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クラージュ・イストワール  作者: Hanna
第Ⅲ章 魔法工学先端国 オリュンポス諸国 編 ―小さな光と大きな闇―
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第14節 強化、開始!

 オリュンポスを守る為、ケイローンの許可の元、焔による強化訓練が始まる。

 焔は陸上を行った翌日、飛行部隊の強兵訓練を行う。


「この陣形は、先頭に班長が飛び、敵へ接近しながら遠距離魔術攻撃を行って誘導するなどの方法が取られます。

 飛行部隊班長の皆さんには、敵との距離と攻撃を行うタイミングを見極める必要があります。

 それでも、空を自由自在に飛べる皆さんだからこそ頼みたい思いです。まず、今日はこの陣形を覚えてもらいます。」


 実際に、飛行部隊の班は訓練所で奥行きや配置を確認する。焔は、ケイローンや兵士長らの協力の元で指示を行う。


「翌日の放課後から、班ごとに編成して学園内をその陣形を、崩さずに飛んでみてください。全部隊共通ですが、体調が優れない場合は回復に務めるように。」



 その次の日に弓矢部隊の強兵訓練を行い、その翌日には補給・救護班の説明に入る。


「補給班は今の所変更はありませんが、各部隊に送る部品などの確認は怠らないくでください。……救護班は、四人一組の班に編成し、住民の各避難拠点へ配置されます。

 補給・救護班には、飛行と弓矢を中心に、陸上部隊の数班を護衛として配置します。そうでなければ、万が一の為に防衛できません。」


 焔は、なんとか全部隊の一つ目の訓練の説明を終える事が出来た。その日は、食事・風呂を済ませて早々とベッドに入った。



 翌日、休日で訓練は無く、休息の二日間だ。しかし、会議室の円卓の上には、ケイローンや学園専属の兵士長らによる部隊適正の報告書がドンっと乗っていた。

 これは、新たに編成する部隊や移動もある為、彼女がケイローンと相談して編み出した。


「よし! 新しい部隊に最適な人を絞るぞぉ!」


 焔は、気合を入れて報告書の整理に入る。助っ人としてアシェル、ギャレットがついている。


「焔。君は、どうして新しい部隊を考えようと思ったんだ?」


「マーキュリー様の言葉もあるけど、役割が増えて行くと情報が混乱しちゃうでしょ? それを防ぐのは勿論だけど、大切なオリュンポスの首都を守りたいからさ。」


 焔はそう言い、作業を再開する。こうして、まる二日かけて新たな部隊の編成を行った。陸上部隊、飛行部隊、弓矢部隊、補給・救護班は現存。新たに、魔装部隊と大砲部隊が編成された。


 魔装部隊は、魔術を得意とし前線でも戦える体力と技術を持つ者が所属。大砲部隊は、文字通り大砲を扱うが、体力が必要なため体格が大きい者や力強い者が所属。


 当然、不満を持つ者も少なくはない。焔は、三日間で訓練を続けて以前の部隊が良いと判断したら、移動の意見を尊重するとした。


 彼女は皆が装備や陣形に慣れて訓練を積み上げた頃、鬼の軍勢が攻めて来たと魔獣襲来の知らせが入った。


「陸上・魔装・大砲部隊、出撃! 飛行部隊は後方に控えつつ準備を、補給・救護班は備蓄を整えるように!」


 焔は、飛行術で指揮に相応しい場所に到着して空中に浮かぶ画面を操作しながら、各部隊へ無線の様に指示を入れる。


「全部隊に連絡します。敵性個体は、色黒と紅い髪に剣を持つ特徴の羅刹。出撃部隊に命ずる相手の弱点は、首です。油断はなりませんッ!」


『はい!』

『へいよ。』

『了解です』


 と、生徒らから返事が返ってくる。焔は、ケイローンから貰った旗を左手に持って掲げ、無線を各部隊隊長に繋げて状況把握と指揮をする準備に入る。


 生徒らは、彼女の前で隊列を組む。鶴翼陣で大砲部隊を最前線に、盾の形をした防御壁(シールド)を展開する魔装部隊、その後ろに控える三部隊構成の弓矢部隊。また、一定の距離で通路の様な通り道がある。

 その後ろにはアルケイデスやアールシュ、ルノー、オリランドらがいる陸上部隊が構える。


 羅刹の数は約三〇〇体で、討伐クラスは二〇〇名余り。数や力は羅刹が上でも、戦略を練れば勝機はあるのだ。


「弓矢部隊、構えッ‼」


 焔は、弓矢部隊の第一陣は斜め上に構えて指示を待つ。そして、彼女は――


「弓矢部隊、三段射撃開始ッ!」


 と指示する。弓矢部隊の総隊長の指示で、一定間隔で三部隊構成による矢の雨は羅刹軍へ降り注ぐ。弓矢部隊は、束の間の休みでも怯む事や緩む事無く矢を放つ。


「今が好機ッ! 大砲、放てぇッ‼」


 と、次の指示を出す。大砲部隊隊長四名は、彼女の指示を受けて大砲を撃つように命じる。


 ただの砲弾ではなく、魔術を使ったモノで今使ったのは風と炎の合成魔法である。ドーンッと放たれた砲弾は、羅刹軍に直撃して進軍をいくらか止める事が出来た。


「弓矢部隊、攻撃やめッ! 大砲部隊と共に後方に控えてください。 陸上・飛行部隊、出撃ッ‼ 敵軍を殲滅せよッ!」


 焔は敵の殲滅を計る陸上部隊に指示を出す。弓矢・大砲部隊は後方に下がり、陸上部隊は予め開けておいた通路を走って戦場へ飛びだす。先陣を切るのは、特攻を任されたアルケイデスとアールシュで二人は力強いパワーを生かして羅刹軍へと突っ切った。


