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ユメトキドキ ~この異世界の果てに~  作者: ぴい
第1章 夢から覚めて
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第1章 004 〜青髪の女神〜

 ーー眩い光が二人を包み込むと一瞬にして世界が一変した。 そこには黄金の城もエデンの園の様な場所も無かった。 先程の世界とは一変し、そこにあるのは丁寧に積み重ねられた石造り中心で出来た町だ。 雰囲気的には中世風といえば近いだろうか。 そこには当たり前のように人も居た。 ……頭から耳が生えてたり、明らかに獣の遺伝子入ってるだろ的な感じだったり、爬虫類? イヤ、人か…的な感じの、これは噂に聞く亜人という種族なのかと。その容姿は千差万別だ。 もちろんレンにとって普段から見慣れた人類も居る。


「お、おお! …すげぇ! すげぇよ! なぁニーチェ! まぁお前の存在自体がもうすでに凄いんだけどさ。 お前喋るしな。 だけど見てみろよ!これ亜人ってやつだよな? 初めて見たよ! …言葉って通じるのかな?」


 先程から前に現れる驚きの現実に、レンの気持ちは突き上がるばかりだ。


『もちろん僕も見るのは初めてだよぉ。 でも、君みたいな人たちもちゃんといるんだね。 とりあえずはその人たちに話しかけてみようよ。 うん。それがいいと思う。』


 レンとは対照的に、ニーチェはどこか冷静な感じだ。その提案を素直に受け入れ、レンは目の前の橋の前にいる人に話しかける事にした。 ニーチェは人見知りなのか、レンの服の中に隠れた。 まぁ手のひらサイズの動物だ。 服の中へ入っても気にはならない。


「やぁ! ちょっと聞きたいんだけど、ここってどこだい?」


 レンらしい何のひねりもない素直で率直な質問だ。


「お? どうしたよ兄ちゃん。 さっきの爆発にでも巻き込まれて頭でも打ったのか? それになんだぁ? その格好は? …まぁいい。 この町はアーレスだ」


 言葉は何故だか通じるようだ。 まぁこれもお決まりってやつだな。 亜人ありきで、髪の色も多種多様なこの世界では、レンの黒髪も格好も珍しいのだろうか? …格好に関しては部屋着…セットアップのズボンにパーカーとかなりラフなこの世界観にそぐわないものだが。


「アーレスか。ありがとうおっさん! それにしてもさっきの爆発ってのはなんだ?」


「んんん!? 何だよ兄ちゃん。 お前さんやっぱり頭打っちまったみてぇだな。 あのド派手な爆発も知らねぇっのか。 」


 青色の髪の青年が指を指す。


「このまま町の出口まで行くとデカイ湖が見えるんだが、その辺でなんかあったみたいでよ。 でけぇ爆発があったんだよ。 今頃はお偉いさんらが調査でもしてる頃だろうよ」


 この町に来て初イベントの予感。 行く宛もないレンは行く気満々だ。 青髪のおっさんに再度例を言い。指をさした方へと向かう。


『全く自ら厄介な場所に行こうとするなんて、その辺は昔から変わらないねぇ。』


 ニーチェがいつの間にか服から出て来て、レンの肩の上へ乗って来た。


「お、おう。 ニーチェ。 お前なんで急に服の中に入ったりしたんだ? …もしかしてお前、恥ずかしがり屋さんなのか?」


『めんどう事を減らしたいだけだよぉ。 ボクみたいなのが居たら、皆んな驚くんだよ。 きっと…たぶん。とにかくそれは…何となくわかるの。』


 そんなレンの問いにニーチェは何とも曖昧な答えだ。


 亜人とかも居る世界だし、猫みたいなのが喋ってても不思議ではないんじゃないか? とレンはそんな風に思い、ニーチェはやはり人見知りなのだなと自分の中でかたずけた。しばらく歩くとおっさんの言ってた通り湖が見え、人集りが出来ていた。


「あのー! さっき爆発あったみたいだけど、ここで何があったんだ?」


 レンが適当に話しかけやすそうな人に声をかけた。 その時にはもう言わずもがなニーチェはまた服の中だ。


「あ、あぁ、原因はわからないみたいですの。何かが降って来た訳でも無ければ、ここに爆発物があった訳でも無いみたいですし。そもそも爆発は確かにあったのですが、なんの痕跡もないのですよ」


 急に話しかけ、ビックリされながらもお姉さんは答えてくれた。周りの声を聞いてみても皆困惑しているようだ。 そんな中に一人の女が嬉しそうにクスクスと笑みを浮かべ森の方へと入って行った。


「うーん。怪しい。怪しすぎるな」


 レンは人混みから離れ、森の方を見つめる。


『確かにあの子、他の人とは様子が違ったよねぇ。』


 服の中からひょっこり顔を出し出来たてきたニーチェもそれに関して同意見のようだ。


「いっちょ行ってみっかー!」


 そもそも他に行く所もないのは事実だが、レンには先程の彼女に会いたい理由が他にあるようで、その様子にはニーチェもやれやれ。 といった感じだ。 チラッとしか見てはいないが、確実にすげぇ可愛かったのだ。さすがは異世界と言わんばかりの美人ぶりだ。



