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12 異世界に一歩

 医師から診断結果を告げられている彼女は、ある日突然、異世界の日本に転移した一般市民の三反崎みそざき


 万が一にもこっちの世界に無い感染症を持ってるとか、向こうの世界で耐性を持てなかったこっちの世界の病気とかにかかるといけないからと言われ、転移初日に接触した三人と一緒にメガフロートにある病院に強制隔離入院。


 異世界の常識に何度もカルチャーショックを受けつつ、健康的に何事もなく30日経過したので今日、無事退院となる旨を医師から告げられているところである。


「退院おめでとうございます。健康上の問題はありません、特に健康や公衆衛生の上でリスクとなりそうな要因もありませんでした」

 一か月間経過を観察してくれた医師はにこやかにそう言った。


「ただ、入院当初、強いストレスの所見が見られたので、いきなり色々やろうとせず、環境が大きく変わったのを自覚して生活のリズムを安定させるところから始めてください」

 入院当初のストレス所見はそれ多分、元の世界のストレスです。



 彼女は感慨深くこの一か月の事を思い出していた。





―気付いてしまった。

 あの三人は異世界人が何か変な病気を持ってないか確認するためのモルモットとして一緒に放り込まれたんだって。


 でもそれを鈴木さん達に聞いてみたら

「そんな暗く深刻にとる事ないって~、万が一どっちかがそういう感染症持ってたとしても、ここ以上に安全なところないんだから寝てれば治るって~」

 楽天家の鈴木さんに笑いとばされ。


「申し訳ありません、気分がよろしくないのは分かるのですが防疫上そういう規則になっていまして」

 まじめに仕事しただけの音山さんに謝られ。


「ええ、そんな風に悩みがあったらいつでも言ってくださいね、慣れない所で不安なのは分かります」

 救急隊員兼看護師の猫本さんにカウンセリングを持ち掛けられ。


「完全にアウェーだもんね~精神的につらくもなるよ」

「はい、何せ世界が違いますからね」

「何か都市伝説でさ~、言葉が通じない文字化けしたような異世界で拘束されて脱出して~みたいな話あるよね。ほぼそのまんま今の状況だからね、普通不安にもなるよね」

 言われてみればそうなんですけど……まぁ、本人達が気にしてないならいいか……ていうかこっちにもあるの?その都市伝説。




「何かご質問はありますか?」

 医師が問いかけてくる。


「いいえ、体調も問題ありませんし、今後の、社会的に必要な手続きは教えて頂きました。

 何もなかったのに30日間お手数おかけしてすみませんでした」


「いえいえ、何事もないのが一番ですよ。大したことなかったって言って退院していただくための規則です。

 こちらも緊張感をもって訓練させていただいたようなものですから、お気になさらず」


 規則規則。元の世界と比べるとこの世界の人達はかなり順法精神に則って動いている。今後それを息苦しく感じる事もあるだろう。

 ただマニュアル人間という堅苦しく融通の利かないイメージとも違う感じがする。



―前にその事について聞いてみたら

「それ、マニュアル守った人はさ~、別に悪くなくない?使えないマニュアル放置してた人が悪くない?」

 ええー……マニュアル人間ってそういう問題かなこれ?

 マニュアルの現場裁量の不明瞭さや検索性の悪さは非難される世界らしい。



 医師に頭を下げる。医師も会釈を返した。

「ありがとうございました」

「手続きで大変になると思いますが、いきなり無理をしないようにしてくださいね」

 そうして医師に別れを告げ、私はこの世界に来た時の、自分の服を着て病室を後にしたのだ。



 病院から連絡橋までの無料送迎車を利用する。メガフロートと陸を結ぶ連絡橋のたもとにはいつもの三人が居た。


「では、私はここから通常業務に戻りますのでお別れになります。何かありましたらまた連絡してくださいね」

 ヘルメットを手にした猫本さんはここで離脱。救急車両に乗ってすぐにお仕事に戻るのだ。


「私は入国手続きが終わるまでお付き合いさせていただきますので、引き続きよろしくお願いします」

 音山さんは例のヘルメットをかぶってお仕事モード。パトカーに乗せて送ってくれるらしい。何から何までありがとうございます。


「ついてってい~い?」

 鈴木さんついてきてくるの?私は別にいいけど。いいのかなそういうの。


 ここは色々と元の世界とは違う世界だけど、多分きっとそんなに悪くない世界だ。


 こうして私は晴天の潮風の中を踏み出した。

 


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