 こうして、焔が率いる魔獣討伐クラスは、羅刹軍を殲滅と言う凄まじい結果をもたらした。直ちにクラスは学園へ戻り、彼女は校内放送にて監督生としての言葉を述べる。


「今日の勝利は、皆様の協力があってこその勝利です。しかし、敵が変わった時は全く違う戦略が必要です。これからも、共にアテネを中心とするオリュンポスを守りましょう。」


 焔は放送を終えて自室に戻ると、ベッドに身を投げ出す。


「あぁ~、疲れたァ。」


 “駄目だ。しばらく、一人の空間を満喫しようかな……”


 と思っていたが、疲れが溜まっていたせいか瞼を閉じてしまった。


 ◆


 辺りを見ると、怪しく光る赤いモノ。焔は、ゆっくりとそれに近づくと――


 ドクンッ ドクンッ


 と、鼓動を脈打っていた。彼女は、恐ろしいモノだと感じて一瞬悲鳴を上げる。すると、景色は一変してとある高所にいた。眼下に広がっていたのは、戦場。それは、ただの戦ではなく一頭の巨大な(ドラゴン)・ファヴウォックとの戦だった。 


 オリュンポスの為に武器を取り戦う者たちと召喚された英雄たち。あの歴史の通り、召喚された英雄たちはファヴウォックに吸収されるか、殺されて強制帰還されていく。そして、先頭に立つ人間の英傑がファヴウォックを鎮めた。


 しかし、ファヴウォックの心臓は人間の英傑によって、荒れ果てた戦場の地下へと沈められた。消滅させる事はできず、永遠にそこで脈を打つ。


 その時。景色が様変わりして、目の前には現在のアテネが火災に見舞われていた。町ではファヴウォックが暴れて、それに立ち向かうアルケイデス、白銀騎士団、学園の生徒たち。


 しかし、焔は服がボロボロで泣きながら旗を左手に、倒れている誰かを右腕で抱えていた。


 “アレは、私と……ッ‼”


 いつの間にか、左手には旗を手に、右腕に見覚えのある人物を抱えていた。白金の髪、透き通った青の瞳が光を失っていた。


「あ、あぁ……ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ‼」


 ◆


「ガハッ!」


 焔はベッドの上で、勢いよく目を開けて上体を起こす。直後に、冷や汗をかいていたことや既に夕方になっていたことに気付く。


 “ったく、あんな夢を見る程……何かの兆し?”


 彼女は最悪だと思っていると、扉のノック音が聞こえてゾーイが入って来た。


「ゾーイ。」


「そろそろ夕食の時間です。」


「あ、そうだったね。ありがとう。はぁ……。」


「嫌な夢でも、見たのですか?」


「そうみたい。全く、勘弁して欲しいよ。ここの所、人付き合いが頻繁だったから疲れたのかな?」


「確かに。私としては、休まれることも必要でしょう。貴女は誘いを受けると、なかなか断ることが出来ないと思うので、今日だけは食事を一緒にとっても構いません。」


「ゾーイ……。」


「今日だけです、一応。」


「ありがとう。」


 焔は礼を言って、食堂へ向かった。

 アンジェリカには、ルノーとの時間を楽しんで来いと(ユウ)が言った。アンジェリカは冗談はやめてと照れ顔であったが、丁度そこへルノーが食事の誘いをして来たのだ。相思相愛と言うのはこのことだろうか。

 焔は食堂について、ゾーイと共に端にあるテーブルに座った。


「そう言えば、ゾーイのこと。まだ、何も知らなかったな。趣味とか、好きな食べ物とかさ。」


「……そうですね。趣味は、ここの名産品であるブドウなどを使ったケーキを作る事、でしょうか。」


「お菓子作り! いいなぁ~。羨ましい。んで、好きな食べ物は?」


「そ、それは……。……姉さま達と一緒に食べた、苺パイです。」


 “姉さま……。あぁ、ステンノとエウリュアレのことか。確かに、彼女たちを思うと”


「そうだったんだね。いつか一緒に、食べられると良いね。」


 焔は、ゾーイの本当の生涯について一瞬だけ悲しくなる。しかし、そう見せない為、ゾーイの為に微笑んで言った。


「……ありがとうございます。」


 “焔。貴女は、分かってるのでしょう? 私が大人になった時、拭え切れない罪を犯したのを。貴女は、優しすぎます”


 焔が見えないフードの中で、ゾーイは彼女の意図を察しながら涙ぐむのを堪えていた。

 読んでくださいまして、ありがとうございます。

 誤字脱字がありましたら、ご報告をお願いします。

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