話を聞く難しさ
相手の話を聞くのは、難しい。
今日、ディスカッションをする機会があった。その中に、頭の回転が速い学生がいた。それは素晴らしい能力で、その人の話もテンポが良く、聞いてみようという気持ちにしてくれる。ただ、その回転の早さを相手にも強いてしまう場合があった。
その学生に対して意見を言う人がいた。そのとき、相手がその意見を言い終わる前に、その学生は反論を始めてしまった。頭の回転が速いので、相手が何を言おうとしているのかわかってしまうのだ。しかし、それは相手の話を全部聞く前に自分で想定し、答え始めてしまっているにすぎない。
それを端から見たら、この人に何を言っても聞いてくれないように見えてしまう。もちろん、本人はそういうつもりはない。
小学校の時、先生の話が終わる前に立ち上がり、帰る支度をする同級生もそうだろう。もう、次にしたいこと、しようと思っていることが頭を駆け巡っている。それ自体、悪いことではないし、常に先を見ているという意味では計画性を感じさせる。しかし、会話においてそれはマイナスになる。
私は、哲学の学生である。哲学の学生に比較的目立つのは、反論にこだわるところにある。こんなことを言うと、「それ以外にやれることがあるのか」と言われそうだ。確かに、哲学の世界、あるいは学問の世界であれば、反論や批判で相手に自分の意見を届けることができるかもしれない。しかし、一般的な場面、そこまで論理に重きを置いていない人と接する場面であれば、単に論理的に反論されるだけでは、その人の考えを変えられない(哲学の世界でも、ひょっとしたらそうではないだろうか)。
「批判をしても、その人の自尊心を傷つけるだけで、相手の考えは変わらない」という趣旨の話を読んだことがある。僕は、その主張に同意する。
反論ではなく、相手の考えを変える「説得」をいかに行えるか。そのために、どうしたらいいのか。少なくとも、相手の話を聞く(いや、相手に話させる?)能力が、関連していると思う。