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クラージュ・イストワール  作者: Hanna
第Ⅲ章 魔法工学先端国 オリュンポス諸国 編 ―小さな光と大きな闇―
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第21節 災禍の再訪②

 ファヴォックを討伐するべく奮闘する焔たち。彼女たちが握るのは、希望か、絶望か……

 焔は、風穴から飛翔術を使って飛び降りる。ファヴォックの片目に狙いをつけ、緑炎を纏った魔剣(ダイン・グラム)で斬りつけた。


 Gurrrrrrrr!


 ファヴォックは激痛に怯むも、防衛の為に毒霧を周囲に放つ。先程よりも毒霧を出す時間が長くなっていた。


「焔よ。わしに、緑炎を貸してくれ。」


「は、はい!」


 焔は、オリランドに緑炎を送る。すると、彼の姿が変わっていく。彼は、ファヴォックへ剣の鋒を向けて言う。


「お主と再び相見えるとはのう。緑炎を持ってきて200年ぶりじゃが、お主が消えるときが来たようだ。」


 “200年ぶり? 緑炎を、持ってきた? まさか……!”


「人から“大魔術師”と呼ばれたわし……まだまだ死なんぞッ!」


 オリランドはそう言うと、緑炎を身体から発してファヴォックに反撃を始める。焔は、彼を援護する為に追いかける。

 ファヴォックは雄叫びを上げ、爪や火炎放射などの攻撃を繰り返す。焔は爪攻撃が降り注ぐ中、刃で受け流したり、回避したりする。オリランドの動きは早く、奴が体を動かしてまで探していた。


「ハァァァァァァァァッ!」


 彼は、緑炎を剣から放って奴の顔に直撃させて突撃。焔は、ファヴォックの背中側にいた為、この隙にアールシュとアルケイデスとアシェルに緑炎を宿させた。


 三人は、オリランドを援護する為に突撃する。オリランドは、突撃して奴の頭に刃を貫いていて重傷を負わせた。


 三人も続こうとした時、ファヴォックは翼を羽ばたかせて暴風を起こす。アールシュ、アルケイデス、オリランドは緑炎を失い、吹き飛ばされる。アシェルは素早く回避し、焔の元へ駆けつける。


(マスター)! 魔力反応上昇を確認。翼が完成されつつあります。」


「そんな! 翼を引きちぎればッ!」


 焔は、奴の後ろから鎖を両翼に絡ませて引きちぎろうとする。

 しかし、ファヴォックは力任せに抵抗をして、焔は体ごと持っていかれそうになる。その時、後ろから一人の人物が彼女の手に重ねて支える。


「……ミュケナイ先輩!」


「無茶するな。」


「……まだ、行けますか?」


「あぁ。けど、オリランド先輩が……。」


「わしのことは構わぬ! 行け! 次代を継ぐ子らよ!」


 オリランドは、ほぼ全身に火傷を負うも焔たちに「戦え」と促す。アールシュは、彼を支える為にアーサーと治癒魔術を行っていた。

 焔はダイン・グラムを握りしめ、アルケイデスにファヴォックの翼を引きちぎることを頼む。


「緑炎を宿しますので、その瞬間に先輩の力で!」


「分かった。失敗するな。」


「はい。」


 焔は、飛翔術でファヴォックの正面に降り立つ。ダイン・グラムの切っ先を向けて言う。


「ファヴォック、私が相手だ。お前は、私が消してやる!」


 Guaaaaaaaaaaaaa!


 ファヴォックは、かつて自分を追い込んだ魔剣を見て殺気をまとう雄叫びを上げる。その時、心臓があると思われる場所から人の腕が出てきた。


 “ギャレット?!”


 焔はそれを見て、確信すると同時に怒りが溢れた。


 “許さないッ!”


 焔は魔剣(ダイン・グラム)をしまい、降りかかる毒霧の中を走り抜く。ピリピリとした感覚に、細く黒い帯が襲いかかる。

 アシェルは、彼女の行動に気づいて宿っていた緑炎で帯を打ち払う。彼の援護により、彼女はファヴォックの心臓辺りまで上った。


「動ける方は、ファヴォックの注意を引いてください!」


 アシェルの言葉に、母狼らは共にファヴォックの注意を反らしにかかる。アルケイデスは、奴が暴れない様に鎖を握る。


 焔は、気味の悪いウネウネを素手で払ってギャレットを救出にかかる。ファヴォックは彼女の緑炎に気づいたのか、悲痛な叫びをする。


 彼女は、必死に彼を探すと深紅の光が見えてきた。あともう少しと踏ん張ると、心臓の動きをする様な何かを見つけた。


 その中に、ギャレットが閉じ込められている状態だった。焔は、ウネウネに邪魔されて身動きが制限される。


 “邪魔なのよッ!”


