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ノヴァゴーレム戦記 ~美少女ポンコツ魔術騎士がいく~  作者: とむ熊しのぶ
王立学園 初等科編
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011 タイゾウ・ミナモト


「父さんはどう思う?私は軍人になれると思う。」


父は口をへの字にして、むっつり黙ったままだった。職人らしく頑固な性格だが、どちらかというと陽気な父としては珍しい。父も私がおかれた状況は理解しているのだ。


「正直軍人に向いてるとは思ってない。だが反面アルバートのやつがお前を求めているのも事実だ。勿論嫁にとかじゃねぇぞ。お前の魔術士として才能をだ。今まで黙っていたが、あいつはお前が小さい頃から、その異常な魔術出力の事を気付いていた。事あるごとに、その事を俺に言ってお前を魔術騎士にする様に進めていたよ。そのたびに俺はまだ子供だ、といって突っぱねていたんだが、お前が高等科に進む歳になって遂に我慢の限界が来たんだろうな。」


珍しく父は饒舌に言った。


私の父タイゾウ・ミナモトは優秀な錬金術師だ。魔術核を発明したアルバート・グレイスリーはまごう事なき天才だったが、その突飛な発想を形にしたのは父だ。彼等は若くして出会い。以来意気投合してタッグを組んで魔術核とノヴァゴーレムを作り上げたのだ。


「あいつは技術者として今孤独なんじゃないかと思う。俺は途中までしかやつに付き合ってやれなかったが、もしお前が奴を助けてやっても良いというのであれば、是非お願いしたいとも思っているよ。まぁ俺はそれを言える立場ではないけどな。」


自分で決めろと言っておいてそれはないだろ~。まぁ聞いたのは私だし、本音ではあるんだろうけどね・・。


「それに、奴は俺に言ったよ。お前を戦闘部隊に配属させる気はないってな。恐らく奴は、自分が開発するノヴァゴーレムのテスト操作者として囲い込もうとしてるんじゃないかな。だとすれば、国家権力に無理やり戦闘要員にされるよりまだ良いかもしれん。」


なる程。父が頭ごなしに反対しない理由はそれか。テスト操作者なら軍所属といってもそれ程悪くないかもしれない。と少し思ってしまう。相変わらず覚悟がないなぁ・・。私。



ユーリさんは最後まで、心配そうだったが、叔父さんに促されて自宅に帰って行った。


私も早々にお風呂に入って床についた。なんか今日は疲れたぜ!



翌日、私はいつも通りの朝のルーチンをこなして、学校に向かう。


馬車の中でアイとメリーに昨日の呼び出しの事を聞かれたが、さすがに他の生徒が居る前で話せる事ではなかったので、昼休憩迄待ってもらった。


昼売店で昼ご飯を買って、三人が向かったのは校舎の屋上である。


ここならほとんど人もいないし、他人に聞かれる心配もないだろう。



私は二人に魔術騎士課程の事を打ち明けた。二人とも驚いたまでは一緒だったが、その後の反応はそれぞれだった。


アイは「名誉なことだ。受けるべき」と即座に断言した。それはそうだろう彼女は軍人志望だ。迷う理由は無い。ある意味もう覚悟の向こう側に居るのだ。


しかも長年の付き合いで、私が見かけ通りのポンコツではなく、意外と図太い性格で高いスペック持っている事を知っている。軍隊でも十分やっていける思っているのだ。魔術適性が実は低くないと知ればなおさらだ。



一方メリーはあからさまに怒っていた。何故君が怒る?!


彼女が怒っている理由は、希望の課程が別にあって、成績も十分なのに、魔術騎士が欲しいからと言って、高等科進学を盾にとって、それを求めて来る国の身勝手さに対してである。


伯爵令嬢という国の体制側のある意味代表者みたいな立場なのに、妙に反骨な気質をもっているのが彼女なのである。



私も王都生まれ、王都育ちだ。


人に比べてそれ程多くないかもしれないが、一応愛国心とやらもなくもない。自分が王国の為に役立つなら・・と思わなくもないのだ。


結局は私の覚悟次第か・・。



それはそうと、週末アル兄さまから招待を受けている事伝えて、二人も誘われている事を告げた。


軍人志望のアイは今をときめくホーンブレイン子爵と話が出来るとそれなりに興味津々だったが、メリーはそれ程興味をひかなかった様だ。ぶっちゃけ魔術核とかノヴァゴーレムとか全く興味がないのだ。


貴族がとか言う以前にその辺の嗜好は極々一般的な年ごろの少女なのだ。


だが二人が最終的に参加もろ手を挙げて、招待を受ける事を決断したのは、彼がご馳走してくれると言うレストランの名前を聞いた瞬間だった。


迂闊にも庶民派の私は良く知らなかったのだが、今王都でも最も予約が取れない大人気レストランだったのだ。もっともよくよく聞くとそんな高級レストランではなく、ただただ人気で予約がとりにくいだけらしい。


もちろん、メリーはハーヴェスター伯爵家の威光をもってすれば、予約も叶うかもしれないが、彼女は実家の権威を使う事を何故か嫌うのである。



そんな訳で、週末彼の招待を受ける事になった我々であった。どれ程志が高くても、おいしい物の誘惑には勝てないのが女学生なのである。


しかし、なんかこの二人と話しているとほっとする。


今朝まで鬱屈していた私がなんだか馬鹿らしくなってくる。やはり持つべきものは胸襟を開いて相談し合える親友ね。



家に帰ると何故かアル兄さまがまた父の工房に顔を出していた。あんた暇か?


っと思ったが、実は一昨日運び入れられていたノヴァゴーレムの魔術核の刻印の改造について父に相談を受けていたそうだ。昨日夕方相談を受けて、夜通し試行錯誤をして今日には改造術式のサンプルを持ち込んできた様だ。今はまさにそのテストの真っ最中だったのだ。暇とか言ってごめんなさい。


罪滅ぼしという訳でもないのだが、術式起動の手伝いをまたやらされた。文句も言わず請け負ったのは言うまでもない。


ついでの様に週末三人で、招待を受ける旨を返答すると、いたく喜んではしゃいでいた。本当にいくつになっても子どもの様な人なのだ。


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