亜衣編2亜衣の秘密
勇者は、亜衣ちゃんが落ち着いてから様子を見に行こうと思っていた。今朝のあの叔父との関係を聞こうと思ってだ。
しかし、亜衣ちゃんの様子はひどかった。
勇者が来ても反応がなく、目も焦点があっていない。ひとりでぶつぶつと何ごとかつぶやいている。今朝の、叔父の様子と一緒だ。嫌な予感がして、勇者は亜衣ちゃんにこっそり詫びて床頭台の引き出しを開けた。すると、そこには案の定、あの白い紙袋が入っていた。それもたくさん。
「なんだ、これ」
勇者は中を調べた。
「粉……?」
怪しいにおいを感じて勇者はそれを看護師に渡すことにした。
「これ、亜衣ちゃんが持ってたんですが……」
看護師はその大量の白い紙袋に目を見開いて袋の中の匂いを嗅いだ。
「シンナーだわ」
「シンナー?」
「大変!麻薬の一種よ!!どうして亜衣ちゃんが?」
「亜衣ちゃんの叔父さんが持ってきたのかと……」
「え?」
「僕、見たんです。亜衣ちゃんの叔父さんが、ガタイのいい看護師さんに開放病棟から出るときに渡していたのを……」
「そうね、だったら朝の早い時間にこの病棟に入ってこれたのも頷けるし。……あの二人の今までのおかしな態度も説明できるわ。ありがとう!亜衣ちゃんの様子を見に行ってみるわね」
そう言うと看護師はほかの看護師と連絡を取りながら亜衣ちゃんの部屋へと入っていった。
ここは看護師に任せた方がよさそうだな。
そう判断して勇者は陰から見守ることにした。
「……帰りたい……帰りたいよ……」
部屋の中から亜衣ちゃんの声が聞こえてきて勇者は足を止めた。
やっぱり、放っておくことなんかできない!!
「どうして?さっきは叔父さんのところに帰りたくないって言ってたじゃあない」
看護師の声が聞こえる。病室の中に入る。
「マ、……マ、帰りたい」
「しっかりするのよ!!」
亜衣ちゃんを見ると目の光を失っていた。
「なるほど、そういうわけですか」
そこにずっと隣のベッドにいたイリヤが神妙に頷いた。
「この子。麻薬漬けにして何もかも判らなくなった状態で家に帰らそうとしています」
「まあ!!」
イリヤの推理に看護師が口に手を当てる。イリヤは淡々と説明する。
「この子の帰りたいときは母親と過ごした時間であって、叔父さんの家ではないです」
「そうだったの……今まで叔父さんが来た後は帰りたいって言ってたけど違ったのね。……まずは、薬を抜かないと……後、警察に連絡を……」
叔父さんの悪事が発覚したことで病院全体があわただしくなった。
もちろん、あのガタイのいい看護師も、勇者の告げ口で警察に連行されていた。
亜衣ちゃんは、暴れるといけないのでベッドに手足を縛り付けられていた。
亜衣ちゃんの目はうつろな状態のままだった。