 焔は緑炎を身に纏い、素手で深紅に輝くモノを引き裂いてギャレットを引き出した。自分と彼を鎖で巻き付けて、緑炎の力で脱出する。


 ファヴォックは力の源を失い、内側から破られた痛みで静まる。アルケイデスは、鎖の縛り具合を緩める。


 勢いよく飛び出した焔は、ギャレットを怪我させまいと自分を下敷きにして着地した。母狼は、彼女の元へ駆けつける。


「その子は、私に任せろ。さぁ、私の背に。」


 母狼の背中にギャレットを乗せて見送ると、力尽きたファヴォックが起きた。彼を追いかけようと空を飛ぼうとする。


 アルケイデスは鎖を強く締め付けるが、奴の力で足元が引きずられる。このままでは防衛ラインに着くのは時間の問題だ。


 その時、彼は焔から緑炎を授かった。力が溢れ出てくるのを感じ取ると、鎖を握りしめた。緑炎は鎖を伝ってファヴォックの翼に火傷を負わせる。


「落ちろ。」


 アルケイデスは、怪力を全力で行使してファヴォックの翼を引きちぎった。奴は地面に落とされ、衝撃で上から落ちてきた岩にやられていく。


 焔は、好機と見て魔剣(ダイン・グラム)を手にし、ヤツの正面から進軍する。その時、ファヴォックは毒霧と共に黒い帯を放ってきた為、素早く避けていくが――


「……ッ!!」


 声にならない叫び。彼女の左腕に帯が巻き付いてしまい、激痛が全身に轟いたのだ。


「姉さん!」

「キュウ!」

(マスター)!」


 焔はすぐに緑炎で払い、ファヴォックにとどめを刺そうと走る。


 “焔。君ならファヴォックを消滅させられる”

 “ユウ!”

 “魔剣(ダイン・グラム)は奴の血で、あらゆる力を吸収できる。緑炎を全力で出し、魔剣の力を増大させて”


 ユウは、緑炎を纏った魔剣の吸収能力でファヴォックを消滅させると言うのだ。信じがたいが、そうも言っていられない。焔は、ユウを信じて実行に移る。


 すると、ファヴォックは尾を振って彼女を上空高く飛ばした。彼女は直ぐに、飛翔術で体勢を整える。その間に、アシェルと狼たちは攻撃して奴の体力を削って行く。


 ファヴォックは口内に最大の魔力を溜めながら、黒い帯による攻撃を行う。焔は、魔剣(ダイン・グラム)に緑炎を纏わせて大きく振り、前へ押し出す刃で帯を切り裂いて急降下する。


 黒い帯の破片などは魔剣の力で飛び散り、その残物は彼女の体に掠り傷を残していく。それでも、彼女は目の前に集中する。


 “専心ッ!”


 同時に、ファヴォックは最大魔力を込めた攻撃を口から焔へ放つ。それは、最終防衛ラインにいる討伐クラス全員の目に映り、何事かとざわつかせる。


 焔は緑炎を纏った刃を前へ押し出したまま、奴の恐ろしい魔力に立ち向かう。彼女は、その時にふと仲間たちの顔と自分の名を呼ぶ声を思い出す。


 そして、最後に「大切な人」と無意識に思っているギャレットの顔が浮かんでくる。彼女は覚悟を決め、身体にある魔力全てを緑炎の力に回した。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ‼」


 と、叫びと共に緑炎は以前よりも威力が高く、刃は大きな緑炎に包まれて大剣になる。また、緑炎は彼女の背中に大きな両翼となる。


 すると、ファヴォックの攻撃を切り裂き、攻撃の光線を打ち消したのだ。彼女は、大きく振りかぶって緑炎の全ての力をぶつけた。


 その攻撃は、大爆発を引き起こし、深紅の夜に轟音と白い輝きを轟かせた。彼女の近くにいた仲間は、爆風で飛ばされない様に地面に伏せた。



 光が収まると、ファヴォックの姿や内臓などは全て消え去っていた。代わりに魔剣(ダイン・グラム)は、刀身や柄など全てが黒と深紅に染まった。

 焔は、止めを刺した姿勢のままその場に佇む。彼女の服は、先程の爆発でボロボロだった。


「キュウ!」


 アールシュの元にいたアーサーは、彼女は無事かと飛んで行く。その時、彼女は地面へ倒れてしまった。アールシュ、アシェル、アルケイデスは、彼女の元へ駆けつけた。

 その際、彼らは衝撃的な光景を目にし、急いでアスクレピオスの元へと運んだ。



 こうして、ファヴォックは幻想界(イリュド)から跡形もなく消え去った。深紅に染まった夜空は消え、静かに朝日が昇っていた。

 最終防衛の中に、ケイローンの姿があった。


「まさか、少数で押さえてしまうとは……。焔くんは、まさに選ばれた一人だ。しかし……。」


 “貴女に、大きな負担を抱える事をさせてしまった。英雄として、申し訳ない”


 ケイローンは、怪我を負っていた事で戦場に出る力が戻っていなかった為に己の無力を嘆いた。

 読んでくださいまして、ありがとうございます。

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