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02.現状

 入り口入ってすぐのリビングみたいな大広間に、シドルツさん、ジェイ、クルフと一緒に戻ってきた。

 なんかさっきより明かりの数が増えていて、本当に普通の家みたいだ。

 今改めてこの広間を見渡すと、リビングというよりダイニングだ。

 一つのテーブルに対して椅子が4つ備わっており、それをまとめて1セットと見て、サイコロの5の目のような感じで5セット広間に並べられている。

 ここで食事しようとしても、普通にみんなでできそうだ。

 それでもっと驚くべきことがひとつ。戻ってきたのはいいけど、人が多すぎる。10人なんて軽く超えているレベルで人がわらわらいる。


 俺の聞いたところでは、このユークリンド遺跡は最近になって2層を超えた人が出てきたということで、それまでは敵が強すぎて奥に進める人間なんてそうはいなかったという話だ。

 リスクに見合ったリターンが少ないので、そもそも挑戦する人自体が少なかったということもあって、あまり攻略は進んでいなかったようだ。

 それが最近になって内部の情報も広まり、対策の仕方も出始めてきてからは更に奥に進めるようになり、なおかつ珍しいアイテムが転がっていたりするっていう噂が広がった。

 その噂が広まってから、俺も含めてこうして腕に覚えのある人間は一攫千金を夢見てここに挑戦し始めた……という流れだな。


そういう流れになっているのは分かるんだが、それにしてもここまでたどり着ける人がこんなに……しかも同じタイミングでいるというのは少し驚いた。

 クルフもジェイもさすがにこの人数の多さには驚きを隠せないようだった。


「多いな……」

「何人か人がいるとは思ってはいたけど、こんなにいたんだな」

「迷って辿り着いたけど、戻れなくなったから~って人とか、それならいっそ安全そうなここで休憩してしまおうって感じで、何日かここで過ごしていた奴もいるみたいよ」


 クルフはこの人数の多さの理由を多少なりとも知っているようで、そう説明しくる。

 確かにこの中は安全そうではあったし、俺もここで休憩していこうかなんて思ってたけれども、そう思った人がこんなにいたのか?

 それまで誰一人として出会わなかったけれども、そんな俺は異端なのか?


 クルフはジェイもシドルツさんも既に知り合い同士だったみたいだけれども、もしかして他の奴もそれぞれ知り合い同士ばかりで、俺だけノケモノなんて状態になっているんじゃ……。

 なんて少し不安に感じたので、それとなくジェイに聞いてみる事にした。


「なぁ、ジェイはクルフとシドルツさん以外にこの中に知り合いとかいたりするのか……?」

「いんや、いないな。俺もここに来るまでは一人だったし、ここに来てから何人か人影は見たけど、言葉を交わしたのはクルフとシドルツさんとお前さんだけだ」

「そっか……」


 その言葉を聞いて少し安心した。

 こんな不安な状況で、みんなは知り合い同士だけど俺だけ初対面で「誰あいつ?」みたいな空気だったら最悪だと思ったんだが、そういうことにはなっていないらしい。


「あ、グレ様達戻ってきてんじゃん。ちょっと行ってくる! またな、ジェイ、ロクちゃん!!」


 そう言ってクルフは知り合いなのか、広間に居合わせた人の所へ行ってしまった。

 あの人はあの人で、既に結構な知り合いがいそうだ。親しみやす様な感じだもんな。親しみやすいという言葉が適切かどうかは分からないが。



 残された俺とジェイはどうしようかと二人でおろおろしていると、シドルツさんが声を掛けてくれた。


「話が長くなるかもしれない。適当な場所で腰掛けてくれ」


 俺とジェイは促されるまま、適当な空いてる地面のスペースに腰を下ろす。

 その辺の椅子に座っても良かったんだが、なんだか地べたの方が落ち着いた。


 それにしても本当に人が多い。

 中には女も混じっている。

 もしかして、最近発見されたのは外部からの目っていうだけで、元々ここに住んでいた奴とかいるんじゃないのかとすら思えてきた。


 っつーか、この建物はどれだけ広いんだろうか?

