イリヤ編3 朱色の日記
そこは確かに勇者が入院していた精神科の跡地だった。
「瓦礫の山ですが私も手伝いましょうか?」
「いいえ、僕が探します。大切なものですから。自分で見つけたいんです」
勇者は内心何でこんなにも僕は必死なんだろう、と思った。
大切な妹だから?
また、お兄ちゃんって呼ばれたいから?
そうだ、僕はイリヤに笑っていてほしい。
イリヤの笑顔を見るために絶対見つけるんだ!!
勇者は瓦礫の山を素手で掘り始めた。
地面に這い蹲って、砂塵に落ちた一粒の米を見つけるときのように辛抱強く粘った。
手はあかぎれて、所々出血していた。
それでも勇者は探すのを止めなかった。
救急隊の人はやきもきしているようだった。
その時ポツリと雨が降って来た。
大雨になるだろうからと救急隊の人は勇者を車に入れようとした。
しかし、勇者は抵抗した。
もし、雨に濡れたら字がふやけてしまうかもしれない。紙が破れるかもしれない。
そんなことが起きたらイリヤは一生あのまま―――。
「うわあああああああ!!」
勇者は雄たけびを上げて瓦礫にしがみついた。
その時視界に朱が混じったような気がした。
自分の右足に、鈍い痛みが走った。
雨で瓦礫が滑って勇者の足に塊が落ちてきたのだ。
骨が折れたかもしれない。
しかし血は出ていない。
じゃあ、あの朱は……?
足元を見るとそこには日記帳が落ちていた。
赤い日記帳だ。
「見つけた……!!」
勇者はそれを胸に抱くと痛みと疲労で意識を失った。




