始まり
甲子園
それは高校球児たちの誰しもが憧れる聖地である。
毎年夏になると、球児たちが大粒の汗を流しながら互いに激突し甲子園出場への切符を勝ち取ろうしている。
そんな甲子園出場を夢見る高校があった
私立虎ノ山高校
創立60周年を誇る私立高校だ。
野球部も創立当初から存在したが、一度も甲子園には出場した経験がない。
「今年は何人ぐらい入りそうですかね」
スキンヘッドの小太りの男から声をかけられる
小太りの男はこの学校の教頭である脇山だ。
「さあ…今年も0じゃないですか」
脇山教頭の問いかけに回答したのは、形式上野球部顧問をしている五十嵐先生だ。
「五十嵐くん…私は毎年のように甲子園出場を夢見て日々過ごしているのだ、それなのにまた今年も部員が入らないとは…!!」
また始まった
いつもの脇山教頭の熱血語りが
五十嵐は毎年新入生が入学するこの春先に頭を抱えることが多かった。
教頭はかつて虎ノ山の野球部員だったことから、学内では人一倍野球部に対して思入れが強い。
そのため、顧問である五十嵐にも自然と檄が飛ぶ。
毎年毎年同じようなやり取りにうんざりしていた五十嵐であった。
「あ、でも今年は1人面白い子が入学しましたよ。」
五十嵐が思いついたかのように話した。
「面白い子?」
教頭は目を丸くし、熱弁を止め五十嵐の話に耳を傾けた。
「リバイブピッチャーですよ!」