 通路の長さからして相当な広さがあるのは分かるんだけれども、どの程度に広いのか全く想像がつかない。


「そういえば、お前さんは他に知り合いいないのか?」


 座って一息つくと、ジェイの方からそう声を掛けられる。


「いや、いない。全員初対面だ。あ、シドルツさんには顔と特徴を伝えるために話をしたし、その前に俺をここに連れてきた人となら初対面ながらも言葉は交わしたけれども……」


 コーラスさんと何だっけ……?

 見るからに怖そうな奴で、サバトみたいな名前の人だ。

 その二人も、俺達と同じように地べたに一緒に座っているのをさっき確認した。

 それと古代語が読めるシドルツさんと、陽気なクルフ、鉢金のジェイ。

 一応顔と名前は一致している。


「っつーことはお前さんもソロでここまで?」

「あぁ。ジェイもそうなんだろ? ここに来てからクルフと知り合ったって言ってたよな確か」

「そうそう。っつか、ここきつくね? 何度か死にかけたわ。特にアングリシェイド! あいつはひどい!」

「あぁ、俺も何度か遭遇したわ。あれ、強いなんてもんじゃないよな。俺、実を言うとあいつに剣折られて、一回ここから出たんだわ!」

「ホントか!? いや、あいつと戦っちゃダメだろ~」


 ジェイは少し楽しそうな顔して話に乗っかってくる。

 俺もついつい楽しくなってしまって話を続けていった。


「いや~、前情報なかったからな。そんで一旦遺跡から出て情報集めに行ったわ。爆発音聞いたら怯むとか、視界外に逃げればそうは追ってこないとかそんな情報を掴めたんだけど、それなかったらここまで来れなかったな」

「俺も俺も! 爆薬な! 使い果たしてからの緊張感がマジで半端無かった!」

「爆薬か! 俺は魔法……バンだけど、ひたすらバン撃ってたわ。魔法力が切れたらどうしようかずっと考えてた」

「バンって、あれか! さっきの! いいなぁお前そんな大層な魔法が使えてよ!」


 やっぱり同業者とのこういう会話は楽しい。

 拠点付近の魔物は知り尽くしていたし、こんな感じの魔物対策談義をするのは本当に久しい。

 苦労して遠征してここまで来たのも、こういう会話や雰囲気を味わいたかったからなんだよな。なんか妙に嬉しくなってしまった。


 そんな話をしてジェイと二人で盛り上がっていると、シドルツさんがみんなの前に出るような感じで話を始める。

 ここにいる全員は、それぞれ壁にもたれかかったり床に座ったりしながら、シドルツさんの方を向く。

 みんなしてシドルツさんの口から何が語られるのか、待ち焦がれていたことだろう。


「これで全員か……。全部で17人。随分と多いもんだな……」

「そんな事はいい! さっさと出る方法を教えんか! どれだけ待たせてると思ってんだ!!」


 開始からいきなり野次が飛んだ。

 俺からしてみればそうでもないんだが、結構な時間待たされている奴もいるんだろう。

 ぴりぴりしている奴がいても不思議ではないが、話の腰を折るようなことはしないで欲しい。


「すまない。慎重に事を運ばないと、ここにいる全員が不幸になると判断した結果だ。現状はみんな知っていると思うが、俺達はここで不思議な魔法壁によって閉じ込められた。みんな初めて陥った出来事だとは思うが、万が一この魔法壁に見覚えがあって対処できるものがいたら名乗りでて欲しい。どうだ……?」


 シドルツさんはそうみんなに聞くも、名乗り出る人は誰もいない。

 もちろん、俺だってあんなもの初めて見た。あんな頑丈な物を自由に作り出せるのであれば、実戦でも相当役に立つだろう。


「やはりいないか。俺ももちろん見たことはないが、ここにある古代語で書かれた書物を読み漁って、その正体を知ることが出来た。この魔法壁は、紛れも無く1000年以上前に、今となっては再現不可能だと思われる技術で作られた物だ。この魔法壁はラストフェンスと称されている。人工的に作られた魔導障壁だ。元々ここは、セディアール王家の人間が緊急避難の為に作られたシェルターのようだ」


