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14 異世界生活基盤

「ベース車両の案内担当者への引継ぎが終わったら私もおいとまいたします」

「音山さん、一か月間本当にありがとうございました」

 お仕事とはいえすごく助かった。

「こちらこそ非常に興味深いお話を色々ありがとうございました。またご連絡します」

 また会えたら嬉しいな。と、連絡先を交換した。


「みそ……三崎さん、また遊ぼうね~」

 鈴木さん軽い、また遊んでね。と、音山さんと同様、私本のメールアドレスを教える。



 私は、ある日唐突にパラレルワールドの日本に来ちゃった本名縮めて三崎みさき ひかる

 今、一か月間お世話になったお巡りさんの音山さん鈴木さんとちょっと早いお別れの挨拶をしているところ。




「私がベース車両のご案内を担当させていただきます末広と申します」

 着いたのは郊外の大きな工場。ここでは車両の製造やメンテナンスを行っているらしい。

 案内してくれる末広さんは小柄な女性だ。


「メンテナンス工場は全国に無数にございます。

 改装をご希望の際や年一回の点検の際はご都合のつく場所をご利用ください」

 大体元の世界で言う自動車の車検に行くみたいな認識でよさそう。


 車を待つのは工場内の路面電車の停留所みたいな所のベンチ。

「乗降車は原則このような停留所で行ってください。

 ベースの呼び出しは私本を使うほかに、停留所にあるパネルに個人カードを使うことで呼び出しができます」

 停留所の標識みたいなパネルにカードをかざすと、工場の停車場の奥から、こっちの世界の街でよく見かけた小屋みたいなサイズの車がやってきた。

 かなりでかい。軽い一軒家ぐらいある。


「これが私のベース……」


 この世界ではごく一般的なキャンピングカーだけど、この世界に誰にもとられない自分だけの居場所があると思うと安心感が限りない。

 若干涙ぐんでしまった。


 アメリカの映画だとトレーラーハウスって粗末な家みたいな描写される事あるけど、住む場所があるって安心感が絶大だよ。



 自動運転車は大きい、これに寝室、台所、お風呂、トイレ、洗濯機がついている。


 最前部と最後部に出入り口、兼、運転席がある。

「ご案内します。まずは鍵が合っているかどうか確認をお願いします」


 個人情報カードは鍵の役目もする。大きさは駅の改札でピッてやる感じのサイズで、厚みが少しある。

 厚みがある理由は物理的な意味でも鍵になる為。個人情報カードの模様みたいな凸凹や穴が鍵として機能するらしいのだ。

 ベースの鍵なので、電気が無くなっちゃったときにも使えるようにだそうだ。

 普段はベースの鍵として機能するけれども、基本的には身分証明書だ。国家知識検定試験の合格証明書を発行してもらう時に窓口に提示したりする。


 扉の指定の位置にカードを刺すと、元の世界のカードキーみたいに扉がスッと開く、防犯のためにパスワードとかジェスチャーを設定する事もできるのでそこは自由に決めてくださいとの事。


 入って最初に目につくのは運転席。

 運転席はある、けど運転はしない。

 というか専用道路を走行中は原則ハンドルには触っちゃだめ、ハンドルを握るのは緊急時だけなんだそうだ。


「別の車両と連結する場合はこちらが出入り口になります」

 鈴木さんの部屋から猫本さんの救急車両に抜けたのもこの通路だ。

 電車の車両間を繋ぐドアの様な物が運転席の隣、車両の前面にあった。

「法律上、最大三両で走行可能です。

 緊急時は救急、消防、警察車両を含めた計六台まで認められています。

 普段は趣味の工房や物置、庭や書庫などを連結される方が多いですね」


 ベースは基本料金無料。水道光熱費燃料はタダ。改築は有料でメンテはほぼ無料。小さい子は成長に合わせて無料で改築してもらえるらしいが私は大人なので完成形。

 庭や作業場として貸しスペースを借りて合計3台分の個人用スペースにできる。


「救急車両を除いて、他人のベースへの連結は双方の許可が必要になります」

 家庭内暴力などのシェルターにもできる事も想定して作られている完全なプライベート空間なので、家族でも原則立ち入り禁止。と言われた。

 待ち合わせするなら屋外があるし、停留所で子プリカを使えば自動運転のタクシーみたいな感じで即座に自動運転車の貸しスペースを短時間レンタルでき、そちらは乗っている全員がいつでも停車指示をできるという事で乗り合いには便利なのだそうだ。



「緊急車両を呼ぶなどの非常時には、こちらにある非常ボタンを押していただくと車載カメラと位置情報も含めてオペレーターにつながりますので指示に従ってください」


 何か押したら自爆しそうな装飾なんですけど……


 だって透明なカバーの中に黒と黄色のテープで囲まれて真っ赤なボタンがあるよ?


