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第一話:念動力

どうも、初めまして。

PAPAです。

オリジナルにも手を出して見ました。

題材は超能力。

皆様の暇潰しになれば幸いです。


とある閑静な住宅街。


その一角にある二階建ての一戸建ての住宅。


富田家とインターホンの隣に掲げられた表札があるその一戸建ての住宅の二階の自室である少年が呆然と呟いた。


「やっぱり現実だったのか………」


ある少年、富田(とみた) (まこと)の目の前では空中にファッション雑誌が浮いているという物理法則を無視した夢のような現実が起こっていた。


「夢じゃないんだよな………」


目の前の現実が信じられないと呟く彼の前には変わらずにファッション雑誌が浮き続けている。


「………ふぅ」


彼が力を抜くように息を吐くと今の今まで変わらず浮き続けていたファッション雑誌が吊っていた糸が切れたように絨毯の上に落ちた。


彼はそれを確認するとを悟ったように上を向いた。


「超能力か……。そういうのはもう中学で卒業したんだけどな……」


超能力。


それも一番メジャーな念動力(サイコキネシス)ときた。


小説や映画や自分の妄想の中でしか出てこなかったものが現実になった。


彼にだって確かにそういうのに憧れた痛い時期もあった。

自分には隠された能力があると信じていたこともあったが、それはもう過去のこと。


嫌々ながらも受験勉強をして合格した中堅の高校にこの春から通うことになっているのだ。


しかも入学式は後、数日でやってくる。


つまり、もうすぐ高校生なのだ。


そんな心機一転の時期に何でこんな非現実的なものと向き合わねばならないのだ。


「ふっ!」


真が力を込めるように気合いを入れるとファッション雑誌がふわりと空中に浮き上がる。


彼も最初は驚いた。


この〝力〟が発覚したのはつい先日のことだ。


朝、目覚ましの音が聞こえたので手を伸ばして目覚ましを止めようとしたら、いつもの定位置にあるはずの目覚ましの感触がなかった。仕方なく目を開けたら、部屋中の小物が浮き上がっていたのだ。


真が呆然としていると浮いている小物らは突然、糸が切れたかのように一斉に床に落ちた。


それはもうすごい音で驚いた。

下にいた母親が何事かと確かめに部屋に来るぐらいだったのだから。


何とか誤魔化して部屋から追い出してから、部屋を片付けて落ち着いた俺は隠された能力が目覚めたのかとあほみたいなことを考えて冗談半分で目覚ましに向かって念じてみたのだ。


〝浮け〟と。


そして本当に浮いた。


めちゃめちゃ興奮した。

その時は本気で世界を救う時がきたんだと信じていた。


しかし、時間が経つにつれて俺は冷静になった。


もしこの〝力〟を世間に公表したらどうなるのか。


小説や映画でも超能力ものの作品は特に好んで読んだり、見たりした。


その作品の多くでは超能力者は世間に疎まれていたり、政府によって隠蔽されたり、果ては軍事利用されたりしている。


背筋に寒気が走った。


ここは紛れもなく現実なのだ。

もしそんなことになったら決して取り返しはつかない。


小説や映画みたいに途中でやめることなどできないのだ。


結局、真はこの〝力〟は誰にも話さず、秘密にすることにした。


偉そうなことを言っているが、〝力〟を隠すということに彼自身、若干、わくわくしたのも事実である。


隠すためにはやはり〝力〟を制御することは不可欠なので訓練と称して部屋で〝力〟を使って遊んだ。


それはもう、遊んだ。

死ぬほど遊んだ。

危うく母親に見られかけていたが。


そのおかげで〝力〟について色々なことがわかった。


まず、この彼の念動力は人の出せる力を遥かに越える力がだせることだ。


軽く念じただけでベッドを簡単に浮かせた時は真はとてつもなく興奮した。


自重、自重と呟き、すぐにやめたが。


意外と体力を使うことも判明した。


遊び終えた時にそんなに動いていないはずなのに全力疾走したかのように息切れしていたのだ。


どのみち人前で使うことなど考えていないので彼にとってはさほどの問題ではない。


結局、訓練(あそび)に一日を費やしてしまい、翌朝、つまり今日になって夢でないことを確認して昨日の自分のハイテンションぶりに自己嫌悪して、今に至るというわけである。


「はぁ………」


溜め息をつく。

それに呼応するように絨毯の上に空中に浮いていたファッション雑誌が落ちた。


ベッドに寝転がる。


「どうしたもんか……」


正直、この〝力〟を使って人助けをするつもりはない。

自分はそんなヒーローではないのだ。

世界を救うのだとほざいた昨日の自分を殴り倒しにいきたいぐらいである。


そんなことを考えていると、昨日の自分が頭に思い浮かび、真の顔が羞恥に赤く染まる。


「あほか、俺は……!」


身悶えさせつつ、思考を進めていく。


〝力〟が使えるからと言っても、日常を変えるつもりはない。


結局、最初となにも変わらないのだ。


嬉しさ半分、がっかり半分というところである。


どのみち高校生活は自分にとって新しい日常なのだ。


たとえこんな〝力〟がなくても楽しい日々になるだろう。


真はベッドから立ち上がった。


「宿題しなきゃ……」


どんよりしながら机に向かった。



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