 セディアール王家……。

 ここ、セディアールと称されている無人島は、大昔には一国が栄えていたとされる島国だというのは知っている。

 戦争によって島ごと廃墟になって今のようになったと聞いたが、その大昔の産物がここに残っているということなんだろう。


 でも、シェルターだとして、なんでこんな危険な場所に作ったんだろうか。

 遺跡の中は魔物が巣食っているし、ここも相当な地下だ。シェルターとして適した場所にあるような気はしないんだが……。

 時が経つにつれて魔物が住み着くようになったとか、元々は中も洞窟のように複雑に入り組んでいる訳ではなかったが、魔物が色々掘りまくったとか、そういう事情があるのかもしれないな。

 一人でそうやって理由を考えている間も、シドルツさんは話を続けていた。


「そのシェルターを守る為の絶対的かつ最終的な防御壁が今出ている魔法壁、ラストフェンスということだ。これは相当な技術を集めた古代技術の……セディアールの最終兵器として扱われている。また、一度発動させてしまえば、解除はそうたやすいものではないとも書されている」

「いいから解除方法を早く話せ!」


 さっきと同じ奴がまた野次を飛ばす。

 いいから黙っていて欲しい。


「……解除方法は2つある。ひとつは、発動者の命を絶つ事だ」


 そうシドルツさんが静かな口調で語ると、場が凍りついたのが分かった。

 つまり、発動するからには自分の命を投げる覚悟がないと、発動できないということだ。

 そこまで追い詰められた状態でないと、軽々しく発動できない代物だったんだろう。


「も、もうひとつの方法は……なんだよ?」


 ざわめきの中、クルフがそう言う。

 さすがのクルフも動揺していたのか、いつもの調子ではなかった。


「正直、あまりこれは話したくはない。その前に、どうやって発動させるのかを説明しておこうと思う」


 そう言ってシドルツさんは一息つく間を取り、再び話を始めた。


「このシェルター内に倉庫のような部屋があるのだが、その部屋の壁に台座のような物がある。その台座に『魔核結晶』という物がしっかりと固定されて置いてある……置いてあったはずだ」


 そう言って、シドルツさんは持っていた本をみんなの前に出す。

 周りの人間は興味有りげに、その本を覗きに行った。

 俺も少し前にでて、その本を確認させてもらうことにする。


 シドルツさんが見せてくれたページには、赤黒く鈍く光る、こぶし大の楕円形の結晶が描かれていた挿絵が描かれてあった。それが魔核結晶ということなんだろう。

 そのページには解説されている文字が書いてあったが、残念ながら読めなかった。

 結構特徴のある綺麗な石……という印象だ。宝石店に売れば高く売れそうではある。

 その辺のアイテムとは違って人目を引きそうな物なので、一度見れば記憶に残るようなものだとは思うが、残念ながら俺の記憶にはなかった。


 みんなは各々それを確認すると、自分のいた場所に戻る。


「この魔核結晶を台座から取り外すことで、台座と魔核結晶と、とりはずした者の魔力が反応してラストフェンスは作られると書いてある。……つまり、この中にこれを台座から取り外した者がいるということになる」


 そのシドルツさんの言葉を受け、場が騒然となった。


「だ、誰なんだそいつは!! 正直に名乗り出ろ!!」


 またさっきから話の腰を折りまくっている奴が、そう喚き散らす。

 その人は「お前か!? お前なのか!?」と、混乱している様子でなりふり構わず手当たり次第近くにいた人を責め立てていた。


 要は取り外した奴を殺したら、俺達は全員脱出できるってことだろ?

