1.乙女ゲームの世界に転生とかあるあるすぎる!
私はエリエル・ブロッサム。ブロッサム伯爵家の一人娘だ。
私の母は異世界召喚された日本人。父は国一番の魔導師団長。娘の私は前世の記憶持ち。
...うん、うちの家族って少し、というか結構変わってるよね。
前世の記憶が戻ったのは8歳の頃。パレードで第二王子様を見た時だ。同い年の第二王子は結構可愛かった。将来イケメン系。普通の人はそんなことを思うだろうが、私は違った。一目見て、「完璧超人だったのになんであそこでヤンデレ化したんだよ!ヒロイン束縛とか超絶萌えるわ。」と思った。
ヤンデレって何?ヒロイン?束縛?
...そうだ思い出した。この世界は乙女ゲームの世界だ。乙女ゲームの世界に転生とかあるあるなんですけど!(2次元に限る)
「私、前世の記憶が戻った。この世界って乙女ゲームの『魔法学園恋物語〜君じゃなきゃ〜』ですよね。」
母さんは異世界召喚でこっちに来たため、黒髪に焦茶の瞳というこの世界では珍しい色をしている。けれど私の前世の世界、日本は同じ色だったから母さんも日本人なのだろうか?というかそもそも乙女ゲームを知っているか…
「ええ、そうよ。ヒロインが攻略対象の好感度を上げていくごとに、攻略対象の性格が変わってきてしまうあの乙女ゲームよ。」
おう。きちんと知ってんだ。プレイしてたっぽいね。
「ちなみに私の推しキャラは第二王子です。ヒロインへの愛が過ぎて束縛。最高。」
私は母に向けて親指をぐっと立てた。
「私の推しは隠しキャラの団長よ。ストーリーもいいけど顔と声が好み。」
私と母は視線を合わせると、大きく頷いて握手をした。
「ところで、エリ。あなたの入学する学年はヒロインの同じよ。」
「はい。なのでヒロイン達の恋愛を、モブとして見ていたいと思います。」
「あなたそういうのを出歯亀と...いえ、多分私も同じ事をしただろうから何も言わないわ。」
少し遠くを見て母が言う。
この世界には魔法がある。魔力を持つものは全員、魔法学園に入学しなければならない。平民もいることにはいるんだが、貴族が大半を占めている。そのため平民は十分の一ぐらいなので差別はあるらしい。作中でも身分の低いヒロインは攻略対象に近づくのも大変そうだ。
「なんなら、男装すればいいんじゃない?」
母はさも当然とばかりに言う。最初は否定しようと思ったもののよく考えたら、男装は非常に便利だ。攻略対象に近づくのは女子には難しい。それに私の強い魔力だと言いよる虫が多そうだったので男装は丁度いい。しかも前世の私はコスプレもしていた。役になりきれる自信がある。
「私は日本ではコスプレは作る専だったから、私服やサラシも任せてね〜」
お母様!超絶頼りになるわ。