3.現れたのはヒロインじゃなくて腐女子でした
さあ、やって来ました魔法学園!
今日は入学式。私は朝早くから体育館前の石碑の後ろにいた。ここでヒロインの初日の出会いイベントがおこるので、しっかりと見届けられるように隠れていた。
うん、出歯亀じゃないよ!常習犯でも変質者でもないから。ただ恋を応援してるだけだから!応援し隊だから!
そんなことを考えていると、木の下に1人の女子生徒が現れた。
「ヒロインちゃんの出会いイベントはーここか!いや〜お助けキャラとしてヒロインちゃんのことしっかり見とかないと。けど、どうせなら生徒会長(男)と気の強い後輩(男)の絡みが見たいな〜。いやーイケメン大量バンザイ!想像が滾るぜ!」
おーっと?現れたのはヒロインじゃなくて腐女子でした。っていうかあの子って、ヒロインの助っ人キャラじゃないですか!
「さあさあ、出歯亀よろしく、観察でもしましょうか。」
やばい、こっちに来たぁ!くそう、こんな時は気付かないふりをするに限る。...しかし現実は甘くなかった。
腐女子さんは私と同じ石碑の後ろに来ると私に気づいて、げっ!っと声をあげた。しかし声をあげられたからには、相手もこちらも気付かないふりではいけない。私は仕方なく声のした方を振り向く。
「えーっと、私は新入生のエリザベス・カライルと申します。」
エリザベス・カライル。ライトブルーの瞳で、ライムグリーンの髪をまとめて三つ編みし右肩に流している。確かゲームでは貴族ながら、明るい性格でヒロインの恋を応援する助っ人キャラだ。さっきみたいに腐っている人じゃなかったはず。
「わ...僕はエル・ブロッサム。気軽にエルでいいよ。僕も新入生なんだ。よろしくね。あとさっきの独り言聞いてらから猫被らなくてもいいよ。」
にっこり微笑み付きで挨拶を返してやった。うっかり私って言いかけた。もう男装っていう設定忘れてたよ。セーフ、だよね?あと、猫急に被られると怖い。
「やっぱり聞かれてたぁ...っていうかイケメンね!あなたモブじゃないでしょ!もしかして転生者?」
ぶふっ!あっ、リアルには吹き出してませんよ。安心してください。...じゃなくて!イケメンかで決めちゃうわけ!?それとも乙女の、いや腐女子の勘なのか?ていうか一気に口調砕けたねえ。前世の話かー。まあ、話しても大丈夫かなー?