4.ナマのいい声って殺傷能力あるんだなー
「えーと。じゃあ、あなたも転生者で実は女子。しかもお母さんは異世界に召喚された日本人でお父さんは国一番の魔導師団長。ってことでおけ?」
目の前の少女が、ライムグリーンの髪を揺らし首を傾げる。
はい、結局話しましたよ。もちろん腐女子さんも転生者でした。
「それで、今ヒロインの出会いイベントを出歯g...見守ろうとしてました。ところでエリザベスさんは、腐女子なんですよね?それでも、ヒロインの助っ人キャラの役割をきちんと果たしてくださいよ!」
私はそこが心配だ。この腐女子さんが仕事してくれないと見れないイベントが結構あるのに。
そんな私の心配を悟ったのか、「だいじょーぶだいじょぶ」と言うように、ニコッと笑い親指を立てる。
「私は想像だけでも滾るから。あとこういうのってお決まりで、攻略対象の声がめっちゃいいじゃん。私、声優さんが好きでこの乙女ゲーム買ったんだから。きちんとイベントのセリフをナマで聞かなくちゃ損でしょ!あと、私のことはエリーって呼んでねエルっち!」
予想以上にフレンドリーな腐女子さんもといエリーは屈託なく笑った。さすが登場キャラ、結構可愛いな。そんなことを考えているとどこからか歌が聞こえた。
「ーー♪ーーーー♪」
私とエリーは顔を見合わせ、石碑から少しだけ顔を出す。
「あの子がヒロインのリリア・ディーボルトか。」
リリア・ディーボルト。ウエーブのかかった淡い金髪にエメラルドグリーンの瞳の小動物を思わせる可愛らしい少女だ。1年前、巨大な魔力を発現させてディーボルト男爵の養子となった。普通は4〜10歳の間に発現させるため、この少女は何かと異例であると言える。
「やっぱりヒロイン補正すごいわね〜。女の声優さんには興味なかったけど、リアルで聞くと萌えるわ。これなら攻略対象組も楽しみね!」
嬉しさが滲む声を聞きながら「ああ」と答える。その間も2人の視線は少女を見ていた。予定通りなら、このあとメインヒーローが話しかけてくるはず。じっと黙っているとヒロインがなにかに気づいたように振り返る。
「素敵な歌ですね。花びらがついていますよ。...はい取れた。」
ヒロインの頭からそっと花びらを取り優しそうに微笑むのは、金髪碧眼の王子様だった。そう、メインヒーローはこの国の王子様だ。
やべえ、めっちゃイケメンだ!声が私の大好きな声優さんだ!
「キャー!やばい、リアルってやばい!聞きましたか今の...って鼻血出てますよ!」
焦りながら私にハンカチを差し出すエリー。ありがとう。そしてやばい。腰が砕けそう。ナマのいい声って殺傷能力あるんだなー。そう思いながら私の意識はそこで途切れた。