 ーー森に入った瞬間に横目ですぐに彼女を見つけてしまった。 女は木陰に隠れて人集りをニヤニヤと見つめている感じだ。


「おいおいなんだ?! あれって隠れてるつもりなのか? こっち側からだと面白いくらいにバレバレだな」


 その様子にレンのイタズラ心に火がついて、ドッキリをしようと思い、さらに後ろから忍び足で近づき「コラッ!」と仕掛けた。


「ひぃ!」と女が飛びはね、「ごめんなさい! ごめんなさい!ちょっとした出来心だったんですーーーー!!」


 と焦りながらの謝罪の後顔を上げて


「なっ! なによ?! 誰なのあなた。 …この街の人じゃないわよね。 急にビックリさせてなんのつもりなの!?」


 驚いたり、謝ったり、怒ったり…なんともいいリアクションを取るものだ。


「ごめんごめん。つい。なんか面白そうだったんもんで。ーーんで、君はここでなにをしてるんだ?」


「ふんっ。 別に何だっていいじゃない。 あなたには関係ないでしょう?」


 先ほどのレンの行為に怒ってしまったのか、彼女は素っ気ない態度だ。 レンはうーーん。と考え閃く。おもむろに服の中に手を突っ込んでニーチェを出したのだ。


『な、な、な、な、なにをするのよー!』


 ビックリするニーチェ。そして彼女もまた「え?」と驚いているようだ。


「ニーチェ、すまねぇ。 女の子は可愛いもんが好きだからさ! 」


 彼女は急に様子が変わったように


「あなた、この子は? …まさか……ううん。いや、そうよね。 こんなにも精霊と仲良くしてるんだもん。 あなたもそうなのね?」


 精霊。アニメやゲームの世界では聞き慣れた名称だ。 だが、レンはニーチェがそんな精霊だなんて思ってもみなかった。


「あれ? ニーチェさん? どゆことっすか? お前って精霊なのか? 」


『ふーやれやれ。 別に隠してた訳じゃないけどぉ。 っていうかボクの姿を見れば大体わかるでしょ? 流石はどんなん君だよねぇ』



 その様子に女は


「あなた何も知らないでここまで?! 普通はあの門の扉を開く時に大体は知る事でしょう? …よっぽど相性がい良いようね。…シャル出てきて。」


 新たな名前が出てきたと思った矢先、彼女の長い綺麗な青い髪の間から、色こそ対照的だがニーチェによく似た黒色の猫らしき動物。否、精霊が出てきた。


『よぉ、俺様が大精霊のシャル様だ。お前ら図が高いぞ! さっきのドッキリは俺様もちょっとビビっちまったじゃねぇか』


「もう、シャルってば。 そんな偉そうにしないの。 挨拶くらいちゃんとしなさいよ! ーーごめんね。この子の照れ隠しなの。 本当はすっごく優しい子なのよ」


 そのシャルの登場にレンもニーチェも驚いている。


「あ、あららニーチェみたいなのが出て来た。 ニーチェ、お前みたいなのって沢山いるのか?」


『し、知らないよ! ボクはこの世界の事は本当によくわからないんだよ。 最低限の事…例えば精霊だって事とか、後はあの中間地点の事くらいだよぉ』


 本当にニーチェも何も知らない様子だ。


「まぁ、私も、私たち以外の精霊とそれに転生者を実際に見たのは初めてみたからビックリしたけど。 そんな人たちが何人か居るっていうのはあの子から聞いていたから」



 レンはもう何が何だかで頭から煙が出そうだ。


「あの子?」


「あ、あの綺麗なお庭にいた裸の子よ。 あなたもあったでしょ?」


「ああ。神くんの事か。 あいつ俺には大した説明も無かったような気がするな。 俺が聞いてなかっただけか。」


 二人が話してる横で黒い精霊が白い精霊を追いかけ回している。追いかけられてるニーチェには悪いが側から見るととても仲睦まじい光景だ。


「……んで、君も何かしらの理由で死んで転生して来たって事でいいんだよな? それで、ここにはどれくらい前に来たんだ?」


「ええ…そうね。 ここに来たのは私もまだ感覚的には一年くらいだと思うわ。 たまたまこの町に来て町の人が私を受け入れてくれて、家を貸してくれたの。そこでシャルと一緒に暮らしているのよ」


 転生してから一年間、冒険もせずにこの町に入り浸っていると聞き、俺らみたいや奴を初めて見た理由にも納得がいく。そして町の人たちは転生者とは無関係なのだとも理解する。まぁ神くんも特別だとか言ってた気がするから本当に何人かしか居ないんだとは思うけど。


「でもこうやっていきなり同じ心境の人に出会えたのは心強いよ。 俺はレン! 地球生まれの転生者! ちなみに日本だ!ジャパニーズ! って事でよろしく、、、えっと…」


「私はエマ。 よろしくね。レン、ニーチェ。」


「ああ。 ところでエマ。 君はここで本当に何してたんだ?」


 その質問にエマは綺麗な顔を赤くして


「違うの! 違うのよ! 本当になんでもないの。 ただ余りにも暇だったから町の人たちにドッキリをしてみただけなんだからね。 …ほんの出来心よ」


 ーーそれがエマ。そしてシャルとの出会い。 レンにとって彼女の美しい容姿はまるで女神のように見えていた。


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