 そんな状態なのに名乗り出る奴なんかいるはずない。

 というか、方法は2つあると言ってたじゃないか。黙ってまずそれを聞いて下さいホント。


「ねぇ、さっき方法は2つあるって言ったよね?その方法教えてよ」


 今度は女の声だ。

 誰が言ったのかよくわからないが、そういう質問ならOKだ。

 俺も聞きたいし、他の奴もみんな聞きたいことだろう。

 その質問がシドルツさんに投げかけられると、シドルツさんは静かに本を閉じた。

 その雰囲気が静かで何とも言えない変な恐怖感を覚えた。


「……この本にはラストフェンスについての記述が結構あるが、他の本を手当たり次第読み漁っても、ラストフェンスに関する記述は0だ。そしてこの本にはラストフェンスを解除する方法が2つしか書かれていない。つまり、現段階ではこの2つの方法しか解除する手段がないということだ。万が一、他の方法を発見したらすぐにみんなに知らせたいと思う」

「いいからさっさとしゃべれ」


 今度はさっきから話の腰を折っている人と違う人の男の声だった。

 これだけの人数がいるので、どいつが喋ったのかは分からなかったが、強い語気からは発言者のじれったさを感じた。


「もうひとつの解除方法は、シェルター内にいる人間がラストフェンス発動者一人になるということだ。その状態であれば、ラストフェンスは作られることはないし、作られたフェンスも自動的に解除されると書いてある」

「…………」


 またしてもそのシドルツさんの言葉で場が静まった。

 その意味を理解して絶句したのか、それともそれが何を意味するのか理解するのに少し時間がかかるのか、どちらかであろう。

 ちなみに俺は前者だ。


 解除する方法は2つ。

 発動者が死ぬか、発動者以外が全員死ぬか。

 つまり、この状況で俺たちが脱出するには、的確に発動者一人を探し当てて殺す必要がある。

 もちろん、犯人からしてみれば殺されるわけにはいかないので、後者の方法を取ってくるだろう。

 じゃあこの場はどうなるのか?

