第16.5節 波間②
アルケイデスとメガラ、焔とギャレットのある日の出来事。
アルケイデスは、食堂にて自分の右手を見つめていた。すると「ボーっとして、大丈夫?」とメガラが声を掛け、彼の相席に座った。
アルケイデスは言葉を詰まらせていると、彼女は微笑んでこう言った。
「今回の戦い、お疲れ様。見えたよ、緑の炎を纏ってたの。遠くにいたけど、凄い力を感じた。」
「あぁ。メガラの言う通りだ。あの炎を焔から受けて、今まで以上に力が湧いた。それに、その炎はヒュドラを塵にした。」
「ヒュドラが、塵に? それって、ヒュドラの弱点になってたってこと?」
アルケイデスは、メガラの言葉に頷いた。
「もしかしたら、俺の家に代々受け継がれている“伝説の炎”かもしれない。なんでも、その炎を受け取る事が出来るのは、選ばれた者たちだけ。」
アルケイデスはそう言い、代々語り継がれている言葉を口にする。
【その炎、選ばれた者に力を与えん。
一つ、恐れても尚立ち向かう“勇猛”の意志。
二つ、世界を知ろうとする“叡智”の心得。
三つ、勇猛と叡智によって引き出され、様々な意味を持つ“力”。
かのオリュンポスの災禍にて、聖なる三つの炎により、邪竜は塵になる】
「しかも、マーキュリー様が記した石板の中に、その炎を宿す者が現れた時、オリュンポスの脅威を払って新たな善き人の時代を迎える事ができる、って。」
「マーキュリー様が、そんなことを? それに、さっきの炎と同じじゃない。となると、焔ちゃんが鍵ってこと?」
「俺も思ってはいる。でも、確信は薄い。親父は、アイツに期待している様だけどな。ったく、全てを任せてんじゃないだろうな、親父は……。」
「そうね。けど、新たな善き人時代って、一体……。」
「俺にも分からない。けど、ここの所、神々は魔獣や人間にはどうにもできない事だけ現れる様になってきた。もしかすれば、マーキュリー様はそう言う事を言いたいんじゃないのかって思う。」
アルケイデスはそう言った。メガラは、彼の言葉に一理あると思った。しかし、神々が関わらない国になると思うと、想像がつきにくいのだった。
当然のことだ。焔の世界でも、最初は神々が天地を作ったのだと伝える為に神話は完成した。四大文明や各国の古代人は、それが当たり前のことだった。
しかし、ギリシャ文明で神話の信憑性を疑う者たちが現れた。
『万物は水からできている』 『万物は火からできている』
『万物は数からできている』 『万物は原子からできている』
と、多くの言葉が時代を越えて後世まで語られるほど。他にも、様々な思想が歴史を辿ると木の根の様に広がって行く。
“あれから、随分と元に戻って来たわね。焔ちゃん、ありがとう。私も、貴女が頑張った分、救護の力で支えるよ”
翌日。朝から警報はならず、焔は散歩していた。道中、中庭の樹の下でキャンバスが一つ置かれていた。彼女は、こっそりとキャンバスの絵を覗くと、そこには入道雲のある空をバックに美しく咲く数輪の向日葵が描かれていた。
「綺麗……。」
「今回は、上手く描けたんだ。」
「ギャレット! ……あ、貴方が描いたの?」
「そうだよ。」
「凄い! 私なんか、途中で辞めちゃうか、段々雑になって来るんだよね。ギャレットは、芸術家の才能あり、だね。」
「そうかな? 小さい頃から、絵を描くのは好きなんだ。特に、花の絵を描くのが。……花って、不思議だよね。それぞれに、花言葉っていうモチーフがあるから。」
「そうだね。私も、面白いなって思った。」
“確か、向日葵の花言葉って……。いやいや、そう言えば、ギャレットって誕生日はいつだ?”
「そう言えば、誕生日っていつなの? 友達として、今度プレゼントでも送るよ。」
「欲しい、モノ? ……ごめん。折角言ってくれたけど、全然考えたことが無かった。生まれた日は、だよ。」
“ガチの無垢っ子。……プレゼントは、知り合ってから早すぎるか?”
「あ、ありがとう。じゃぁ、またね。」
焔は足早と中庭を後にして、訓練所で鍛錬を始めた。準備体操、素振り1000回、筋トレ、魔術・剣技練習と順番に行う。
魔術に関しては、授業で実践段階に入っている。担当教師は、人は危機に瀕したとき力も魔術も最大に発揮することもある、とのこと。
「やぁっ!」
“上手くできたのか? スカアハ師匠なら、どう評価す――”
『甘いッ! まだまだ本気じゃないだろ? どうした、立ち上がれッ‼』
スカアハ師匠に木端微塵にされる勢いで訓練された事を思い出す。まだまだ、これでは鍛錬とは言わない。この世界で、自分がすべきことを果たすまで。
読んでくださいまして、ありがとうございます。
誤字脱字がありましたら、ご報告お願いします。




