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クラージュ・イストワール  作者: Hanna
第Ⅲ章 魔法工学先端国 オリュンポス諸国 編 ―小さな光と大きな闇―
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第18節 休息、それも束の間

 オリュンポスで魔獣討伐が進む中、焔たちに起きた出来事。

 数十日後。魔獣退治が順調に進む中、焔は体調不良を起こして倒れてしまった。


「留学時から忙しかったですし、ちゃんと静養してください。アスクレピオスから忠告です。」


「ありがとう、ゾーイ。医者の言いつけは、ちゃんと守らないと。……ゴホッ、ゴホッ!」


「あまり無理に喋らない方が得策です。」


 ゾーイはそう言うと、部屋の扉をノックする音がする。焔を心配して、アールシュとアーサー、ギャレット、アシェルが来ていた。焔は口に布を当ててマスク代わりにし、ゾーイに彼らを部屋に入れる様に言う。


「ゾーイさん。姉さんの様子はどう?」


「そんなに慌てずとも大丈夫です、アールシュ。このところ、忙しすぎた影響だとアスクレピオスが言ってました。」


 アールシュは、ゾーイの説明に「よかったぁ~」と安堵する。アーサーは、焔の傍に飛んでいくと「早く良くなれ」と言うかのように頬ずりをする。焔は、アーサーの顎下を優しく撫でる。


「焔。現時点で、アルケイデス先輩とメガラ先輩が監督生代理を努めております。あとは、ギャレットが貴女の為に食事をご用意しましたよ。」


 アシェルは、現時点の状況を説明する。焔は「ありがとう」と言う。ギャレットは、「貴女の為に、リゾットを作ったよ」と優しい声色で話す。


「丁度、食事を考えていたので、ありがとうございます。……すみません。私は、アスクレピオスのところに行きます。(マスター)に無理させたら、容赦ありませんので。」


 ゾーイはそう言って、部屋を後にした。ギャレットは、ベッド近くにある机にリゾットを乗せた盆を置く。そして、彼はスプーンで一口程のリゾットを救いあげて「はい」と焔に差し出す。


 “ふぁッ?! ……お、落ち着け。ギャレットはこう言う事を知らないんだ。知らない、知らない”


 焔は複雑な思いをするも、ギャレットの優しい表情に負けて差し出されたリゾット一口分を食べる。彼女は「おいしい」と無意識に照れて呟く。アシェルは、それを気にせずにオリュンポスの現状を報告する。


「現在、オリュンポスは魔獣を防ぎつつあり、赤毛の人型魔物の分析を完了しました。アールシュの協力もありますが。」


「そんなことないです。偶然、詳しかっただけです。……姉さんの言う通り。赤毛の奴は羅刹で間違いなかったよ。飛行部隊で到来地を確認したら、東からやって来たのは確実だった。」


「私の分析能力によりますと、東の国で何か戦の兆し、否、既に戦が始まっています。羅刹という鬼の魔物と何か関係があると推測します。」


 焔はリゾットを食べつつ、アシェルとアールシュの話から考えていたことが事実だと確信する。そして、オリュンポスの地脈の振動も段々明確な原因へ突き止めつつあるという。

 これも彼女の推測通り、神々も恐れる『ティタン族』が結界を破ろうとしているという。最悪の事態に備えなければいけないことを考える。オリュンポス神々も承知していると信じるが、伝説でゼウスでさえ苦戦させた一族にして神だ。


 “風邪が治ったら、アテナ様やゼウス様にティタン族について話し合わないと”


「分かった。トリトンの観測データ、部隊全体で共有したいかな。……リゾット、ありがとう。」


「了解しました。私が後でアルケイデス先輩とメガラ先輩にお伝えしましょう。また、トリトン観測場にも情報提供を依頼しましょう。」


「じゃぁ、僕が行くよ。この間、メガラ先輩に教えてもらったから。」


 アールシュは自信を持ってそう言った。アーサーも、彼と同じく「行くぞ」と声を上げる。


「では、アールシュにトリトン観測場へ行ってもらいましょう。何か困った事があれば、私たちに申し出てください。」


 アシェルはそう言った。彼らは仕事を果たす為に部屋を出ると、丁度ゾーイが保健室から戻って来た。薬を調剤してもらった様で、飲んで安静にしていれば翌日には治るとのこと。

 しかし、完治しても明後日まではゆっくり過ごす様にとアスクレピオスは言っていた。焔は「聞いておかなければ、散々な説教を喰らうだろう」と思いながら、その光景が想像できた。



 そして、翌日を迎える。焔は、熱が引いて医神の言う通りにゆっくりしていた。アンジェリカは「焔の見舞いに行きたい」とルノーに伝えると「友人なのだから話してこい。遠慮するな」と言ってくれた。


