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22 異世界SNS

 元の世界で最後にカラオケ行ったのは5年位前です。三崎みさき ひかるです。この世界の日本のカラオケ、意外と歌える歌ありました。

 アーティスト名を見ると知ってる人も知らない人も居る、この基準は何なんだろう。私みたいにこっちの世界に存在しないのだろうか……


 と、いうわけであまり深く考えず、カラオケで教えてもらったこっちの世界のSNSの紹介



 masqloud clan(マスクラウドクラン)

 グループSNS masqloud clan(マスクラウドクラン)。略称マスクラ、クラクラ、クランなど


 チャットみたいな事が出来るSNS。

 名前の由来はmasqueradeマスカレード+cloudクラウドとclanということで、名前の通り複数アカウント持ちを推奨している。

 一つアカウントを作ったらそこに紐付けして複数アカウントが作れる。

 システム上、自分の持つアカウントは紐付けされてはいるものの、基本的に他のアカウントは他人からは見えない。


 いちいちアカウント名とパスワードを入力して切り替えるので実質サブアカウントだよね。


 一つのクラン内に自分のアカウントを複数参加させることはできない、アカウントを消すこともできるけどWeb上での発言は残るから、あんまりしょっちゅう同じクラン内でアカウントを変えてると分かるかも?



 活動内容によって名義を変えたい趣味人。

 自分の行動範囲を紐付けされるのは怖いがご当地の話や旅先の話をしたい時。

 個人情報に紐付けされたくないが災害時などに現地の情報提供をしたい時などに人気らしい。


 子プリカとか携帯会社とかクランの仕様を見てると、この世界では複数機関を経由しないと本人まではたどり着けないが、逆に正当な方法を使えば確実に本人にたどり着くようになっている設計の様だ。



 クランは誰でも自由に作れる。クランを作成し、そのクランに所属してチャットのような形で投稿する事でコミュニケーションをはかる。画像とかも添付できる。

 使い方の例としては、周りから存在が見えないクローズドの招待制クランを作って友達や家族との連絡用にすることもできるし、オープンで誰にでも参加できるようなクランで知らない人と話すなど様々。

「古い記録を遡りやすい仕様なので、あまりプライベートな事はSNS上で話さない事を推奨していますが」

 とはお巡りさんの音山さんのコメント。

 参加条件で制限をかけられるとはいえ、後から変な人が入ってきて個人情報を拡散しないとも限らない。


 自分一人だけが所属する全体公開クランを作ってブログや近況報告に使う事も多い。



 どんな構造かというと。

 クラン内に入ると縦に長いチャットが三本ほど出てくる。


 一本はクラン内の会話が全て見れる『広間』


 二本目は広間で喋っていたら特定の話題になったので、別で集まって話したくなった時に集まる『談話室』

 談話室には広間でのおしゃべり内容の記録をコピーして持って行けるので、話の経緯が分かりやすく、途中参加する人が参加しやすくなる。入室しない限り折りたたまれており、一番最近の発言の冒頭が表示されている。


 三本目がアルバム棚。

 個人的な保管用で。談話室や分室のおしゃべり記録を編集して保存して置ける。

 クラン内で共有する事もできる。


 一つのアカウントで複数のクランに所属する事はできる、例えばアニメ専用アカウントにしてA、B、C作品のクランに入るような事はできる。


 一方で、一つのクランに所属できる自分のアカウントは一つまで。主に複数アカウントを一人で操って他人の意見を圧殺みたいな事を防ぐためだ。


「まぁ、そんな事してたら間違いなくパーティー症候群疑いで警察に通報されると思いますが」

 とは、猫本さんの意見。

 SNSのほとんどはプライバシーレベル3相当で、何かあったら緩徐通報システムでも何でもいいから警察に通報していいんだって。


「その前に危険裁定で凍結されるんじゃないかな~?」

「危険裁定?」

 この世界に来てずいぶん経つけど、油断すると知らない単語が出てくる。


「インターネット上に限らず、議論が危険な兆候を示した場合の緊急停止制度ですね。

 専門家がカウンセリングする事もありますが、SNSの場合は数が多すぎるため長くても三日ほどの凍結になります」

「これを使うと最長3日、クランで誰も情報が発信できなくなるんだ~。あれだよ~、少し、頭を冷やそうか」

 音山さんと鈴木さんが教えてくれたけど。そのネタこっちの世界にもあるの?コミケになると定番情報戦の代名詞として君臨してるの?

 あと、連帯責任で全員が書き込めなくなるとはいえ、議論の危険な兆候って他人が判断して止めていいものなのか?

「う~ん……」


「え~とね。基礎医学知識検定にも出てくるけど、相手を言い負かそうとして議論を重ねてくと、考えが排他的になっていくっていう研究があってね。

 要は逆行動療法?生活習慣病の精神版みたいなもんだから早めに治療しましょうって事に世界的になってるの」

 まだ腑に落ちないよ?元の世界では聞いたことも無いし。


 しかめっつらのゴリラみたいな難しい顔してたら猫本さんが解説してくれた。


「ええ、定番のじゃれ合いの中に、特定の一つのものを褒め、他のものを腐す。というような遊びがありますよね。例えば目玉焼きに何をかけるとか、お菓子の種類とか、紅茶の淹れ方とか、スコーンにジャムとクリームどっちを先に塗るかとか」

 きのこたけのこ戦争みたいなもんか……


「まぁ、多くの人は遊びですからそこまで影響はないのですが、この議論には正解がありませんよね」

 全員、「最終的には自分の好きなの食べればいいよな!」って思ってやってるからね。


「はい、ところがこのパターンの議論を無意識に行うと、『正解が存在する議論である』と脳が認識するらしいんです。

 意識して『最終的には好きなの食べればいい』と確信犯的に行っているうちはいいでしょうが、無意識に行うと脳が錯覚を起こします。

 そして、自分と意見の違うと攻撃するようになる。

 より考えを深めようとする議論ではなく、自分と違う異質者を排除する攻撃を目的として会話を使うようになります」

 んん?何かきのこたけのこが深刻な話になってきた?


