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000 予告編


私はノヴァゴーレムの操縦室である魔術核に乗り込むと早速起動手順に取り掛かった。



魔術核接続シーケンス。第一術式群起動・・・接続完了。


第二式群起動。


あれ?二十五番術式コンフリクト?!え?何と?


えっとえっと、十八番術式キャンセルっと。


第二式群再起動・・・。ええ?!またエラー???


しまった魔術力をオーバーロードさせてしまった?!


あわわ、どうすれば?!



『アスカ・ミナモト准尉!起動が遅いぞ』


私の教育係のリュウ・クオン中尉から檄が飛ぶ。


煩いなぁ。今やってるでしょ!扱いが難しいと言われている新型なのよ。直ぐ起動出来る訳ないでしょ!私だって新人だ!もうちょっと待ってくれてもいいじゃないか!


『准尉!』


判った。判った。ちょっと待っててば!


「はい、中尉!新型の操作に少々手間取っております。しばしお待ちを!」


私が即答しないものだから、催促を繰り返すクオン中尉にとりあえず適当に答える私。インカム越し彼の不機嫌な顔が見える様だ。実際舌打ちぐらいはしているかもしれない。



ノヴァゴーレムは我がリーンヴァレル王国の秘密兵器だ。現在大陸全土を席巻しつつある帝国に対抗する切り札とも言われている。


事実この新型ゴーレムのおかげでリーンヴァレル王国は、東国同盟と呼ばれる対帝国互助組織である同盟議会で首班に選ばれ、今では一躍事実上の盟主となった。


それもあって、王国ではノヴァゴーレムの開発と軍備拡大、魔術騎士アダプターと呼ばれるノヴァゴーレム操作者の育成をここ数年急ピッチで行っている。


今兵士にとって魔術騎士は花形職業と言える。かといって私はどうしても、なりたくて今こうして魔術騎士としてノヴァゴーレムの魔術核の中に座っている訳ではない。私は本来ノヴァゴーレムを作る側、錬金課程を志望した筈なのだが、魔術適性があるとか何とかで、気が付いたら魔術騎士課程に進学していたのだ。


いや、正直なところノヴァゴーレムを作りたいとすら思っていない。確かに実際私の実家はノヴァゴーレムを組み立て・調整を行う錬金工房で、父はもと王立錬金工房でノヴァゴーレムを世に生み出したチームの一人。知る人ぞ知るノヴァゴーレムマイスターと呼ばれる存在だ。


だが私が錬金課程を志望した私が作りたいのは、そんな戦争兵器ではなく、外はぱりぱり中はしっとりふわふわに焼けるパン焼き機だったり、毎朝優しく起こしてくれるぬいぐるみ型目覚まし等と言う平和な魔術具だ。


だから私がスピーディーにこの新型ノヴァゴーレムを起動出来ないからって、それは私の所為ではない。断じて・・・・多分。



なんとか魔術核とシンクロした私は、無事ノヴァゴーレムを起動。ここまでくればこっちのものだ。魔術核を通して自分と一体化したノヴァゴーレムを待機の片膝立ちの姿勢から、直立姿勢へと立ち上がらせた。


「起動終了しました!」


『よし、機動!予定A地点に向け前進!』


私は、クオン中尉の斜め右後ろに離されない様に、編隊を維持して進む。


九メートルの巨人が歩くのだ。本来であれば物凄い振動の筈だが、魔術核内部は常に緩衝術式が発動しているので、ほとんど揺れを感じない。その代わりに魔術核を経由してゴーレムから送られているフィードバックによって地面の感触等が認識できる仕組みとなっている。


私は右方向を索敵しつつ進む。いた!敵だ。


「エンゲージ!十時の方向。距離およそ・・・えっと、五百?四百?」


『准尉ハッキリしろ。距離は?』


「も、申し訳ありません。きょ、距離。えーひーふーみー、四百です」


距離の測定用のゲージと目標の大きさを比べ、相手との距離を計算する私。暗算は苦手なんだよなぁ。いっそ自分で確認しくれと言いたいが、上官である。そうもいかない。


『よし。准尉砲撃準備。こちらは防御術式を展開する!』


私はゴーレムを片膝立ちの姿勢にし、手に持っていたゴーレム用砲撃魔術具キャノンを構え標準する。キャノンは魔術式で物理的な砲弾を加速し発射する魔術具だが、砲弾を飛ばす仕組みは様々で、私が持っているRM12という比較的大型の新型キャノンは射程が長いと言われている。良く判らないが雷の力を使うらしい。欠点は膨大な魔術力を必要とする事、発射迄時間が掛かる事だ。


私はキャノンの魔術式に大量の魔術力を流す。その間にクオン中尉は防御術式を展開し、敵の砲撃から私の機体を守ってくれている。さすがに手早い。


「魔術式起動におよそ七秒!」


私は大体の感覚でかかる時間を報告した。


『よし!準備完了次第撃て!』


了解!と返事をしてトリガーを絞ろうとした瞬間である。突然キャノンが稲妻をあたりにまき散らしながら爆発した。


うおおお!何?!


