19 異世界デパート
「わぁ……」
これが未来のデパート……いや、パラレル現代なんだけども。
どうも、終電で寝てたら何故かパラレルワールドの日本に来てました一般人。三崎 光です。
この世界に来て最初に会った親切な人たち、鈴木さん、猫本さん、音山さんについて社会勉強中。今日はデパート。
「何か見たい物はありますか?」
音山さんが聞いてくる。
「ええと、やっぱり元の世界と全然違うから電気屋さんとか行ってみたいです。……あと本屋さんとか……でも他にもいろいろ気になりますね!食べ物とか!」
正直に言えば、元の世界のゲームと漫画の続きが読めるのか気になります。
「じゃあ電気屋さんが近いからね~、電気屋さん。期待してね!って言いたいところなんだけど、三崎さんの驚きのツボがよく分かんないんだよね」
鈴木さんが微妙なテンション。意外とこっちにある物で向こうにある物も多いんで……。私本も何だかんだ言って不便なスマホみたいなもんだしなぁ。
電気屋さんの家電は意外と普通。炊飯器とか掃除機とか。
「ああ、三崎さんの世界みたいに普通に家で暮らしてる人も多いんですよ」
猫本さんが言うには、本来自動運転車はちょっと便利な自家用車扱い。そこで暮らしてる方が珍しいのだ。
ただし、賃貸マンションからベースの駐車場に衣装替えしている所も多く、『ちょっと遠くから単身赴任』のようなポジションの人は自動運転車を利用する人も多いらしい。
あと連結車両を借りたり購入したりして趣味の空間に充てる人は多いとの事。
じゃあ住宅の売り上げは少ないの?というと、ベースで一家団欒は難しいためにマイホームを夢見る世帯は多く、生活が安定している事もあってちょっと頑張っちゃう人は多いらしい。
万が一変な物件掴まされても事業者か組合が責任もって直してくれるし、直してもらう間はベースに戻っちゃえばいいので、一生に一度の買い物にしては割と気楽なようだ。
ところで、家電製品の中でやはり大きく元の世界と違うのは鎧装とVR機器。
しかしこうして揃ってるのを見ると
「何で家電コーナーに鎧が?って感じにはなる」
鎧だ。業務用の外骨格っぽい鎧装じゃなくて五月人形とか和風のやつで、実際着れそうなサイズだ。防御力高そう。
「ezバトル用だね~。今一番流行ってる気がする」
ezバトルって何だろう、電気屋さんにあるからeスポーツみたいなもんかな?
値札を見ると……
「うわ、やっぱり高い」
「ふむふむ、鉄心f683型鎧装か~。これから値上がりしそうだから買うなら今だよ」
「いやいらない……っていうか値上がり?」
「うん、調べてみたら予定より売れてないからね~、来月には今付いてる表示価格より上がるよ。これ1か月前の予定価格だから」
「普通売れなければ値下げして叩き売るのでは?」
「そんなんしたらさ~、何のための価格信用簿か分かんなくなっちゃう」
「価格信用簿?」
「そこか~、本当に三崎さんのツボ分かんないな」
色々分かんないのはこっちだぞ鈴木さん。
価格信用簿。
製造業や小売業が提供する。商品価格の根拠をデータとしてまとめたものである。
研究開発費、施設管理維持費、人件費などの原価はもちろん、設備投資、売上といった将来発生するであろう様々なものを根拠にして価格の正当性を消費者にアピールしたものであり、店頭にチラシとしておかれる事もあるが、商品紹介ページにリアルタイムで表示される事も多い。
特に売り上げの多少は非常に重要な要素となる。
「はい、もともとは薬の公定価格をより柔軟に定めるために採用された方式ですね。
根拠となる会計上の数字を漸次予測ROI公式というのに当てはめて、『いつまでに』『いくつ』売れるなら『この価格内で』販売できる。というグラフを企業が作り、それを厚労省が認可し、薬の価格を監視します。
稀な病気の治療薬などは使用頻度が少なく、どうしても価格が高くなってしまうため、価格を抑える代わりに特許の保護期間を延ばすなどして柔軟な価格設定を可能としていました。
最近はテクノロジーの進歩により新薬の開発のスピードが上がっているので特許の保護期間が単純に利益とは結びつかないケースが出てきたため、新しい公定価格の設定方法を模索中ですね。今の所、新薬開発の投資回収が出来なかった場合の費用を数十年に分けて国が補償するなどが検討されています」
難しい事は分からないけど、要は売れれば安く、売れなければ値上がりの末に販売終了となる仕組みなわけか。
元の世界では待ってれば安くなるからつい買い控えちゃってたんだよね。急いで手に入れる必要がある物も少なかったし。
向こうの世界と違ってこっちの世界ではゴミの処分にお金がかからないからできるというところもあるんだろう。元の世界では在庫の処分も一仕事なのだ。
こっちの世界の家電らしい近未来っぽい製品と言えば3Dプリンター。
「ああ、これは工房の車両を借りると一緒についてくるので。工房を買う時しか必要ないと思いますよ」
音山さんの解説を聞くに、私には縁が無さげ。意外と買った方が良いものないな、ベースには冷蔵庫洗濯機揃ってるしな。
「ニュースはネット上で見れるしね~……テレビいる?」
ぶっちゃけ、あんまりいらない。災害情報は私本ででてくるし、国会の内容だって次の日には専用公式サイトで国会議事録が見れるのだ。テレビのニュースはいらない。
とはいえ、最近のテレビは複数チャンネルのリアルタイム画面をサムネイル、小さな画像として一度に表示し、好きなチャンネルを選べるらしい。
全てのチャンネルが表示されるとなると、ホラーや恐怖症の画像に遭遇しそうだけれども、恐怖症や嫌悪感がある人はフィルターを設定できて、テレビの配信データをフィルタリングしてくれるのだ。
つまり苦手なものはモザイクとかぼかしとかで表示される。ちょっとほしい。
有料で過去の放送も選べるのでちょっとした見逃しでも数分遅れで話題に追いついて一緒に盛り上がれるという仕様らしく、まだまだテレビ番組には需要はある様だ。ちょっとほしい。
これ以上見てると欲しくなっちゃうのでテレビはほっといてゲームコーナー
……ない…向こうの世界で次に出るはずだったやつ…
「あら、探し物がありませんでしたか?」
遠くに居たけどこっちの様子を見て猫本さんが声をかけてきた。
「大丈夫です。見つからなかったけどネットで調べてみますよ。向こうと発売時期がずれてるのかもしれないし」
有名作品だから話題になってないって事はないと思うんだけど……。でもあれだな、製作チーム全入れ替えしたせいでビッグタイトルの続編詐欺みたいに噂されてた地雷臭のするやつだから別に急ぐことないな。
とりあえず、電化製品で欲しいものはできた。自走掃除機のわんこ型のやつ。
向こうの世界にもあったあの円盤みたいな掃除機に、わんこの顔が描いてあってたまに鳴いてくれる、というだけのものなんだけど、かわいいものはかわいい。
「では、次は書店に向かいましょうか」
いいですね。と思ったけどまさか書店で驚くことになるとは思わないじゃん。