「まちがって押されないようなデザインを考慮した結果このようになりました」

 これ絶対押してみる小学生居るでしょ、と思ったら年に数人居るらしい。


 移動は行き先、で住所や地図上の点をタッチするだけ。

 つまるところ、自動運転してくれるカーナビみたいな認識でいいと思う。


 ……ん?

廻留かいりゅう?って何ですか?」

 この熟語聞いたことない。

「まず、自動運転車は基本的に絶えず動き回る事で相互に空間を融通する仕組みという事をご理解ください」


 自動運転車は、こまめに動き回ってお互いに道を譲る事で一か所にバカでかい駐車場を作らなくても大丈夫、道路下の日当たりも年中真っ暗という事は無い、という仕組みらしい、そう上手くいくもんかな……?

 燃料を国内でバカバカ作ってバカバカ消費しているのでそういう無茶もできるという事だ。


 廻留は移動しつつもその周辺に留まっていてほしい時に使う。買い物でちょっと出かけた先とかだ。私本の電波を追って自分の周辺を周遊するような設定もできるらしい。


「また、時間指定でどの位置に行くかなどの指定もできます」

 こっちは自分は飛行機とかで速く大きく移動する時に、ベースを先に移動させて移動先で待っていてもらう用。


 時間指定なら夜間は長野の避暑地を通り、朝に東京に戻ってくるなんて事も日常的にできる。

 最高時速100kmぐらい。



 降りるときは停留所を使う。停留所で持ち主が下りると、ベースは勝手に廻留モードになる。


 駐車は停車と違って車庫に入ってガッツリ止まる時。

 駐車できるのは大体有料の車庫だと思っていい。月極やコインパーキングみたいなものの他、夜間のみ駐車可、など、駐車場のポジションも色々だ。

 過去にマンションなどの集合住宅だった場所の多くがこの形態になっているらしい。

 大きさによっては連結車が入れないなどあるので、契約時はよく確認する事、と言われた。


「ここに子プリカを入れておくと入場時に自動精算してくれます。

 入り口で入庫が不可能な車両数を感知されれば自動的に弾かれますので、中に入ってから立ち往生という事は無いですよ」


「……えーと、この自動運転車ってもしかして他人が遠隔操作で操縦できるんですか?」

 話を聞くとできそうな気もする。めっちゃ悪用できそうだし不用心だ。


「遠隔操作と呼ばれるものは救急車やパトカーが強制的に連結する場合ですね。

 ですが、その機能を個人で悪用するのは難しいと思います。通報が入って車両連結が必要となると、該当管区中央から緊急出動の要請と責任者の承認、該当する緊急車両に対して出動命令、緊急車両搭乗者の身分証明という操作を経ないといけません」


 緊急出動は通報時に行われる。音山さん猫本さんが鈴木さんのベースに連結できたのも、鈴木さんの通報を受けたオペレーターから、その車両で向かうように指示されたからだ。


「定期健診から50日を超過すると通報扱いとなり、真っ先にベースに緊急車両が来ますのでご注意ください」

 以前聞いたブラック企業撲滅システムか。

 ベース内で倒れて50日過ぎてたら死んじゃってませんかね?と思ったけど、そうならないように定期メールに返事する事で生存確認するサービスがあるんだな……。


「他に外部の影響があるとすれば道路上のセンサーの断裂を感知した時や、前方に車両が停車している場合に緊急停車か別ルートへの移動を選択する時ぐらいでしょうか?

 災害時は危険が予測される範囲に居るとブザーが鳴り、避難勧告範囲が地図上に表示されますが、最終判断はご自身にゆだねられますね」

 何かそんな感じの戦争ゲームあった気がする。

「空爆とか核爆発とかも自己判断で回避ですか?」

「……もちろんそういうことになりますが最近はそういう事例は無いですね……洪水時などに、避難範囲を提示される事が多いです」

 何か恥かいた気がする。



 駐車場は停留所を兼ねている事がほとんどだけど、本当に駐車できるだけで乗り降りできない所もある。

 え?片手落ちじゃないですか?何に使うんですか?そんな場所。と、思ったが、そんな場所は車が動いてると寝れないという人や、料理や工作をしてる時に揺れると困るという人が主に利用しているそうだ。



「駐車時はこちらの車両の運転用の電源を切ってください。車両全体の電源は別系統で奥にあります」

 つまりこっちのレバーがエンジンキーで、あっちの奥にあるのがブレーカーね。



 これで大体の運転の説明は終了。次は中の設備の説明だ。


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