ゴーレムからの視覚情報がカットされ、視界がブラックアウトした。視覚情報だけではない。すべてのゴーレムからのフィードバックが切れた。


私のゴーレムは稲妻の放電の名残を未だにまき散らしているキャノンを抱えたまま哀れ地響きと共に仰向けに倒れた。許容量をはるかに超える衝撃のフィードバックから操作者を守るため、魔術核がゴーレムとの接続を強制的に切断したのだ。


一体何が?!


なす術もなく大地に寝っ転がるゴーレム


『テスト終了。准尉一旦降騎せよ』


インカム越しに明らかに不機嫌なクオン中尉の声が聞こえた


私はその命令に従って、魔術核との接続切り(切るのは簡単)、魔術核壁を手で押し上げて、ノヴァゴーレムから降騎した。


私がひーこら言いながら魔術核から脱出して地面に降り立つと、そこにはクオン中尉が立っていた。予想に反しそれ程不機嫌そうな顔はしていない。どちらかと言うとヤレヤレと言う感じだ。


そうそう、そうやって普通の顔しとけば、それなりにいい男なんだから、ずっとそうしておきなさいって。


一方母譲りの淡い栗色の髪を後ろでまとめて彼の前で直立不動している私はというと、まぁルックスはそれ程悪くないのではないだろうか?高等科入学当初はいきなりファンクラブが出来るぐらいには美少女で通っていた。もっとも、その後の魔術騎士課程での私の残念なポンコツぶりが判明すると、ファンクラブというよりは同情交じりの「アスカちゃん応援団」と称する様になっていたのだが・・。



「過放電による術式崩壊だ。ゴーレム再起動し隊舎に帰還するぞ。試験総括は帰還してからだ。帰ってからたんまりの報告レポートを覚悟しておけ」


クオン中尉は冷酷に私に宣言した。年の頃は二十半ば位で中尉としては若い部類に入ると思うが、若くしてエースと呼ばれるだけあって、魔術騎士の腕前としては一流だ。それだけは認めない訳にはいかない。


しかし何故そんな彼が、こんなポンコツな新米准尉わたしの面倒見ているかというと全く謎だ。


というのも私が配属されたのは、実戦部隊ではない。いわゆる新型ノヴァゴーレムの運用試験部隊だったからである。


私が配属されたのは、リーンヴァレル王国軍錬金開発局所属、第900大隊、第903部隊。ファルナ・ヴァレル第三王女直轄の一部隊である。


その役割は開発された新型ノヴァゴーレムやその装備が量産・実戦配備されるまでに、その量産試作騎の試験運用を行い、可能な限り事前に問題を洗い出し、場合によってはモディファイを加えた後に世に送り出す部隊である。


そう言う意味では、本来は錬金術師志望で、門前の小僧(娘だが)である私が配属されるのは不思議ではないのだが、腐っても軍隊である。本当に私の様な覚悟のない者がやっていけるのだろうか?


不安しかないんですけど!!



これはちょっと道を誤ったかもしれない。配属されてまだ十日も立たないのに心が折れかけている私であった・・。


前作が一応書き終わったので、次回作の構想がてら予告編を掲載してみました。燃え尽き症候群で次回作に筆が付かない可能性もあったので作者自身を追い込む意図もあったりします(^^;A完全空想世界で前作とはだいぶ嗜好が変わっています(多分)。それでも主人公の中身は同一人物ではないかという噂もあります(笑)まぁ乏しい作者のメンタリティーではそうそうオリジナルキャラは創出出来ないという事でご容赦下さい(笑)本格的な連載開始はもう少し先になります。遅くても涼しくなる前、早ければ一ヶ月後ぐらいには開始したいと思っています。またご愛顧いただけるように頑張りますので、生暖かく見守り下さい。 とむ熊しのぶ

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