イリヤ編5 想い
どうやら、夢で思ったことを口走っていたらしい。
勇者は真っ赤になった。
「どうやら、お兄ちゃんにかけた魅了の魔法が効いてきたのかな?」
「魅了の魔法?」
「お兄ちゃんに小さい頃、かけたの。でも効かなくて……」
「え、いつの間にそんな魔法を……」
「この魔法はね、相手のことを意識してないと効かないんだけど、いったん意識すると魅了状態になっちゃってメロメロしちゃうの」
「……」
「お兄ちゃん、小さい頃、唯一私を見てくれない男の人だったんだもん。意地でも振り向かせてやろうって躍起になってたの。でもそのうち、私の方が虜になっちゃて……」
「イリヤ」
「はい」
緊迫した空気が漂う。
「結婚してください!!」
「え」
「僕と一緒にこの世界で暮らそう!!」
「え―――!!」
わーぱちぱちぱち!!
「な、何で?どうして急に……お兄ちゃん、ごめんね。魔法解くね」
イリヤが何か言葉を呟いた。
「どう?」
「結婚」
勇者の気持ちは変わらなかった。
ある晴れた日。
勇者が松葉づえをつきながら屋上に上がって、空を見上げていたとき。
「お兄ちゃん」
「イリヤ」
先客だったイリヤが勇者と同じように空を見上げた。
「この空は、僕たちがいた世界の空とどこが違うんだろう」
「……きっと、どこも違わない。どんな空の下でも私の気持ちは同じ」
「イリヤ……」
「お兄ちゃんの気持ちは?ここじゃないどこかに行ったら変わってしまう?」
「何処にいたって同じさ。僕はイリヤを愛してる。その気持ちは変わらない」
二人は初めて兄妹の一線を越えて長い口づけを交わした。
空はどこまでも広がっていた。
その空を鳥たちが飛んで行った。
「お兄ちゃんはどこまでも飛べるよ。どんな世界にいてもそれは変わらないって信じてるから」
「ああ、でも僕はイリヤがいないと飛べないんだ。だから……」
勇者はイリヤの手を握って真剣な表情で言った。
「もう二度とイリヤを離さない」
「お兄ちゃん……」
そうして二人はまついばむ様な口づけを交わした。
カシャっ
そのとき奇怪な音がした。
「ふぉっふぉっふぉっ。ラブシーンゲットじゃ」
「恩田さん!!」
勇者は目を白黒させていた。
「没収!!」
イリヤが恩田さんからカメラを奪い取る。
あの音はカメラのシャッターの音だったのだ。
「まぁ、記念に、の」
恩田さんはそう言って、ふごふご言いながら去っていった。
後には勇者とイリヤとカメラが残された。
「あ、あのお兄ちゃん」
「……?」
「何か言って」
「イリヤの今日のパンツは何色?」
「変態!!」
勇者はイリヤにアッパーカットされ地面とキスした。
「水玉……」
勇者の視線はバッチリイリヤのパンツを捉えていた。
「お兄ちゃんのバカ!!」
勇者の頭がイリヤに踏まれてコンクリートの地面にめり込んだ。
「ぐふっ!快感……」
勇者は新たな何かに目覚めた!!
変態度が5上がった。
「え!?そんな数値あったの!?」
勇者たちは病院を退院してから、二人で住み始めた。
戸籍はイリヤの魔法で何とか誤魔化した。
イリヤは新居である部屋を眺めていた。
「イリヤ……?」
勇者の呼びかけでイリヤははっと我に返った。
「何を見て……?」
イリヤの視線の先には二つの枕が並んだダブルベッドがあった。
「あ、ははは。私荷解きしてくる」
勇者の顔もイリヤの顔も真っ赤だった。
それから、勇者は工場で働き、イリヤは二人の子を産んだ。
出産に立ち会った勇者は感動でボロボロと泣いていた。




