日常で起きた転換点
はじめまして。与那です。
この度初投稿となりましてとても緊張しています。
初めてな上ネットの使い方も乏しいため読みづらいことがあるかもしれませんが暖かく見守っていただけると嬉しいです。
この作品はどのような評価であってもスタンスを変えるつもりはありません。ですが褒められると作者の更新頻度が高くなりますのでよろしくお願いします。
「ここに300万ある。お前、この小説を漫画にしろ。」
その言葉が僕と彼をつなげた、2人の世界の始まりだった。
2人でつくる創作漫画
現実が嫌いだ。テレビをつけたらスポーツ選手の脱税疑惑。元アイドルの不祥事。明るいニュースよりも暗いニュースで盛り上がりどこか誇らしげに語るコメンテーターの面々。
朝飯すら既に不味く感じ爽やかな朝からかけ離れた現実。外を出て通学しても満員電車に揺られ手元には携帯、新聞すら広げず隣の金髪からは見た目に似合わないバラードがイヤホンから音漏れしている。
通っている専門大学も大学受験に失敗し努力することなく入学。夢もへったくれもない。働けば、移動すれば金がかかるのに何もしていないニートは親の脛をかじっては生活保護として金をもらえる。
顔がいいだけで演技が下手でも売れる芸能人、才能が努力で補えるのならばこんな惨めに生きることは元からなかったはずだ。
そんな通学中のある日、僕は道端でとある男に呼び止められた。
「なあ、君。ちょっと俺に時間くれよ。」
僕はその男の声になぜか振り向き、足を止めた。
「君さ、そこの専門学生だよね。ちょっとそこのカフェに入って俺の話聞いてくれないかなあー。」
その男の顔ははっきり言えばモデル顔で首が長く整髪剤で整えたいかにもお洒落な人。そして若く見えた。怪しげな貧相でもなく毎日を幸せそうに生きているような男が僕になんのようがあるというのか。
それでも僕は、彼から目をそらすことはできなかった。なぜかはまあ、僕にもわからない。
「なんですか。」
そう一言呟くと、彼はニヤリとこちらに微笑み、
「まあ、そこのカフェにでも入ろうや。」
まあいいや、1日くらいサボろうと、僕には関係ない。そう思った僕は、その男とともに、少し高級なカフェに足を運んだ。
メニューを開くと単なるコーヒーが720円もすることに驚きを覚えつつ、男の奢りだと知ったあと少し背伸びをしてアメリカンコーヒーを注文した。男もそれに合わせて「僕もそれで。」と店員に言いポケットにあるタバコを取り出し火をつけ、僕の顔に当たらないよう横を向いて煙を吐いた。
「ねえ、名前なんて言うの?」
男は僕に問いかけた。最初にお前が名乗るべきだろ。というアニメによくある台詞は言わず、僕は名乗った。
「宇多 翼です。あなたは。」
僕は間髪いれずに男に聞いた。
「ウタ君ね。僕は千歳 瞬。22歳学生だよ。」
僕の読みは正しく、彼は若そうというよりも僕と2つしか離れておらずましてや学生。何の用だとさらに疑問が浮かんだ。
「いやー聞いてよウタちゃん。」
千歳と名乗る男は突然話を切り出してはそのまま続けた。
「僕さ、働きたくないんだよね。」
千歳の口調はとても軽く、そして初対面の僕になんとも言えない言葉を発した。
「それでさ、ウタちゃんは専門で絵とか勉強してない?」
店員がアメリカンコーヒーを2つテーブルに置くと男はブラックのままタバコの火を消し飲み始めた。
「まあ多少ですが、サイトでイラストを投稿したらしたことはあります。」
僕はミルクと砂糖をコーヒーにいれて会話を続けた。すると千歳の目が大きく開き前のめりになり少し興奮しながら僕に、
「そんな君に!いい話があるんだ!」
と話した。声が大きく周囲の目がこちらに向いた。僕はその興奮を抑えるようなジェスチャーをしたあと、
「ど、どうしたんですか千歳さん。」
とわかりやすく驚いてみせた。実際には本当に驚いたのだけれども。
千歳は手持ちのトートバッグを漁りだし僕の前にある物を机に乱暴に投げた。
それは福沢諭吉が丁寧に白い紙で止められた、言わば札束計3つ。
「ここに300万ある。お前、この小説を漫画にしろ。」
僕はその札束を見たあと、彼の顔を見上げることしかできなかった。