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9話 10年越しの謝罪

歩道に出てみたはいいが、なんて話そうか…



僕は勢い良くドアを開け太宰家の庭を抜けると

直ぐ(すぐ)に歩道があるので夢の手を握りながら

歩道へ向かった。なぜ僕が太宰家から見えない

ところへ行くかというと…(夢の母さん)佳子さん

なら自宅で僕たちを見張っていると確信している

からだ。佳子さんはあういう性格である。

夢から体験談などを聞いて満足するはずがない。

幼い頃の僕は毎回佳子さんにからかわれていた

から本能で歩道まで逃げて来たのかもしれない。



無我夢中で夢と走ったので、息切れ

してしまった。最近運動してないからな…

今は歩道を夢と歩いている。2人で夜空の下歩道を歩く実にロマンチックだ!こういうシチュを

ラノベに書こうかな。僕は緊張をほぐすようにそんなことを考えてみた。今の現状はというと

なぜか手は繋いだままである。

正直僕は手を離してこの

恥ずかしい感情を消し去りたい。だがしかし、

手を離すには会話をしなければならない。

僕は夢と10年も会っていない上にコミュ症が

付きまとって来るので話したくても話せない、

もどかしい気持ちになった。早くなんとか

この間の糸口になる話題はなんかないかな?

なんかないかな?なんかないかな?考えろ!

考えろ!考えろ!考えろ!考えろ!考えろ!!!

僕は俯き(うつむき)ながら唸って(うなって)いた。

多分それが聞こえたのだろう。夢が笑った。

僕は彼女が笑ったことに気づき彼女の方を見た。

彼女の笑顔は本当に可愛かった。まるでラノベの

異世界に出てくるような女の子みたいだった。

僕は彼女の笑顔に惹きつけられたのかもしれない

。まだあどけない顔だが雰囲気は大人の女性の

ようで僕の心音は高まった。夢が笑顔になった

ことでさっきまで重かった空気が和らいだように

感じた。お互いが会話を始めるまでに然程(さほど)

時間はかからなかった。最初に口を開いたのは、

夢の方だった。

「翔が顔を強張らせながら唸ってるんだもの、

面白くてつい笑っちゃた」

「顔なんか強張ってないよ!平常心だったよ」

「うっふふふふふふ」

「な、な、何がおかしいんだよ!」

「だって顔真っ赤にしながら言い繕ってるんだ

もん、笑わない方がおかしいよふふふ」

僕はそれを聞いて耳まで真っ赤になった。

僕は夢にいいように言われるのが我慢できなく

なり、10年前の恥ずかしいことを言って

からかってやろうと思った。

「ゆ、ゆ、夢ってさ昔僕にお嫁さんにして〜

って言ったこと覚えてる?」

夢はそれを聞いて、体がピクリと反応し

顔が徐々に朱色に染まってゆく。

「そ、そ、それがどうかしたの?」

夢の声と反応を見た感じでは動揺している

ようだ。動揺してないフリをしている

ようだがさすがの僕でもわかる。僕はそんな夢を

見てイタズラ心が止まらなくなった。

「夢大事な話があるんだ」

「な、な、なにかな。動揺なんてしてないからね」

「僕は夢と結婚を前提にお付き合いしたいんだ!

!!!」勿論(もちろん)本心ではない、

夢をからかってどんな反応するのか確かめてみたかったのだ。それを聞いた夢は顔を真っ赤に

して俯きながら自分の両手で自分の体を抱きしめていてその場でしゃがんだ。僕はそんな夢を

見て満足し僕は夢と同じ視点に立ち嘘をバラす。

「嘘だよ。夢にイタズラしてみたかっただけなんだ」

僕はそう言ってしゃがんでいる夢の頭を撫でた。

ナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデ


「翔と付き合ってみたかったな…」


「ん?なんだ?夢もう一回言ってくれないか?

声が小さくて良く聞こえなかった」

「言いたくない!ふん!」

どうやら夢を怒らせてしまったらしい。

怒った夢はこれはこれで可愛いなあ。

なかなか良い雰囲気になってきたので、

夢に大事な話をしようと思った。

なんだか少し前までの自分が可笑しく(おか)思えた。

夢にそこまで緊張することなんてなかった

じゃないか、この状況なら良い返答を貰えるはずだ

「夢!!大事な話がある、聞いてくれないか?」

「またからかうの?やめてよ恥ずかしくて翔の顔が

見れなくなっちゃうよ…」

そんな言い方されるとなんだか興奮する。

とりあえず弁解しなければ。

「ち、ち、違う!本当に大事な話なんだって!」

僕の真剣な弁解が通じたのか夢も真剣な表情で

こちらを見てくれた。まだ少し顔が赤いが指摘

しないでおこう。さすがに可哀想だ。

「大事な話って何?」

「夢、ごめんな。10年前に夢を傷つけたことは、

悔やんでも悔やみきれない。僕があんなことを

言わなければ、引っ越した後でも連絡が取れたのに

10年間をこんな思いで過ごすことは無かった。

夢ごめん。今更かもしれない、僕は夢から

逃げていた、謝ることから逃げていた、自分の

罪から逃げていた、罪を償うことからも逃げた。

僕の10年間は逃げて逃げて逃げて、逃げてばかりの

繰り返しだ。だけど、僕は止めるよ。こんな自分は

もううんざりだから僕は夢に謝ったら逃げない

人間になるよ。夢…悪口言ってごめんな。

別に許してもらわなくても良い、僕はそれだけの

ことをしたと思っている。」

「私もね、お互いに辛かったと思う、売り言葉に

買い言葉だったからあんなに酷くなっちゃったんだと思う。私はね、翔に会えない日々が翔の

いない日々が翔と本の感想を言えない日々が…

翔がいなくなるだけで私の全てが変わった…

だからね私は今度こそ翔を一生離さない!

離れさせない!どんなことをしてでも繋ぎとめる!

私は本気だよ。もうどこにも行かないで!」

夢は僕に抱きついてきた。女の子特有の甘い匂いに

軽く刺激されてしまった。服の上からでもわかる

柔らかい二つの谷が当たっていた。

僕はなんてことを考えているんだこんな真剣な

雰囲気の中シャキッとしろ!自分を鼓舞してなんとか

理性を取り戻した。

「夢は僕を許してくれるの?」

「いいよ。わたしは許す。これからの生活は

10年間を取り戻すような楽しい日々にしようね」

僕たちは星空の下でお互いを逃がさないように、

お互いを求めるようにさらに抱きしめ合ったの

だった…











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