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5.常識を蓄えよう




子供布団は最高でした。

高い体温のソフトな肌触りに包まれて夢の世界へ。ぐっすり眠ることが出来ました! 覚えてはないけど幸せな夢を見た気がする。僕と一緒に寝たコリンもいい夢見れたようです。


あれ以来コリンが僕とくっついて眠ろうとするので、とても愛らしくていつも悶絶させられる。可愛いは正義、はっきり分かんだね。



「おう〜」

「あっち? わかった!」



コリンという移動手段が確保できたのはうれしい。

寝ているコリンの背中に乗ってポーズしてたら起きたコリンが自分を背中に乗せたまま移動……つまりお馬さんごっこをしてくれたわけだ。二歳の彼に僕を乗せるのは辛いだろうに、なんともガッツのある子供だことで。行きたい方向に手を向ければコリンが意思を汲み取って運んでくれるのだ。優しい!


こうして僕がもがいて進むよりも遥かに早く目的の場所に行けるようになった。本当にありがたい。



「ついた」



僕が目指したのは蔵書室、古びた紙とインクの匂いが鼻をつく。この匂いは嫌いじゃない。歴史を感じられるのは個人的に好きなのだ。前世でも見た目が渋くもカッコいい骨董品とか蒐集してたし。


今までは特に違和感がしなかったけど赤ちゃんの視点になると目の前の本棚がとてつもなく大きく感じる。一番上を見上げるには身体を反らなければいけない程だ。今にも本棚が傾いて倒れかかってきそうな恐怖心を抱くが、もちろんそんな事はない。少しビクビクしながらも目当ての本を探す。



この国は一体どんな国なのか。どんな歴史を以ってどのような世界が展開しているのか。それが知りたい。

言葉を覚えようとして二ヶ月、文字も完璧ではないがある程度読めるようになった。文字が読めれば本だって読むことができる。本を読めば今までずっと気になっていたこの世界について調べることができるのだ。情報が少なすぎる。


結構前からたくさんの本が置かれているこの場所の存在は知っていた。だが子供がそんな所に無断で入れるわけはなく、入ろうとしても止められるだろう。それにちょっと前までは言葉をよく覚えているわけではなかった。だからずっと見送るしかなかったのだ。



しかし! 今は領内でお金の決済の時期だ。領民が納めた税に不足がないかを確かめに両親は不在である。普段は親の目があるから蔵書室に入れることはまずない。父さんも母さんもいない絶好のチャンス!


『ここは俺たちだけの愛の巣だ』なんて言って貴族なのに使用人を全く雇っていなかったのが本当に助かった! 毎日毎日子供の目の前でイチャイチャしている両親を冷めた目線で見ていたけど、今回ばかりは二人のラブラブ度合いに感謝ー!



「あらー!」



見つけた! それっぽい題名の本発見! 

確保!


……が、届かない! 自分の体が赤ん坊だってこと忘れてた!

結構低い位置にあるからもう少しで取れそうなんだけど……



「りひと!」



この声は、コリンさん!

そのグーサインは『俺に任せとけ』って事ですか! いつもは可愛いと思ってた背中が今日はものすごく頼りに感じます!


コリン兄様オナシャス!



「むううん!」



コリンさぁぁぁん!!

本を背伸びして取ってくれた! なんですかそのドヤ顔は! 可愛い!


ヤバイ、コリンが優秀すぎる。将来大きくなったら兄上って呼んじゃう!



「あいーあ」



お礼のありがとうも満足に言えないこの体、両親に内緒にしているから現在頼れるのはコリンしかいないのだ。コリンは僕が何を言いたいのかわかっているようで、ニッコリ笑うと本を渡してくれた。本当にありがとう。



本を床に置いてもう一度題名を確認する。『世界逍遥』という文字が書かれている。遠目で見たが間違いではなかった様だ。逍遥なんて難しい単語この世界にもあったんだなぁ……


早速表紙をめくって中身を確認してみる。

『逍遥』は散歩とか、ぶらぶら歩くって意味だったからこの本に目星を付けていたが、どうやら正解らしい。この本は各地を廻って歌を歌う、ある吟遊詩人が世界中を廻った時に書いた本で、国ごとに小さな説明が描かれ更に地方ごとで分かれて細かい解説がなされている。


何枚かめくっていくと折りたたみになっているページがあった。それを大きく広げてみると……



「ちず!」



手描きの世界地図だった。コリンが大興奮する。小さい子供は地図なんか見て興奮するものだったっけ……?


おそらく著者の吟遊詩人本人が書いたであろう、この地図は手書きながらもとても見やすい。国ごとに太い黒線で線引きされ、それぞれの国では赤、青、黄などの色ペンで地方が区切られている。


それぞれがどんな国で、王様の名前と一緒に国中の地方をどの者が収めているのかまで書かれている。



……あった。

『グローリー王国ウルーフ地方、領主アリスター・ウルーフ』


僕が生まれた家は男爵、貴族の爵位の中では一番下位に位置している。元は平民だったらしいが……多分戦争で功績をあげるかなんかしたんだろう。そうじゃなきゃ貴族なのに『ちょっとイノシシ狩ってくる』なんて言わない。いや、確かに領地は大半が山間部に位置してるらしいから猪は出るかもしれないけど!


僕も将来剣を教えられたりするんだろうか……少なくとも肉体武闘系の父さんは完全にその気みたいだ。堅っ苦しい貴族みたいな事をさせられるよりはマシだけど……



中身を確認はした。この本は絶対に読んでおいた方がいい。必須だね。他にもなんか読んでおいた本はあるかな……



最初の本も合わせて4、5冊を蔵書室から借りパクすることにした。昼間誰も見ていない時に読もう。流石に親の前で堂々と子供が読むものではない本をガン読みできるほど顔の皮は厚くないです。



本はベビーベッドの真下に設置しておいた。

え、毛布や布団で隠しとけばいいだろって? そんなの洗濯する時とかに見つかっちゃうだろうが! エロ本を隠す時に布団の下に隠す奴がいるか!


両親には余計な気苦労はかけたくない。二人の前ではただの可愛い赤ちゃんでいたいのだ。僕は幼少期から色々と問題をやらかすラノベの主人公の様にはならないからね!




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