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ノヴァゴーレム戦記 ~美少女ポンコツ魔術騎士がいく~  作者: とむ熊しのぶ
王立学園 初等科編
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018 パーソナルロック


光るドラグーンを陶然と言った表情で見つめているアル兄さまに、我慢できずにアイが近づきその肩を強くゆすった。


「子爵様!アスカは大丈夫なのですか?!」


当然の質問だ。光るゴーレム等聞いた事がない。しかも未知の部分が多い竜種の素材を使っているとなれば、予測できない事が起こっているのではないかと心配するのは当たり前だ。


アル兄さまが私の身に迫る危険を放置する筈がないと信用するには、二人はまだ彼に対する信頼が足りないのだ。


「心配には及ばないよ。あれはオーバーロードしているんだ。いや正確には竜種の素材に我々が認識している様な刻印術式のオーバーロードは存在しない。そもそも竜種の素材に刻印等ないからね。あれは、竜種の素材に魔術力の過負荷が掛かった時に起こる現象で、おそらくなんだが、光る事で魔術力の飽和を防いでいるのではないかと言われている。」


そんな説明をされても納得できるものではない。心配げに光るドラグーンを見つめる二人。


「で、でも、いつまでこれは続くのですか?魔術核の起動は終わっているんですよね?このままではあーちゃんの魔術量が枯渇してしまうんじゃ・・。」


魔術量が枯渇したからと言って死ぬ人間はいないが、体に言い訳ではない。なんせ酷ければ気絶してしまう事もあるぐらいだ。


「大丈夫。ちゃんと安全機能は備えている。僕が自ら彼女の身を危険にさらす訳はないだろう?この現象が続いているという事は、まだアスカの力が上回っている証拠だ。それに勿論ゴールはある。それは恐らくもうすぐだ。」


そう言われたからといって、安心出来るものではない。いざと言う時は、この子爵様をぶんなぐってでも止めると意を決した二人は視線を合わせて頷き合う。それを知ってか知るずか、インカム越しに私に声を掛ける兄さま。


「アスカ、まだ意識はあるね。もうひと頑張りだ!最後の気合を入れてくれ!」


その言葉がインカム越しに聞こえたが、私はいま必死に私の魔術力を根こそぎ引っこ抜こうしているドラグーンと戦っている最中だった。なんとか「はい」と答えるのがやっとだった。


もうだめかもと思い始めていた私だったが、兄さまの声を聴いた瞬間。最後の気合を入れる決意をした。これでだめなら、気絶でもなんでもしてやる。というぐらいの覚悟で自分の中の魔術力を絞り出す。


その瞬間である。ふっとドラグーンから魔術力供給の要求が途絶えた。


まだドラグーンの発光は止まらないが、様々な色に変化していた光が白色に安定している。激しさも収まりボワーンと優し気な光り方に変わった気がする。何が起こった?私は肩でゼイゼイ息をしながら、辺りを確認する。特にブレイカーが落ちたとかいう訳ではなさそうだ。私がゴーレムから受けるフィードバックはオールグリーンを伝えている。一応手だけ少し動かしてみるが、普通に動く。


しかし、これ程、魔術力を消費したのは初めてかもしれない。魔術測定の時は大体先に測定器のブレーカーが落ちるか、壊れちゃったからな・・。それにしてもこんなに魔術力を必要とするじゃ並みの人間じゃ無理なでは。やはり私ぐらいじゃまだまだ魔術騎士は無理なんじゃないかな?


その時である。不意に頭の中で知らない人から声を掛けらた。


(当該魔術騎士アダプターの適性が承認されました。魔術紋の登録完了。お名前をお聞かせください)。


誰だ?お前?そう聞きたい処だったがもはやその気力もない私は素直に自分の名前を伝えた。


魔術騎士アダプターアスカ・エレナ・ミナモトの登録が完了いたしました。当機はパーソナルロックされました。)


何を言っているんだ?こいつ?



一方この様を見ていた三人はしばし唖然としていた。いやアル兄さまだけは額に汗をにじませながら、会心の笑みを浮かべていた。


「ついにやった。ドラグーンをパーソナルロック出来るのは彼女しか居ないと思っていたんだ。」


まだ不安げな表情を浮かべながら、一瞬お互いの目を合わせた後にアル兄さまに向き直す二人。


「子爵様!いったい何が起こっているか、ちゃんと説明してください!」


アイがかなり感情をあらわにしながら、アル兄さまに食って掛かった。メリーも眉間にしわを寄せ、口をへの字に強く引き結んできる。返答次第ではただじゃ置かないモードの彼女だ。


「ドラグーンには一つ機能を盛り込んでいたんだ。この騎体にふさわしい魔術適性を持つ魔術騎士を承認する機能で、この適性の承認を最初に受けた人物はこのドラグーンの専用魔術騎士アダプターに登録される仕組みだったんだよ。今アスカは見事、それに承認・登録されたんだ。いままで何人もの王国の魔術士たちが挑んで誰もなしえなかったんだ。基準が高すぎるとの声もあったが、このドラグーンの全能力を引き出す為必要な魔術力だ。妥協は出来ないと突っぱね続けていたんだが・・。」


心底嬉しそうな表情をしている兄さまとは対極に、今一状況が理解できない二人は困惑の表情浮かべている。


「しかし、それではあーちゃんは?彼女はまだ魔術騎士の資格を得ていませんですよね?」


「まぁこのドラグーンの専用魔術騎士となった時点で資格有無などどうでもいい気はするが、まぁそれは、おいおい何とかするよ。いずれにしても賭けは彼女の勝ちだよ。君たちが証人だ。そしてドラグーンは彼女にしか動かせない騎体となった。」


なんとも微妙な表情をする二人。素直に喜べないと言うのを感じているのだろう。


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