初恋はきっと叶わない
開いたアルバムの中
僕の右隣には
いつだって君が笑っていた
楽しそうに 朗らかに
堂々とピースサインをして写る自分が
今はただ眩しかった
きっと誰にでも訪れる複雑な年頃
囃されるのが嫌で自然と離れた距離
気付けば目で追っていた
目が合えば君は笑って
僕は慌てて視線を逸らして
一方的に突き放す僕に向けられるその笑顔は
小さな頃のそれと変わらない、懐っこい表情
知らない内に甘えていた
君は分かってくれていると
僕は手を繋いだままの気でいた
あの頃と何も変わらないつもりで
少しずつ学校に来なくなっても
僕の目は君を探していた
傍にあったはずの温もりが
いつの間にか消えてしまって
初めてそれが頼りないものだったと知った
迷って迷ってようやく会いに行った僕に
君は何も変わらない笑顔をくれた
だけど、真っ白な病室で見るその姿は
細く細く今にもかすんでしまいそうで
僕は笑い返すことも、目を逸らすこともできないまま
ぎこちなく声をかけた
怖かった
次その笑顔を見たら
泣いてしまいそうで
君に恰好悪いところを見られたくなくて
僕は君の帰りを待つことしかできなかった
夜更けに鳴り響いた電話のベル
蛍光灯に照らされたその顔は眠っているようで
だけど触れた手は、どうしようもなく冷たかった
隣にいるのが当たり前で
くだらない意地を張って
大切なことを1つも伝えられないまま
心細かったはずの最後に傍にいてやれもせずに
全部手遅れになって泣き崩れる自分が
情けなくて 許せなくて 嗚咽が止まらない
惨めに泣いたってよかった
泣いて、謝って
ずっと大好きだったって
これからも傍にいてほしいって
死ぬなんて嘘だろって
傍にいて、手を離さなければよかった
どうしてそれができなかったんだろう
どうしてそんな事も
どうして。
心に悔恨の穴が開いたまま季節を通り過ぎた頃
郵便で届いた1通の手紙
懐かしい見慣れた文字で書かれた言葉と
古びた写真
堂々とピースサインをする自分と、隣で笑っている君
「今までありがとう。大好きだよ」
反則すぎるその告白を
確かに繋いでいた温もりを
僕は生涯忘れない。