「はい……目玉焼きの調味料の議論なら被害は少ないと思いますが」

 排他的に目玉焼きに醤油をマジレスで主張してくる人が居たら怖っ、近寄らんとこ、ってなるだけだね。

「これがもっと深刻な問題を議論している場合だと、建設的な議論の妨げになる事があります」

 自由な結論を出すべき議論で自分の正解を押し通そうとする。つまり

「つまり、過激化?」

「はい、しかも自分の考えではなく、自分の言動に思考が引っ張られた上での行動です。

 無意識に自分で自分を洗脳していくんです」


 要するに着地点を『まぁ好きなの食べるんですけど』でなく『意見の違うあいつをぶっ潰すぜ』という前提でマジレスしてると自分を洗脳しちゃうのか。怖。


「はい、この状態だと議論で入手できる情報が制限され、偏った見解に留まる可能性が高くなると同時に、こうした態度は他の参加者にも影響を及ぼし、集団でパーティー症候群様の症状を呈する事があります」

 議論が白熱してたと思ったら逮捕されたとか嫌なんですけど。


「その防止のために第三者がクールタイムを設けるのが危険裁定です。

 正式な議論の場では心理学者など専門家も交えた複数名で行う事もありますが、ネット上では投票式で一定以上の票数を得たら運営に凍結申請が飛ぶことになっているので、危険裁定を下した人達は公開されないし直接責任は発生しません」


 ただし、危険裁定制度ができた当初から言論弾圧や議論の妨害を防ぐため。

 後から裁定の正当性を確認できるように、その議論の議事録が保存できていている事、議事録が公開されている、または捜査により公表できる事、が裁定可能の条件と定められている。

 SNSの投稿データは基本的に保存されているため危険裁定は合法となっているわけだ。やたらと危険裁定が乱用されて議論が妨害されるようになったら今度は通報によってパーティー症候群の捜査が行われるようになるだろう。


「一応ね~、危険裁定が発生しないようにするピエロっていう自治ルールがあるんだけど。

 場所によっては機能しないんだよね」

 対立する複数の意見が発生した時。対立陣営は別々の部屋にこもってお互いをミュート。

 『ピエロ』と呼ばれる中立というよりどっちにするか決めかねている陣営を説得する方向で喋る。という討論方式だそうだ。

 ピエロの人たちは、より納得のいく結論を得るために旗色を鮮明にした陣営に質問を投げかける必要がある。



 ちなみにこのマスクラウドクランで運営が即応で削除対応する通報は基本的に個人情報漏洩のみ。


 禁止表現については『この投稿には著しい暴力表現、性表現、嫌悪感を覚える表現などが含まれる恐れがあります。閲覧しますか?』

 という表示に対して『はい』を何度もクリックしていくと徐々に投稿内容が見えてくるという仕様。モザイクとかぼかしが取れていく感じ。エロ画像かよって言いたいとこだけどエロ画像もたまにある。

 原則削除を行わないこの仕様に関しては危険裁定制度の条件の担保とともに、著作権侵害や中傷などの場合に被害者が侵害を確認して警察に通報でき、かつ被害者に不利益を生みにくい方法を模索した結果らしい。



「複数アカウントとクラン……これって結構運営が大変なんじゃない?

 投稿量も多いみたいだし」

 元の世界でも色んなサービスが運営資金で青息吐息してたの見た。

「特にお金…運営費とか……」



「確かにお金はかかりますが、それ以上に有用ですよ。災害情報や公的機関からの連絡も早いですし」

「異世界のサイトは運営費が心配になるような運営方法なんですか?」

「え~、全部ユーザーのカンパとか~?」


「え?無料だけどスポンサーのバナーとかを設置した広告料でなんとか……」

「コココマはあるんだ~」

「コココマ?」

「コココマじゃない?」

「あの、どんな仕組みで広告が配信されるんですか?」

「私も詳しくは知らないんですけど……スポンサーの広告をランダムに表示するみたいな?

 ある程度選べるみたいですけどセットとかなのかな?

 18禁広告が出ないようにはできるみたいだけど」


「そんなのできなきゃ逆にやばいじゃ~ん。

 うっかり子供がアクセスして来てそんなの出たらサイトの管理者が虐待で通報されるよ~」

 それで通報されるんだ……悪いのは広告配信してる方なのに……大変だなパラレル日本のサイト管理者。


「まぁ、向こうの世界も昔と比べて最近はマシになってきてたと思うけど……変な広告が突然でっかく出てくることもなくなってきたし」

 昔は何の変哲もないブログで変なGifが丸だしおっぱいブルンブルンしたりしてたからね。

「三崎さんの居た世界、完全に悪いサイバーパンクの世界じゃ~ん。環境問題抱えてるしインモラル広告が溢れてるし福祉がやばいし」

 いや悪いサイバーパンクって言われるほどそこまで深刻にはなってない……と思う。


「ああ、そうなるとコココマって大事なんですね……」

「色々言われてはいますけどね……」

「投げ銭が簡単にできるようになった子プリカも評価してあげて~」

 子プリカはともかく……コココマって本当に何?


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