を起こして額に手を当てると、再び熱を引き起こしていた様だ。

 爆発音により駆けつけたフロリとルノーは、焔とアッシュの元へ駆けつけた。彼らは直ぐに王都へ戻り、彼女はオリヴィエの治療を受ける事になった。

 オリヴィエの見解では、アッシュの見たのが確かなら「魔力暴走」が原因で、放っておいたら身体の部位が麻痺する可能性があるとの事。彼は、彼女の魔力を安定させる為に「回路修正」と言う医者にしかできない魔術を行った。

 これは、暴走して麻痺しかけている回路を循環の良い状態にする治療法で、代々医者の家系であるモングラーヴ家はその技術を受け継いでいるのだ。その為、オリヴィエの父親は医学学校の名誉教授を務め、人気を博している。



 それから、三日ほどが経った頃。焔は、元通りに回復して稽古を再開した。だが、この先に事件が起こるのは知るよしもなかった。

 また、焔の心に変化が生じた。あれ程、人格たちは完全な「個」として成り立っていたが、「ホノ」が「ほのか」に融合するようになったのだ。

 オリヴィエは、熱が引き始めた彼女の反応で診断した所、その事を明らかにした。焔はオリヴィエに言う。消える直前のホノがーー


 (諦めるんじゃねぇぞ?アンタは、あの魔術師を倒した時から少しずつ前に進んでいる。自信を持て。人を守るのは、アンタの得意分野なんだからな。だけど、知識も、もっと持てるはずだ)


 と言い残して消えた、と話していた。

 また、彼女が持っていた打刀はアッシュの判断で、彼女自身の所持品として登録する事になり、脇差と共に装備された。しかし、その日の夜。


「良いか。お前たちにしかできない仕事だ。処女を、あの洞窟へ奴らを引き寄せる餌として、匿え」


 フードを被った青年は二人の男にそう言う。男らは「仰せのままに」と言って、部屋を後にした。

 読んでくださいまして、ありがとうございます。

 誤字脱字がありましたら、ご報告お願いします!


 次回『第11節 武勇を、今ここに、示す為に!』です。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 基本的な文法を見直した方がいいと思います。 …(3点リーダー)は偶数個使います。 「……?」 こんな感じです。 また、 。」は使いません。 !や?の後は1マス全角でスペースを取る…
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