僕、勇者です。
大分前に書いたものを改稿して投稿させてもらいました!!
思いっきりギャグに恋愛要素が少し入っているという感じです。
ヒロインは三人いるのですがそれぞれのエンディングを最後に用意しています。
ご自由にお楽しみください!!
最初のほうにギャグを詰めて最後にシリアスを詰めました。
数がある割に結構サクッと読めるのでお気軽にお読みください。よろしくお願いします!!
「違う!だから違うってば!」
しんとした病棟に響き渡る大きな声。
「何が違うんですか、そんな格好して。本当の剣なら銃刀法違反よ」
「だから、僕の剣を返して!」
白いナース服に身を包んだ看護師さんにお話の中に出てくる勇者様みたいな格好をした男が車いすに座らされずるずると足を引きづってエレベーターに乗せられる。
それは今日の昼下がりのことだった。
有名な病院で、外来、入院病棟もある志野村精神科医に奇妙な男が現れた。
「え?今なんて?」
受付の人が頭にはてなマークを浮かべて聞いてくる。
「だから、ここ、宿屋ですか?」
「……」
どこからどう見ても勇者のコスプレにしか見えない異国風の服を身にまとった男が受け付けのお姉さんに尋ねる。
「いやあ、それにしてもびっくりしましたよ。ダンジョンから帰ってくるとこんなに町が発展してるんだもん」
「はぁ…」
「あ、これ20イヤーです。一晩泊めてください」
「え…っと、少々お待ちください…」
そして、しばらく待って連れてこられたのが診察室。
「さあ、特別に院長先生が見てくれるって言ってらっしゃるから中に入って?」
優しそうな看護師さんが勇者の手を取って中に導く。
「え?こんなに小さいの?部屋。まあ眠れればなんでもいいけど」
そして、診察が始まった。
「初めまして。院長の志野村です。どうぞお掛けになってください」
院長はそう言って自分と向かいの椅子を勧める。
「え、このおっさん誰?相部屋?聞いてないよ。いくら20イヤーだからってひどくない?それにベッドどこ?」
院長はそんな勇者の発言にぽかんとする。
看護師が院長に受付であった事情を説明する。院長は成る程と、頷いた。
「あなたはどこから来ましたか?お名前は?」
院長が穏やかに聞く。
「え?僕?僕はシュナイゼル・リーン。職業は勇者。今は、イヤー稼ぎに東の洞くつで魔物と闘ってた帰り。だから疲れてるの。早く寝かせて?」
「寝るのはいいですが、貴方、どこにお住まいで?」
「え?アバズレ村だけど。今朝じいちゃんに行ってきまーすって挨拶して、ダンジョンで魔物をばっさばっさと倒して……気が付いたらここでした。ねえ?何でそんなこと訊くの?なんか僕悪いことした?」
「貴方……アバズレってどういう意味だか分かります?」
院長がすごむと、勇者が椅子に正座してプルプルと、震え出した。
「ひいいいっ!!怖いよ、僕ホントは弱いんだ!いじめないで!!」
これは久しぶりに大物が来たと、院長と看護師はそろってため息をついた。勇者は統合失調症と判断され、閉鎖病棟に入院となった。勇者を診察室から出そうとすると勇者はいきなり抵抗を始めた。
「ちょとイヤー払ってるのに部屋から追い出すなんてひどくない?!おっさんと一緒でもいいから僕、この部屋で寝るよ」
看護師は問答無用で車いすに無理やり勇者を乗せる。
「うわ、なにこのイス。動く!動くよ!」
はしゃぐ勇者。看護師はその腰から剣を取り上げる。
「あ、返してよ、僕の剣。じいちゃんの形見なんだ!」
「これ、レプリカですか?いくらレプリカとはいえ刃物は預からせていただきます」
「違うよ、本物だよ!」
「嘘おっしゃい」
「違う!だから違うんだってば!」
しんとした病棟に響き渡る大きな声。
「何が違うんですか、そんな格好して。本当の剣なら銃刀法違反よ」
「だから、僕の剣を返して!」
白いナース服に身を包んだ看護師さんにお話の中に出てくる勇者様みたいな格好をした男が車いすに座らされずるずると足を引きづってエレベーターに乗せられる。
「うわ、何この狭い部屋!怖いよ!僕閉所恐怖症なんだ!」
「はいはい」
看護師さんはなれたものだ。
ボタンを押してドアを閉める。
「いやああああああああ!!何この閉鎖サークルッッ!!!」
「後で、保護者の方の電話番号おしえてくださいね」
「ひいいぃぃぃいぃいいぃい……?それ、おいしいの?」
エレベーターが急浮上する。
「うわわわわわ、何々?!変な感じ!」
やがて、閉鎖病棟の前に着く。
ドアが開くと勇者は感嘆を上げた。
「すごいや!さっきと場所が違う!おばさん、魔法使いだったんだね!」
「……」
閉鎖病棟のインターホンを押すと中の看護師さんがドアの鍵を開けてくれる。
「まあ、凄いのが来たね」
「かなりの重傷患者です。気を付けてあげてください」
「うわあ、ここ酒場?宿屋の中に酒場があるなんてすごいね!」
そのままドアの鍵を閉めて外来の看護師さんと別れる。
「ベッドに案内しますね」
「ありがとう。やっと寝られる」
勇者はベッドに着くなり自分から車いすを下りて横になり、高いびきを掻き始めた。
さて、この勇者だが、本当に異世界から来た本物である。ダンジョン探索ののち何かのマジックツールに触れてしまったのだろう。そうとは知らず、周りは勇者を精神病扱い。勇者は勇者で普通に事の重大さに気づいていない。はたして勇者の運命は?変える方法はあるのか?勇者の精神病棟での生活が幕を上げようとしています!
いかがでしたでしょうか?
読んでいただいて有難うございます!!
まだまだ続きますのでよろしくお願いします!!