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クラージュ・イストワール  作者: Hanna
第Ⅲ章 魔法工学先端国 オリュンポス諸国 編 ―小さな光と大きな闇―
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第10.5節 波間①

 これは、決闘が行われる少し前。焔は、ロランの姿を見ていないと報告を受けた。

 これは、決闘が行われる数日前のこと。焔の元に一通の知らせが入った。


 『ロランは部屋にいるはずが、何度も呼びかけても応答がない』


 とこと。焔は早速ロランの部屋へと向かい、扉をノックした。しかし、応答はない。どう言う事だろうとじっくり考えようとした時、扉が開いた。中からは、おぞましい雰囲気を纏ったロランが顔を覗かせていた。


 “ロ、ロラン?! てか、こえぇーよ……”


「ほーのーか、どーのぉ……。」


「ロ、ロラン……。どうしたの? 部屋から出てこないって聞いて、心配したぞ。」


「も、申し訳ありません。ですが、私は想像を超える衝撃で部屋も出られなかったのです。」


「想像を超える?」


 “あ、もしや。アレな、展開ですかね?”


「アンジェリカ様に、フラれました。」


 “予想通りの展開ッ‼”と焔、

 “はい。出たよ。今後、警戒しろよ?”とホムラ、

 “伝説の展開は、想像したくないね”とユウ、

 “ロランの一番の弱点、なのかもしれませんね”とレイは思う。


 ロランによると、中庭でアンジェリカにその思いを告げた所。彼女は、困惑しつつも「ごめんなさい。貴方の思い、受け止められません」とキッパリ言われた。また、「ロランの雰囲気や振る舞い方からして自分では追いつけられないかもしれない」と言っていた。


「……んで、フラれたショックに耐えられず、部屋に籠ったと?」


「はい。」


「な、なるほどね。それで、いつ頃には回復できそう? ショックなのも分かるよ。できるだけ、魔獣討伐には協力して欲しいけどさ……。」


 “こんな声掛けしかできないのが、悔しい”


 ロランは焔が心配してくれた事に感謝を述べ、しばらくは食事以外は部屋から出れないこと、なるべく早い回復をすることを伝えた。

 焔はそうあることを祈っていると話し、ロランの部屋を後にした。中庭に出て、透き通った快晴の空を見上げる。


 “この青空の下で、色んな人が様々な思いを抱えて生活してる。誰が、いつ、どんな時に何が起こるかは、元の世界と同じで分からない。

 でも、辛い事があっても、笑顔でいられる時もちゃんとある。どうか、どの時代でも、今も、未来も、皆が幸せである様に……”



 焔は、授業に取り組んで昼休憩になった時、アールシュの元へ行く。彼の隣には、小さな赤き竜・アーサーが座っていた。


「アル。」


「あ、姉さん。」


「ちゃんと、アーサーと仲良くできてるね。」


「うん。アーサーは大人しいし、小さな荷物だけど手伝ってくれるんだ。そうだ。姉さん、一緒に町へ出かけよう。アーサーも一緒に。」


「キュウッ‼」


 アーサーは、久しぶりの焔との散策に目を輝かせていた。この所、アーサーを見かけていなかった。気のせいと思いつつ、アールシュに尋ねると彼は伝えておきたいという様な口調で話し始めた。


「それが、アーサーがいきなり飛んで行って。追いかけたら、学園から北東辺りの山に行ったんだ。でも、頂上に付いたら、変な景色だった。」


「変な景色?」


 焔は、アールシュからその詳細を聞いた。海に面していない平らな場所で、大地には大小問わず陥没地が幾つかあった。また、その大地から少し嫌な気配を感じたと言う。


 “嫌な気配……ゾーイも言ってたな。学園近くからそう感じるって”


「それで、僕の前にゾーイが来て。()()これ以上、踏み込まない方が良いって忠告された。」


「そんな場所が。」


 “……調べる必要があるかもしれないな”


 焔はそう思いながら、アールシュに礼を言ってアーサーを加えて食堂へ向かい、楽しい時間を過ごしたのであった。そして、彼女は一つの変化を感じる。


 “アル……アナタ、身長伸びてない? 成長期ってヤツか。このままだと、追い抜かれる”

 読んでくださいまして、ありがとうございます。

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