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ノヴァゴーレム戦記 ~美少女ポンコツ魔術騎士がいく~  作者: とむ熊しのぶ
王立学園 初等科編
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005 王立学園初等科


馬車は王立学園の門前で停車した。


ここからは馬車の乗り入れは禁止だ。私達はいつも通り御者のおじさんにお礼を言うと馬車を降りた。


校門をくぐると雑多な年齢の学生達がそれぞれの目的の校舎に向かって歩いている。


我々の初等科は、学園敷地の左奥にあるので、ぐるっと迂回するルートを通る。裏門から入った方が近いのだが、裏門は緊急時以外通行禁止だ。おそらくだがセキュリティ上の問題だろう。まぁ家の近くまで馬車で迎えに来てくれるのだ。これ以上は文句も言えないだろう。


我々は顔なじみの同級生や後輩たちに挨拶しながら、初等科校舎に到着する。


王都中の生徒が通うだけあって結構大きな校舎だ。我々は最上級生なので二階だが、低学年の時はこの階段を昇るだけで毎朝少々憂鬱になったものだ。


メリーと私は同じクラスだが、アイは別のクラスなので、二階に着くとここで一旦お別れである。


教室に入るといきなりクラス委員から声を掛けられた。


「ミナモトさん。クラス担任のウェイザー先生が放課後校長室に来る様に言っていたわ。」


ちょっと心配そうな顔をしている。教員室では無く、校長室?あまり経験がない。何事?


「私なんかやらかしたっけ?思い当たる節がないわ」


ここの所備品の魔術具も壊してないしね。心配そうな表情のメリーに私は苦笑いで応じた。


気にはなったが、ご指定は放課後だ。とりあえずこの不安な気持ちのまま授業を一日受けるしかない。もうちょっと勉強に集中出来る様に気を使って欲しいものだ。もっとも、我々最上級生は最終試験も終わり、もう全過程は終了しているので、基本は試験結果のおさらいと自習だ。


私の最終試験の結果はというと、まぁ私にしては上々。最終席次の発表は普段の学園での生活態度も併せて評価され卒業直前に発表されるのでまだ判らないが、高等科に進学するだけなら恐らく合格ラインを超えていると判断している。


問題は、希望の課程に進めるかだ。


こちらの方は各課程に人数制限がある事から、相対評価とならざるを得ず、人気のある課程は当然競争率も高い。


人気はやはり、アイの志望する戦務課程や騎士課程である。私の希望する錬金課程や魔道課程はその次ぐらいだろう。


戦務課や騎士課程は軍人育成の為の課程で、卒業後は王国軍に入る事になるので、国としても期待の学生をよりすぐる事になる。錬金課程や魔道課程も卒業時にはそれぞれの国家資格がもらえる上に、成績優秀者にはそれぞれ王立の工房や魔道大学(王立の研究所)への推薦が受けられるので人気な訳だ。


メリーの様に吏僚を目指す人材は、普通課程へ進むのだが、実はこちらは割と門戸は広い。様々な人材を育てるからだが、上を目指す人ににとってはどちらかと言うと中に入ってからの方が激しい競争にさらされる。一級国家吏僚になって、国の政治に関わる様な仕事に就こうとすると、相当優秀な成績を治めないとならない。希望の吏庁が人気ならなおさらだ。


そんな訳で、私は何とか錬金課程に進みたいと思っているが、それがかなわない場合は恐らくこの普通科に入れられてしまうだろう。まぁ地方の下っ端吏僚になって、地域のお年寄りの愚痴を聞きながら一生を過ごすのも悪くないかもだが、男手一人で育ててくれた父親にはちょっと申し訳なく思ってしまう訳だ。


それだけにこの時期の校長からの呼び出しと言うのがとっても気になる・・。



そんなこんなで全く集中できないまま、一限目はおわり、次は運動育の時間だ。私とメリーは着替えの為に、隣の一組に移動する。一組はアイのクラスだ。


運動育は座学だけでは、良くないという事で必ず組み込まれているカリキュラムで、特に今日の様に気になる事があって勉学に身が入らない時などは、確かに気晴らしになっていいと思う。



「そうなのよ。何の用事だと思う?」


それでも頭の片隅から離れない疑問をアイに聞いてみた。


「この時期に呼び出しって、アスカなんかやらかしてない?」


うーん。あまり自信はないけど、少なくとも校長室に呼び出される様な事は思いつかないなぁ。


「逆にいい事なんじゃない?なんか表彰される事したとか」


優しいメリーはそんな事を言ってくれたが、そちらの方がもっと身に覚えがない。まさか、通りの真ん中で馬車に轢かれそうになっていたニャンコを救ったぐらいでは、校長室には呼ばれはすまい。



程なくクラスメイトからメンバー交代の為、呼び出された私はコートに向かう。


今日やっているのはグラスボールと言う球技だ。手を使わず、足だけでボールをけって、味方のポイントマンにボールを渡せば得点となると言う物で、ボールと広場だけあれば誰でも出来るという事で、王国では昔から子供に人気のあるスポーツだ。


私は憂さをばらしの様にリミッターを解除して、気が付いたら五分の時間制限の間に三ポイントも点を取ってしまっていた。周りがちょっと驚いている。しまったちょっとやり過ぎた?


そう普段の言動から結構ポンコツイメージの私は周りから運動音痴と思われているのだが、実は本気を出すと結構運動能力が無駄に高かったりする。だがあまりやり過ぎると、騎士課程など軍人でも実戦部隊向けの課程に万が一にも振り分けられるのが嫌で普段は三味線を弾いているのだ。まぁそこまで警戒しなくても、人気の騎士課程に入れて貰えるとは思えないけどね。


だが私は甘かったかもしれない。


その私の一瞬の雄姿をたまたま見ていた人物が居た。他でもない。校長室の窓から校庭を見下ろす校長先生だった。校長先生は小さく溜息をつくと窓から離れ自席へと戻って行った。


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