菜花編4証明
私はその友達が今も私を恨んでいるのではないかと恐ろしくなって。
家族が一気に亡くなったのが悲しくて。
自分一人残されたようで怖くて寂しくて。
ある日異変は起こった。
私の友人の一人がいなくなってしまった。
それから、毎日、一人ひとりいなくなっていった。
必ずその前に夢を見た。
知っている、誰か大切な人が消えていく夢……。
朝、跳ね起きた上半身に冷たく張り付く汗の感触にぞっとする。私は怖かった。
クラスメイトが誰もいない空間に向かって喋っている。
そこに誰がいるの?誰と喋っているの?
私は怖くて聞けなかった。
そのうち、教室には私だけになってしまった。
皆、どうして学校に来ないの?
今日月曜日だよ。
それから、私は学校に登校しなくなった。
私は次々と大切な人たちのことを忘れていった。それはきっと、置いて行かれるのが恐いから、自分を守るための防衛機能だと思う。でも私はこれから、置いて行かれるのが恐いとは思わない。今を精いっぱい生きている人たちのことを忘れるのは嫌。私のことを受け止めてくれたシュナイゼルに会えなくなるのもいや!!
逃げたくない!力を貸して!!シュナイゼル……ッ!!」
その言葉は勇者の心を震わせた。
勇者は菜花ちゃんの手をぎゅっと握った。
お風呂から上がり、勇者は自分の病室に菜花ちゃんの手を引っ張って招き入れた。
そして、ペンを持ち、紙に気持ちを綴る。
菜花ちゃん。実は僕この世界の人じゃないんだ。
異世界からやって来て、最初はこの病院のこともなんだこの、変な宿屋は、って思っていて。
いろんな人にいっぱい迷惑をかけて、でもそんな中で菜花ちゃんは僕に気さくに話しかけてくれて嬉しかった。
例え、菜花ちゃんが僕のことが見えなくても僕はちゃんと菜花ちゃんのことが見えてるから。
不安に思わなくてもいい。
いつもそばにいるから。
例え僕が先に死んでも見守っているから。
だからそんなに、死に怯えないで。
先に死なれるのは悲しいけど、菜花ちゃんをかばったお友達の気持ちも考えてあげて。
きっとそれは、あたたかなものだから。
思いやりに溢れているから。
だから、もう自分を、許してあげて。
友達が君を思いやったように君も自分を労わってあげて。
自分を大切にして。
友達の分も今を生きて!!
その勇者の言葉を菜花ちゃんは目で追っていく。
次第に瞳から熱いものが流れた。
「私……生きててもいい?」
菜花ちゃんは知らず知らずのうちに自分に罰を与えていたのだ。
そうやってすべて忘れて廃人になろうとしていたのだ。
生きながらに、心は死のうとしていたのだ。
「……見つけた」
菜花ちゃんは勇者と視線を合わせて宝物を発見したような子供のように呟いた。
「おかえり」
勇者は、菜花ちゃんを抱きしめて髪の毛にキスを落とした。
まだ菜花ちゃんには勇者しか見えていないようだった。




