29 異世界の青い空
その島は沖縄本島とは少し離れた閑静な島。
専用高架道があちこちにかかる本土と違って空が広い……。
島に着いた頃は暗くなっていたので、まずは予約していた宿泊所で一泊。
普通に泊ったんだけどトイレでふと水洗じゃなくてトイレゴミ収容型だなぁと思っちゃったり、部屋に泊まって「揺れない部屋!」とか思っちゃったりしたのでだいぶこの世界になじんでいる気がする。
待ち合わせの場所に来ていたのはスポーツ刈りの男の人と、ポニーテールの女の人。
こちらが声をかけると、微笑んで礼儀正しく礼をする男の人と、手をあげて挨拶してくる女の人。
挨拶が沖縄方言で驚いたけど、うちなーぐちの方が雰囲気が出るかと思いまして、と、後はずっと標準語で話してくれた。
男の人の方が佐藤さん。
ドライスーツを着てる女の人がスキューバダイビングのインストラクターの大池さん。
そんな感じのガイドさん達だった。
ご夫婦らしいけど、こっちの世界の日本は仮名が浸透してるから当たり前のように別の名字を名乗っていた。
「よろしくお願いします」
そうして佐藤さんの操縦する船でお勧めのダイビングスポットへ向かう。
運が良ければクジラも見れるらしいけど、ちょっと時期が早いと言われた。
そっかー。
でも、プランクトンが夏ほど多くないので水の透明度が高くてダイビングにはもってこいの季節だよ。と言われた通り。
ものすごい綺麗だ。夏に来たことないから比べようがないけどさ。写真でしか見たことのないサンゴ礁や魚がいっぱい見れるわけですよ。
ひらひら泳ぐお魚を追っかけたり皆で組体操みたいに色んなポーズしたりイソギンチャクを数えてたりしたら上がる時間ですよ。
写真もいっぱい撮った、満足!
海上にあがったら海風が来ないように船室内に居る、ドライスーツもぴったりサイズだし、そんなに寒くないんだけどね。
そしたら唐突に佐藤さんの呼ぶ声。クジラが居るらしい。
大池さんの指さす方を見ても何の変哲もない普通の海だ。と思っていたその刹那。
これでもかという巨体が舞い上がり、あの特徴的な尾びれを見せてまた潜っていった。
さっきまで居た海の中にあんなでっかい生き物住んでるんだなぁ…と思ったら何だかすごい身震いする。
結局、それ以降はクジラの気配もなく船着き場まで戻ってきた。
何でも島には何台かシャワー付きの更衣専用車両があるらしい。
マリンスポーツの観光地ならではだなぁ。
島内には自動運転車が全く0というわけではなく、スピードはゆっくり目で大抵は地面を走り、島内を回っているという。島の人のベースもあるけど、主に住民や観光客の足として働いている。
と、更衣車両で着替えていたら片づけをしていたのだろうか、少し遅れて大池さんが入ってきた。
そしておもむろにドライスーツを脱ぎ始める
「あれ?」
大池さんの体の一点に目が行く。
右腕が肩口から黒い……ていうか肩からベルトが伸びてる…っていうか……
義手だ。
じっと見てるのは不作法かと思ってハッとしたけど、私の視線に気づくと大池さんはいたずらが成功したかのように嬉しそうに自慢してくれた。
「私全然気付かなかった~」
「私も気づきませんでしたよ。
人の動きはよく見る方だと思うのですが」
「はい、ドライスーツの上からうっすら重量分散用のベルトかなぁ?という膨らみは見えましたけど…
動きが自然すぎたのでスーツの内側に装着しているダイビングの装備品の一部だと思ってました」
皆気付かなかったらしい。
すごいなぁ、こっちの世界の義手。
3Dプリンタで作れるSFチックなかっこいい義手の話は聞いていたけど、実際に見たのは初めてだ。
その後、佐藤さんと大池さんから島のおすすめスポットを教えてもらって、お土産などを買いそろえて宿泊所に帰る。
本土は専用高架道で埋まっちゃってるけど、こっちは空が広くて星空がきれいなんだよね……ぐう…