「良くなったって聞いて安心したわ。ここの所、忙しかったものね。」


「うん。ちゃんと自己管理しないと、ピオ先生にすっごく怒られる気がする……。」


「そうね。アスクレピオス先生は、神話通りとても頼りになるお医者様だし助かる。……そう言えば、なんだけどさ。焔って、誰か好きな男のことかいるの?」


「ブホッ?!」


 焔はアンジェリカの質問に、飲んでいたレモネードを吹き出しそうになった。アンジェリカは、彼女が頬を赤くしているのと慌てる様子から察する。


「いるの?! どの御方なの?」


「い、いないってば……。言っても、どういう意味か知らないし。良いんだ。」


「言ってもってことは、いることはいるんだ。」


「い、言わないでよぉ~‼ れ、恋愛なんて一度もした事無いし、まだそう言う気持ちになれない。友達、仲間の方が納得できる。」


「えぇ?! ま、まぁ、焔が言うなら仕方ないけど。すっごく綺麗なのに、全く男の子は分かっていないわね。」


「いや、良いんだって。それに、綺麗じゃないよ。今だってほら、髪の毛あいまいな長さでボサボサだし……体型もいまいちだし。」


「体型も、大丈夫だって。自信を持って! なら、今から髪型整えに行きましょうよ!」


「い、今?!」


「えぇ。長さを整えるだけでも、良い気分転換よ。ほら、戸惑ってないで行くわよ!」


「ア、アンジェリカ~‼」


 焔はアンジェリカにより、路面電車を使って一軒の美容院へと連れてこられた。彼女は、長い髪が鬱陶しく思っていたので短い髪にし、鏡を見て新しい自分になった気がした。

 アンジェリカは「とても似合っている」と笑顔で言った。焔は彼女の言葉に照れ臭くなりつつも「ありがとう」と述べた。

 二人は学園に戻り、中庭で他愛もない会話をする。その時、学園内への不審者侵入を知らせる警報が鳴り響いた。正門から何者かが入ったらしく、生徒に危害を加えていると言う。

 ただちに二人は現場に駆けつけると、黒いフードに身を包んだ魔術師がいた。奴は、反撃する生徒に対して殺傷する事無く魔術で追い払っていた。


「止まりなさいッ! 何者ですか‼」


 (レイ)は短刀を手に、魔術師たちの前に立った。同時に、ロラン、アールシュ、ゾーイが彼女の隣に並んで武器を構える。アーサーは、アールシュの肩の上で威嚇している。

 ルノーは、アンジェリカの前に立って剣を構える。また、モージとオリランドは、駆けつけたギャレットの前に立つ。


「これはこれは、また会うとは奇遇だね。」


 一人の魔術師は、焔の姿を見て不敵な笑みを浮かべながら言った。


「貴方がたは、何の目的でいらしたのです? 魔術で生徒たちを傷一つ付けないとはおかしいです。目的は何ですか? ハッキリと申してください!」


 焔は、腹を立てつつも冷静に質問をする。魔術師は、彼女の質問に対してこう言った。


「ある人に用があってね。是非とも話をしたいものだ。」


 焔は魔術師の言葉に対して、話をこじらせることをやめてほしいとハッキリ言う。すると、魔術師は一瞬で姿を消し、オリランドに向かって直接攻撃をした。


「モージ! ギャレットを連れて逃げろ‼」


「で、でも……。」


「話は後じゃ! 行けぇッ‼」


 オリランドはそう言い、モージはギャレットの手を取って学園内へ走って行った。ルノーは、学園内へ走って行くモージと連れて行かれるギャレットを見て察する。


「まさか、魔術師(アイツ)の目的はギャレットか‼ 焔、アールシュ。急いでギャレットとモージの後を追え‼」


「え? うん‼」


「……ルノー、ロラン、指揮権を委ねます。ゾーイ、ここを頼みます。」


「了解した。」

「承知。」

「了解です。」


 焔は3人の返事を聞いてから、アールシュと共にモージとギャレットの後を追う。同時に、魔術師と同じ格好をした者が数体現れた。


「ルノー。我々は、オリランド先輩の援護をしましょう。」


「言われなくても、分かってる!」


 ロランとルノーは、焔の代理を引き受けて仲間たちに指示を出す。焔とアールシュは、モージとギャレットの元へと急ぐ。


「姉さん、こっち!」


 アールシュは先に走って、気配が強く感じる方向へ焔を誘導する。彼女は息を切らしながら、彼の後を追って行くと爆発音が聞こえて来た。

 到着すると、そこには弓矢を巧みに使うケイローンの姿があり、モージはギャレットを守っていた。アールシュは息を整えた直後にケイローンの援護を始めた。


「モ、モージ!」


「焔‼ 丁度良かった!」


 “モージは小柄で、魔術以外は不利……ここは私が!”


「モージ君、無茶は駄目。俺も戦わないと。」


 ギャレットは召喚術で盾と剣を手にしようとするが、焔はそれを止めて「ギャレットのこと、絶対に守る」と言って防衛戦を始めた。

 一方、ルノーとロランは魔術師の討伐を進めてはいる。しかし、ヒュドラほどでの規模ではないものの怪我人が多数出てきていて、逃げ出す者もいた。


 “どこまでも、虫の様に湧き出しやがって……”

 “得体のしれない敵とはいえ、気味が悪いですね”


 ルノーとロランは互いにそう思いながら奮戦するが、スタミナ切れや怪我人が多いことを把握している為、無茶ぶりの指示を出す事が出来なかった。

 ゾーイは小柄ゆえに、一度に倒せる敵に限界があった。その時、空から槍の一撃が魔術師らの群を引き裂いた。アテネの守護神・アテナであった。


「アテナ様‼」

「アテナ様だ!」


「我が民よ。そして、異郷から訪れし者。よくぞ、耐えた。遅くなったが、私も参戦する。」


 アテナはそう言うと槍と盾を構え、単身で魔術師らに立ち向かっていく。その間、生徒ら全員、治癒魔術によって回復を受ける。医神・アスクレピオスだ。


「まったく、厄介な連中だ。……若き者たち、私の力で傷を癒せ。体勢を整えた者から戦え‼」

 読んでくださいまして、ありがとうございます。

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