 魔核結晶を台座から外した犯人もそうでない奴も、みんな互いに心の中を探り合って犯人を探し、殺すこと殺されることを考える悲惨な現場になると予想できる。

 そう考えた俺は一瞬パニックを起こしたが、とにかく冷静にいようと心がけた。


 冷静に自分の事を振り返ってみる。

 あの魔核結晶の挿絵を見せてもらっても全く記憶に無いものだったが、実のところ俺は変な所でずっと寝ていた身であって、眠る前の記憶が曖昧な所がある。

 もしかしたら知らない間にそれを触っていた何ていう悲劇があるかもしれないと思い、更によく考えてみる。

 シドルツさんは魔核結晶のあった場所を指して倉庫のような所に~と言っていたが、俺はここに来てから割りとすぐあの眠っていた部屋に辿り着いた。

 倉庫みたいな場所なんていうのは、恐らく行ってないはず……だ。

 『寝る前に倉庫へ行ってその結晶を台座から外した』という記憶だけが抜け落ちているということでもない限り、俺が犯人ということはあり得ない。

 はぁ……良かった。

 ……というか。


「なぁ、ちょっとみんなで持ち物検査してみないか? 魔核結晶だっけ? それを取り外した奴が犯人なんだろ?」

「そうだ!! そうしよう!! みんな逃げるんじゃないぞ!!」


 俺がそう提案すると、さっきの話の腰折り太郎さんがそれに同意してくれる。

 場はそうしようそうしようという方向に一瞬流れるのだが、一人それに対して異議を唱えてくる人が居た。


「馬鹿ですかあなた。犯人だってそんなものとっくに処分してるでしょう」


 そう突っかかってきたのは初めて顔を合わせる男だ。

 その男はシドルツさんと同じ濃い藍色の髪をオールバックにして、後ろで結わっている。背は俺と同じくらいだが、俺より年上っぽい感じの男だった。

 その言葉にカチンときたが、ここは冷静に対応してやるとする。


「いや、犯人はその結晶のせいでこうなったなんてことは、今の今まで知らなかったはずだ。やばいやばいと思いながら、まだ今も荷物の中にしまってあるんだろう」


 そう言うと、そいつはしまった! みたいな顔した。ざまぁみろ。


「そんな事誰だって分かっていますから! 今の話を聞いてる隙に捨てているに決まってると言ったんですけど!? これだから馬鹿は困りますね全く」


 うぜぇ。

 いいや、こいつは放っておいて、場を取り仕切っているシドルツさんに今の案が採用されれば、場も荷物検査という流れになるだろう。

 その時に捨てようとしている奴がいたら、そいつが犯人だ。

 申し訳ないが、犯人にはここでお亡くなりになってもらう他ないけど。

 そう思ってシドルツさんの次の言葉を待った。


「残念だが、それは無意味だ。魔核結晶を台座から取り外した瞬間、結晶は魔法の壁、ラストフェンスへと形を変えて消え失せると、ここに書いてある。取り外した人間だって消えてなくなって驚いただろう」


 シドルツさんは全く表情を変えずにそう淡々と話す。

 ……なるほど。

 じゃあ、本当にどこの誰がそれを取り外したのかなんて全くわからない……という訳っすか……。

 え、じゃあどうすればいいんだ……?

 犯人名乗りでてくれねぇかな……名乗りでてくれる訳ないよな……。冷静に考えろ冷静に……。


「な~犯人さんよ~……悪いようにはしないからさ、正直に名乗り出てくれねぇかなぁ~」


 と、みんなに向かって手を擦り合わせて言ったのはクルフだ。

 お前、悪いようにはしないって、絶対殺すだろ。

 それで出てきてくれたら誰も困らないんだけど、まぁ、出てこないだろうね……。


「みんな落ち着け。俺が話したかったのはここからだ」


 シドルツさんがその場を仕切り直すようにみんなの間に割って入った。

 それによって徐々に騒然とし始めてきた場が、一旦静まる。

 というか、このシドルツさんの落ち着きはなんだ。

 全く混乱してないように見えるぞ。普段からこういう人っぽいけど。


「一応シェルター内は全て確認してもらった。ここに俺が作った地図があるが、全部の部屋を手分けして見て回ってもらった後、最後に確認もした。そうだな?」


 そう言ってシドルツさんはある豪傑そうな戦士に視線を送る。

 すると、その隣に居たお姉さんっぽい女戦士が頷いて答えた。


「あぁ。全部回ったが、誰一人としてここの中に人はいなかった。間違いない」

「つまり、ラストフェンスを起動した人間はこの中にいるということだ。手にとった結晶が消えたんだ。本人も無自覚ということはないだろう。今俺の知っている状況はこれで全て話した。これからどうするか、みんなで話し合っていきたいと思う。だから、全員来るのを待った」


 ……なるほど。全員が集まるのを待った理由はそれか。

 もし個人個人ばらばらに今のことを話していたのだとしたら、犯人は密かに行動を起こして殺人を始めるだろう。

 犯人でない人は、顔も名前も分からない奴に突然背後から襲われることになるんだ。

 犯人のターゲットにされた奴が、もしこの事情を知らないのであればもっと悲惨だな。

 訳もなく通り魔に殺されたとしか思えない状態に陥る事となる。

 だが、みんなで集まってからこれを話せば、確実にこの中に犯人がいるということになり、俺達は俺達で対策を取ることも出来、犯人も下手に動けなくなる。

 その対策を今からみんなで話し合いたかったから、こうしてシドルツさんはみんなを集めるまで状況を話さなかったんだろう。


 今の状況は掴めた。

 ただ、楽観視していた状態なのが一変、これはかなりまずい状況になったということも分かってしまった。

 犯人は死ぬ物狂いで俺たち全員を殺しにかかってくるだろう。

 俺達はそうなる前に犯人を探し当て、なんとか説得してお亡くなりになってもらうしかない。

 割りと軽い気持ちでこのユークリンド遺跡に潜ってみはしたが、まさかこんな事態に陥るなんて考えてもみなかった。

 まさに生死を賭けたサバイバルな状況という事で、俺の望んでいた状況になりはしたが、そんなことを感じている余裕なんてものは今の俺には全くなかった。

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