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魔王召還

それからと言うものの、俺は恥ずかしさのあまり授業をすっぽかし、寮の自室に籠もっていた。


「ああクソ……俺には才能の欠片も無いってか……」


布団に顔を埋めながら一人愚痴をこぼしていると、一度は追い払った睡魔が再び襲ってきた。

俺は抵抗もせず眠りについた。


……

………

…………。


「うぅん……?」


気付けば外は真っ暗。

時計の短針が2を指していた。


「やば……寝過ぎたか……」


中途半端な時間に起きた上に眠気が一気に覚めてしまった……。


朝大丈夫かな……。


「あ……」


ふと、ポケットの中にあるものに気付く。


制服のまま寝てしまったのは、まぁ百歩譲って良しとしよう。


しかし……


「召還の札……返すの忘れてた」


ポケットから魔法陣の刻まれた厚紙が出てきた。


明日にでも返せば良いか……。


俺は部屋の灯りを点け、カーテンを閉めようと窓に近付いた。


と、そこで今夜は満月だと言うことに気付く。


「お、満月か……」


世間一般では満月の夜は魔物が活性化し、魔力が高まると言われている。


あくまで俗説の域を出ないが、満月でなければ使えない魔法は実在する。


大方が退魔の魔法ではあるが、逆に魔族を呼び出す呪文もあるとかないとか……


(もしかしたら……いや、考え過ぎか……)


魔力の高まる今夜なら……。


魔力不足か何かの理由で、召還が発動しなかったのであれば、チャンスはあるのではないか……


いや、希望的観測過ぎるか……?


そうは言うものの、試す価値はある、と言う自分が心の中に居て苦笑いする。


結局、満月と言う誘惑に負けて窓から寮の中庭へ出る。


試すだけなら誰かに迷惑をかけるわけでもない。

上手く行けば幸運、そうでなくても今後の教訓にできる。


そして、意を決して召還の発動ワードを唱える。


「我が名はシン・ヴェラード。召還の儀により此を執り行う。全知全能の神の御名において、我が使い魔を此処に召還せよ!!」


一瞬の間置いて、一陣の風が吹き抜け、どす黒い光が溢れ出す。


「やった! 成功だ成功だ!!」


この時、ずっとポケットに入っていたために召還の札に折り目が付いてしまっていたのに気付いていなかった……


魔方陣と言うのは、基本的には余計な線や汚れなんかが有ると作動してくれないのだが、稀に別の魔法陣と化す事例がある。


中には別の魔方陣から大発明が生まれたりするのだが、狙ってやるのはまず無理だろう。


「なっ……何だこれ!?」


溢れだした黒い光が今度は魔方陣の中央に収束していき、小規模の爆発を起こした。


軽く吹き飛ばされそうになるが、何とか踏ん張る。

そして爆発によって起きた煙の中に人影が見えた。


人型の使い魔はかなり高位の存在がセオリーだ。

ある種の恐怖と期待で見守ると、姿を確認する前に声が聞こえた。


「むっ? 貴様は誰だ?」


凛と通るような声で訪ねられ、一瞬呆気に取られる。

なんと言おうか迷っている内に煙が晴れてくる。


煙が完全に晴れ、そこに居たのは……


「…………は? 女!?」


そこに居たのは紛れもなく少女だった。


凛々しさを感じるようなつり目気味の瞳。

黄金のような綺麗な金髪。

目を見張るようなスタイル。


そして何故か黒を基調としたフリフリ満載のゴスロリな服装。


「ん? 人間?」


「使い魔に人間って……意味が分からん……」


若干、いや、かなり戸惑う。


それもそのハズ、使い魔は魔物なんかが良く選出されるが、高位の人型をしていても何らかの特徴(角や羽、毛深い等)が有るため、人間との見分けが付くのだが目の前の少女にはそれが無い。


いや、良く見れば耳が尖っているから、人間ではないのか……


「はぁ? 貴様は何を言っている? 私は人間などではない。魔王リティアだ」


……………………。


「は? まおう?」


困惑が深まったのは言うまでも無かった……。

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